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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「特捜部Q ―檻の中の女―」(著:ユッシ・エーズラ・オールスン/訳:吉田 奈保子)

2013-12-23 23:23:12 | 【書物】1点集中型
 文庫をよく本屋で見かけてはいたものの、なぜか手を出してなかったシリーズ。ハヤカワといえばミステリより先にSFに行っちゃうからかもしれない。

 捜査中の銃撃戦をで同僚の1人アンカーを失い、辛うじて生き残ったもう1人の同僚ハーディも四肢に麻痺が残り寝たきりとなる重傷を負う経験をした主人公の刑事カール。優秀ではあるが変わり者として煙たがられていたこともあり、未解決事件に取り組むべくして創設された「特捜部Q」を統率すべし、と独り地下室に追いやられる。アシスタントを要求し、なんとか通ったと思ったら、出てきたのは一風変わったシリア人アサドであった。
 一見、どうやったら手がかりがつかめるのか見当もつかない女性議員ミレーデの失踪。最初は気が進まなかった「特捜部Q」での仕事に、カールがだんだん、もともとの刑事魂を刺激されてのめり込み始めると面白くなってくる。

 監禁されたミレーデの受ける仕打ちの生々しい惨たらしさを見せられるにつけ、早くなんとか手がかりを掴んでくれ! と祈るような気持ちになりつつ(笑)ページをめくらざるを得なくなってくる。そして、全く平行線で交わらないかのようにすら感じられていたカールの捜査とミレーデの運命が、最後にばっちり交差するさまに、けっこうすっきりした気分を覚えてしまったりする。
 この犯罪の動機については……それってほんとにミレーデのせいなの? って思っちゃうところもあるけど、当事者にとってはやっぱりそうなんだろうなぁ。そう思うと、相当やりきれない話ではあるんだけど。

 枯れた中年男の雰囲気の中にも、捜査への熱意が息づいているカール。そして陽気で頭の回転も速く、ハンドルを握らせれば暴走一歩手前、ちょっと天然な雰囲気も持っているけど身元は微妙な謎に包まれているアサド、カールの別居中の肉食系な妻、何故か同居している義理の息子、間貸ししている料理上手のオタク男モーガンと、カールの脇を固める人物たちがどれもこれもしっかり個性に基づく役割を果たしている感じ。やっぱり、こうでないと物語が面白くならない。
 ハーディが本当に家に戻ることになるのか、アサドの謎は今後明かされることになるのか、そしてそうなったとき、カールにはどんな変化が訪れるのか。いろいろ気になるので、やはり折を見てこのシリーズを追っていかなければならなくなりそうである。うう、だからシリーズものに手を出すのって迷っちゃうんだよねぇ。もう出しちゃったけどさ(笑)。


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