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「患者の眼 シャーロック・ホームズ誕生秘史」(著:デイヴィッド・ピリー/訳:日暮 雅通)

2013-02-07 23:11:10 | 【書物】1点集中型
 アーサー•コナン•ドイル氏の自伝風に綴られる、その師でありシャーロック•ホームズのモデルとされるジョゼフ•ベル博士との事件簿。著者はもともと脚本家で、この作品はBBCでドラマ化もされたそうだ。

 ベル博士の、まさにホームズそのものである人間観察の鮮やかさには、ドイルならずとも圧倒される。が、ドイルはそのベル博士の「手法」を最初は「手品」と酷評し、のちに助手となって事件の解決に取り組み始めても、どうにも認められない。でも、やっぱり最後は「ベル先生」の助力を必要とすることもわかっている。
 なんだかんだ言ってもドイルがベル博士に敬意を払っているし、ベル博士もドイルを見下したりはしない。考え方の違いもあって、全てにおいて阿吽の呼吸というコンビではないが、その中にあって、若かりしドイル氏の「青さ」を窺わせる、師への反発もまたいいスパイスになっていると思う。そして、そんなドイルの反発もまるで気にしない飄々としたベル博士の、超人的な観察眼と推理に次第に引き込まれる。

 「シャーロック・ホームズ」シリーズをいくつか読んだのは相当昔なので、内容も全然覚えていないんだけれども(こないだの映画は観たけども)ちゃんと覚えているとリンクする内容も相当ありそうである。ホームズの物語と「暗号」との関係の深さを考えると、かの有名な「ビールの暗号」が取り上げられているのも面白い。そういえば、現在の状況まで解読したのが誰かというのが実際、謎のままなので、「ベル博士なら可能性があるかも」というネタを出してくるところが心憎いなぁ。
 しかし、ドイルの患者に関わる事件は解決したものの、2人に傷を残しているらしい過去の事件が相当気になるんだけど……続編なんとか出してもらえないかなぁ。なんかこのまま終わられると、シーズン1だけで打ち切りになって謎だけが残ったドラマみたいで生殺しですよ。(笑)


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