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 僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

寅さんのこと

2014年01月11日 | 映画の話やTVの話など

去年からBSで、毎週土曜の夜に映画「男はつらいよ」が第1作から順々に放映されている。今日の土曜日は第13作「寅次郎恋やつれ」。マドンナはわれら団塊世代の永遠のアイドル・吉永小百合で、これが二度目の出演となる。前作で結婚した彼女の夫が亡くなり、寅さんと再会するところから、例の「失恋ストーリー」が展開される。島根県の津和野を舞台とした、僕の好きな1本です。


松竹映画の寅さんシリーズは、僕が20歳で、自転車で北海道を走っていた1969年(昭和44年)の8月に第1作が誕生した。(むろん、当時はそんなこと、知らなかった。漫画の「巨人の星」が映画になったことはよく覚えているけど)


「男はつらいよ」の最後は1995年12月の第48作「寅次郎紅の花」なので、このシリーズは実に26年間も続いたことになる。国民的映画と言われる所以だ。


一般的には、第2作目「続・男はつらいよ」(寅さんが、産みの親・ミヤコ蝶々に会いに行く話)が最高傑作と言われているけれど、僕がもしこの48本の中で一番好きな映画はどれ…? と尋ねられたとしたら…そうですね、浅岡ルリ子が出ていた第15作の「寅次郎相合傘」を挙げましょうか。彼女が演じる旅回りのキャバレー歌手・リリーは、寅さんの相方として最高の女性である。先月放映された第11作「寅次郎忘れな草」で初登場し、「相合傘」の後も第25作「寅次郎ハイビスカスの花」、そして最後となった48作目の「寅次郎紅の花」もリリーが寅さんの相手であった。このシリーズに4本も出演したのはリリーだけである。


「寅次郎相合傘」は、哀切に満ちた結末だった。それまでいろんな女性にフラれ続けていた寅さんだけど、リリーは心から寅さんのことを好きになる。妹のさくらが、リリーを自分の家に招いたとき、「リリーさんがお兄ちゃんの奥さんになってくれたら、どんなに素敵だろうなぁって。ま…冗談だけど」と言うシーンがある。リリーは真剣な顔で、「いいわよ、私みたいな女でよかったら」と答えるのだった。さくらは目を丸くして驚いたあと、表情を輝かせる。


寅さんの「恋愛成就」が手に届く瞬間だった。
そしてそれに続く名場面…


さくらは「とらや」で、寅さんに「リリーさんがね、お兄ちゃんと結婚してもいいって言ってくれたのよ。よかったわねぇ」と伝える。リリーは奥の部屋でいつになく神妙に座っている。「オレとぉ?」と、ここからの寅さんのリアクションは、まあ寅さんらしいと言えば言えるが、素直に喜ばない。「あんな気性の強いしっかりした女が、俺みてえなバカとくっついて幸せになれるわけがねえだろ」と言い放つのである。そしてリリーのほうを見て「こっちへ来いよ」と呼び、「お前、冗談なんだろ? え?」と問い詰める。リリーは戸惑う寅さんの顔をじっと見つめながら、フッと笑い「そう…、冗談に決まってるじゃない」と言うのだ。あぁ~。映画館でこのシーンを見た時、寅さんって本当にバカだ、これじゃ誰とも一緒になれないのは当たり前だ…と、悔しい思いをしたことを覚えている。後にも先にもこれほどのチャンスは巡ってこなかった。それをテレてしまい、まぜっかえしてしまい、せっかくの話を壊してしまうのだ。


だいたい寅さんは、いつも自分から女性を慕うのに、相手から好意を寄せられると、今度は引いてしまう。寅さんのことを、女性にフラれ続けた…と先ほど書いたけれど、女性のほうが寅さんにフラれる話も、シリーズの中には少なくない。


最近、酒井順子さんのエッセイを読んでいたら、寅さんを取り上げた一文があった。そこに、寅さんの陰には、多くの傷ついた女性がいる、として、寅さんはすぐ次の旅行に出かけてテキ屋商売に精を出しているけれど、女性に残った傷はなかなか癒えないのではないか…と書かれていた。


ひとつの例として「寅次郎あじさいの恋」(第29作)で、陶芸家の家政婦だったいしだあゆみが、寅さんを好きになって2人でデートすることになる。しかしテレ屋の寅さんはそのデートに、さくらの一人息子である満男を一緒に連れて行く。これほどの無神経はあるまい…という酒井順子さんの文章を読みながら、なるほど、女性に対するシャイな気持が逆に女性を傷つけるわけだ…と、その鋭い突っ込みに感心した次第である。さらに「寅さんは憎めないいい人ではありますが、テレ屋を言い訳にして、自分から何もしない男性に対する女性の恨みは意外と深い。観客は寅さんの男のつらさ、悲しさには思いを馳せても、ヒロインのそれには気づかないのではないか」…とも書かれていた。


…なるほど。物事にはいろいろな見方がある。女性の側からは、寅さんに対するそういう見方もあるんだ…と、目からうろこであった。ならばタイトルも変えて「女もつらいよ」にすればどうか…と、これは酒井順子さんが書いていたのではなく、僕が今思いついたことですけど(つまらんギャグだこと!)。


ま、寅さんが結婚してしまえばシリーズは続かなくなるので仕方ないのですが、こういう違った面から寅さんの映画を見ると、また味が出てくるのではないかと、これからまたせっせと土曜日のBSの録画をしようと思っています。ちなみに、次の次の土曜日に、前述の「寅次郎相合傘」が放映される予定です。

 

 

 

コメント (2)
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