蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

神器

2009年08月01日 | 本の感想
神器 (奥泉光 新潮社)

太平洋戦争末期、主人公が操舵員として乗り込んだ軽巡洋艦は、正体不明な陸軍将校達を乗せて横須賀から呉、舞鶴を回航し、やがて司令部の命令に反して単独で太平洋を東に進む。陸軍将校たちは実は狂信的な皇道派で、敗戦間近となった現在の天皇の正統性に疑問を持ち、本物の天皇をさがして、海底に沈んだムー大陸へ赴こうとしていたのだった。

簡単に書くとこういう筋なのだが、軍艦内の生活が詳細に語られたり、タイムスリップするネズミ(殺された乗組員の化身)が饒舌におしゃべりしたりして、延々と800ページに渡って話が続き、正直にいうと読み終わるのに一苦労だった。

著者は、「小説にしかできないことを追求して物語を作った」という旨のことを新聞のインタビュウで語っていたが、確かに内容がぶっとびすぎていて、映像表現は難しいだろうと思えた。

私にとって、著者の最高傑作は「滝」なのだが、著者にとってはただの若書きにすぎないみたいで、最近の著作は衒学的というのか芸術的すぎるというのか、素人(?)にはついていくのが難しくなりつつある。
コメント (2)
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