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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「数学小説 確固たる曖昧さ」(著:ガウラヴ・スリ&ハートシュ・シン・バル/訳:東江 一紀)

2013-05-30 21:58:10 | 【書物】1点集中型
 タイトルの不思議な雰囲気もだけど、装丁も好きな本。
 主人公の学生ラーヴィが、祖父が涜神罪で逮捕された過去を持つことを知り、その理由を探るなかで、祖父の数学論理をひも解いていく……というようなストーリー。

 時に議論を戦わせつつ、師ニコから熱心に学ぶラーヴィたちの様子を見ながら、簡単な数学をちょっと復習できたような気分にもなるが、基本的にやっぱり記号の羅列になる数式が苦手なので(笑)肝心のユークリッド幾何学については結局わかったようなわからないようななんだけども、「数学って論理なんだなー」という当たり前のことをあらためて実感した。
 ヴィジェイと判事の果てしない会話と、そこから生まれたヴィジェイの信念の揺らぎ。さらに、その揺らぎからヴィジェイが新たに掴んだもの。数学も本当は全能ではない。全能ではないけれども、少しでもその証明可能な範囲を、真理と言える範囲を広げようと進んでいくのが数学でもある。ちょうど今「不可能 不確定 不完全」も(相当長い時間をかけて)読んでいるところなので、双方が言わんとしているところの共通項を感じたり。

 数学の確固さを形作っているものは、実は曖昧さでもあった。曖昧さを知るが故の、その曖昧さの根拠が論理なのではないか。論理的で哲学的で、深遠だけど真摯な愛情に満ちた物語だと思う。


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