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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

モーターサイクル・ダイアリーズ 3/5

2005年09月26日 | 映画の感想
「レーニンはつまるところテロリストであるにすぎず、彼にできるのはせいぜい宣伝活動を展開して時おり騒動を起こすだけだった。ボリシェビキとその他の活動家は、1905年にロシアで反乱が鎮圧されると後退を余儀なくされた。しかし、第一次世界大戦でロシアがつまずいたため、彼らはその機に乗じ、1917年に政権を掌握し、それによって世界有数の国家資源を手に入れた。(中略)オサマ・ビンラディンが21世紀を左右する一人となるには--それが彼の目的であるのは間違いないが--レーニンをまねてサウジアラビアかエジプトあるいはパキスタンのような国家を攻略する必要がある。」(ビル・エモット「20世紀の教訓から21世紀が見えてくる」)

若き日のチェ・ゲバラが年上の友人と南米大陸を旅する話。その中で出会う貧しい人々、難治の病気に苦しむ人々から彼は共産革命に目覚めていく・・・目覚めていくところは取ってつけたみたいな感じで、この映画の見所は旅の途中の景色の美しさやパーティでにぎやかに歌い踊る人々の陽気さにあるように思った。

ゲバラは今でも妙に人気がある革命家だけれども、アメリカからみれば彼もオサマ・ビンラディンのようなテロリストにすぎない。レーニンをテロリストと呼ぶ人は今ではあまりいないけれども、彼こそ歴史上もっとも成功したテロリストだろう。
ゲバラが富裕な家庭で育ったエリート医師であるにもかかわらず青春時代の彷徨からやがて革命に身を投じていくというストーリーは、今、オサマをリーダーと仰ぐ人々からすれば、サウジ有数の富豪一家の出身でイスラムの国々を渡り歩いて原理主義へと傾斜していくオサマの姿にぴったりと一致するのではないか。西側から蛇蝎のごとく嫌われている彼も、半世紀もすれば、もしかしたら、ヒーローになっているかもしれない。
視点や立場が変われば歴史の評価も全く正反対の結論が導きだされる。映画の中のゲバラがあまりにかっこよすぎたので、そんなことを感じた。