蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

石油がわかれば世界が読める

2008年11月24日 | 本の感想
石油がわかれば世界が読める(瀬川幸一編 朝日新書)

原油価格が、一時常識はずれの高騰をしたことで、原子力発電の開発が進み、太陽光、風力、バイオなどの代替エネルギーが採算がとれるようになった。日本国内産の石炭ですら採算ラインに近づいたというのだから、逆に言うと原油価格のオーバーシュートは(今にして思えば、だが)明らかだったのだろう。

しかし、桁違いの価格は一瞬で、今ではピークの三分の一程度になってしまった。日本のように資源に恵まれない国としては、むしろもう少し高価格が続いてくれた方が代替エネルギーの開発が進んで良かったのかもしれない。
例えば、太陽光や風力は初期投資が価格の大半を占めているわけだから、高価格がある程度続いてくれれば、相当数の設備ができたのだろうが、これだけ原油が下がると、一時ふくらんだ意欲もしぼんでしまったことだろう。

本書は、社団法人石油学会が創立50周年を記念して編集されたもので、当然、石油エネルギーを全面的に擁護する(次のような)内容となっている。

日本ではかつて家庭の燃料として木を燃やしていたので、都市近郊のいわゆる里山の樹木は伐採されてスカスカの状態であり、このような疎林状態は松茸の生育には適合していた。しかし、石油が燃料として使われるようになって伐採はほとんど行われなくなり、里山では樹木が繁茂し、結果として松茸はとれなくなった。
つまり、石油の使用により緑地は広がり、松茸がとれなくなったのは、環境が改善したためなのだという。

ロンドン名物の霧は石炭を燃やしたカスが大気に充満していたためで、石油燃料を使用しはじめて少なくなったという。

上記のような例は、私には意外であり、石油(を燃やすことは)環境悪化の元凶という見方は、なるほど、必ずしも正しくないのだな、と思えた。

また、ガソリン等の石油製品価格の大半がレントと呼ばれる、産油国、消費国の税金や原油精製費用に占められているというのも、(うっすらとは知っていたものの)認識を新たにした。産油国の立場からいうと、「そんなにガソリン価格を下げたければ、消費国の税金を下げればよいではないか」ということになる、というのも、なるほど、と思えた。


本書では、バイオ燃料についてかなり強い調子で批判的である。これは、石油業界から見るとバイオ燃料が、実は相当に脅威であることの裏返しなのだろうか、とも思えた。
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