蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

桜ほうさら

2017年04月30日 | 本の感想
桜ほうさら(宮部みゆき PHP)

主人公の父は小藩の役人であったが収賄の疑いをかけられ自害する。美人で気が強い主人公の母は、才気あふれる長男(主人公の兄)にべったりで夫や主人公には冷たい。主人公は父の無実の証を求めて江戸で代書屋をすることになるが・・・という話。

宮部さんの作品に多くみられるテーマは「人の悪意とはなんだろうか?」ということだと思う。
登場人物のほとんどが(あまり現実にはいなさそうな)善良で正直な人たちなのに、事件の核心となる人物やその近辺に巣くう悪意のどす黒さ、底知れなさは、読んでい寒気を催すことが多い。

本作も、タイトル通り9割方、ほんわかとした「良い人」の物語なのに、最後に明かされる真相は、「そこまで行きますか、宮部さん」といいたくなくような、ある意味容赦のないものだった。
元から仲たがいしていた母や兄がああいう行動に出るのは理解できる。しかし本当の悪意を持っていたのは「良い人」の代表格だったようなあの人だったとは・・・。
ペテロの葬列」もそうだったけど、宮部さん、それはちょっとキツイよね。
コメント
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