蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

天切り松闇がたり 昭和侠盗伝

2008年10月02日 | 本の感想
天切り松闇がたり 昭和侠盗伝(浅田次郎 集英社)

よく、「浅田節」なんて言われますが、浅田さんの作品は、面白くて読み出すと止まらないものの、はっきり言っちゃうと、あざとくて、お涙頂戴、ワンパターン。でも、やめられない、未読の本があるとつい手がのびる。

本作もそのカテゴリに分類されそうなもの。天切り松シリーズの第4巻で、凄腕のスリのじいさんの昭和初期の思い出話形式の短編集。

永田鉄山暗殺事件の犯人、相沢中佐を描いた「日輪の刺客」。
相沢中佐は、出世コースから外れて全国ドサ回りの転勤を重ねている、天皇に忠誠を誓う真面目すぎる軍人という設定。
そこまではまだいいとしても、つづく短編「惜別の譜」では、中佐の奥さんを上京させて拘置中の中佐との面会場面を描く。ああ、これがお涙頂戴でなくて何と言う。読者の弱みをついてくる。
でも、読んじゃうんだよね。

とにかく、出したお金を超える満足が得られることは保証できます。忘れたころに再読してもきっと楽しめると思います。
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