蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

世界経済のオセロゲーム

2011年06月11日 | 本の感想
世界経済のオセロゲーム(滝田洋一 日本経済新聞出版社)

本書の奥付けを見ると、初版が2011年3月8日で、この手の本の出版タイミングとしては最悪だったろう。
震災もさることながら、ストロスカーンに触れた箇所があり、「会見を終えて、専務理事(=ストロスカーン)は女性たちとのツーショット写真に笑顔で応じていた」というフレーズには笑えた。(それ、「応じていた」じゃなくて「強要していた」じゃないの?みたいな・・・)

表題は、一瞬にして主役が入れ替わる世界秩序を表したもの。
まあ、今に始まったことではなくて、ソ連という重石がなくなって以降、そういう状態が20年くらい続いているようには思うが。

日本経済の低迷の原因は、資源価格高騰による交易条件の悪化で、それを輸出型企業の努力で補っているはいるものの本格的回復には及ばないとする。
一方で、国内消費が盛り上がらないのは企業の分配が足らないからだとするが、その前の、企業努力でなんとか持っている日本経済、という部分と矛盾があるようにも感じられる。

アメリカの金融緩和によるデフレとバブルの同時進行、その裏側で繰り広げられる中国とアメリカの経済覇権争い、国家の過大債務、など現状の問題点を並べるが、まあ、なんというか新聞のダイジェストを読んでいる感じで、読んでいてなるほどと思わせるような解説はあまりなかった。

日本経済への処方箋は「モノづくりは日本の稼ぎの大元と理解したうえで、「貿易+投資立国」を目指すとともに、「環境・省エネルギー」と「経済成長」を両立させる」(P201)だとするが、その実現へのプランも、まあ、ありきたり(日経の記者という立場で、自社から出す本で、あまり奇抜なことを書くのは難しいのだろうけど)だった。
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ヴィヨンの妻

2011年06月11日 | 映画の感想
ヴィヨンの妻

太宰治の小説の映画化。
主人公は、貞淑で貧乏に耐えて子育てをしている妻(松たか子)を全くかえりみず、たまに自宅に帰ってはなけなしの金を引き出しからくすねていく始末。
行く先々の女に手を付けますが、そんな男に妻も愛人も心底ほれているという話(いいな~)。

太宰自身がモデルらしき主人公を演じるのが浅野忠信さん。
浅野さんというとワイルドでロック?な役が多いような気がしますが、本作では、繊細で不安が強く、軟弱でひとでなしの文豪という、いつものイメージとは反対の役をとてもうまく演じています。
コップ酒を飲み干すシーンなど、黙って酒を飲んでいるシーンが特に印象に残りました。

松さんの、本作での演技は高く評価されているようですが、素人がこんなこと言うのもなんですが、「そうかな~」と思っちゃいました。
どんな役でも同じような演技に見えてしまうのは、人気者ゆえ方々でよく見かけるせいなのでしょうか。
太宰が心中をはかった後のクライマックス?な場面では、さすがと思わせるものがありましたが。
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駅までの道をおしえて

2011年06月11日 | 本の感想
駅までの道をおしえて(伊集院静 講談社)

野球絡みの話にするという、シバリの短編集。
無理矢理、野球と結びつけたようなものもあるが。

もう一つ、多くの短編で共通する特長は、深刻な病気を抱えている人が登場することで、「野球」と「闘病」というのが著者の大きなテーマであることを示している。

「チョウさんのカーネーション」がよかった。20ページくらいの短さなのだけれど、古典落語のような味わいがあって、普通なら「そのオチはちょっと」と思えるような結末もそれなりに納得性というか小さなカタルシスがあった。
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