7月28日(火)。
次男のお嫁さんのご両親が、高知から、早朝発の高速バスで大阪へ出て来られるというので、妻と2人で迎えに行った。
高速バスのターミナルは、JRなんば駅のOCATというビルの前である。ここはミナミの繁華街から少し外れていて、いささか不便だ。
朝6時に乗ったというご両親は、5時間以上バスに揺られ、11時過ぎに大阪に到着。久しぶりに顔を合わせた僕たち4人は、OCATでまず食事を済ませ、雨模様だったので、地下街を通って難波高島屋の方向へテクテク歩いた。
「なんばウオーク」の表示を見ながら、高島屋方向へ歩くが、これが長くて長くて…、15分以上かかる。
歩き慣れている僕たちは何ともなかったが、高知のご両親は歩くのがお疲れのようだった。
お父さんは山で野菜を作っておられるので、足腰は強いはずだ。
しかし「山を歩くのと硬い石の道を歩くのとでは、全然違うで、疲れよるわ」とお父さんは、こぼす。
なるほど。僕らはいつも「硬い石の道」を歩いている。
お母さんも地下街を20分近くも歩くのは初めてのようで、
「風が当たらんけ、頭がぼっとしよる」と、やはり歩き疲れた様子。
「田舎ではどこへ行くのも車じゃから、こんなに歩かんのよ。都会の人はよく歩くねぇ」と感心されていた。
都会人のほうがよく歩く…
なんとなく不思議な気がするが、そういえば、そうかも知れない。
ご両親は、高知県の鏡村というところにお住まいである。
高知市の北の山間部にあるのだが、最近、高知市に合併されたので、今はご両親も高知市民、ということになる。
さて、ご両親がわざわざ大阪までやって来られたのは他でもない。
自分たちの娘(うちの次男のお嫁さん)の大きなお腹と、生まれてくる赤ちゃんを、「この目でひと目見たい」ということである。つまり…
次男の嫁さんはこの日、かかりつけの産婦人科医に入院する。
そして、翌日、帝王切開して出産をすることになっている。
初めての出産である。
ご両親は、今日、娘さんの大きなお腹を見て、明日、生まれて来る赤ちゃんを見る予定である。
今日は、大阪の地理がわからないご両親を、難波からその病院まで、
僕たちが案内をする役目なのである。
難波から南海電車に乗り、病院のある金剛という駅に向う。
電車の中で、お父さんが突然、
「あ、わしゃ、いつかこの電車に乗ったことがあるけん」と言った。
「え…? 本当ですか?」と僕。
連れ合いのお母さんも不思議な顔でお父さんを見る。
「わしが、19のときじゃった」
「じゅうく…? それはまた、えらい昔で…」
「おやじと、高野山へ行ったんじゃね~」
「へぇぇぇ。高野山ねぇ…。初めて聞きよるわ」とお母さんも驚く。
そんなことを話しながら、金剛駅に着くと、次男夫婦が車で迎えに来てくれていた。次男の嫁さんは、これから入院をするのだという。
病院は閑静な住宅街の中にあった。
新生児室には3人の、生まれたての赤ちゃんがすやすやと眠っていた。
一番左に、わが家の苗字が書かれたベッドがあった。
明日の午後は、その場所に次男夫婦の赤ちゃんが寝ているはずである。
久しぶりに対面した次男の嫁さんとご両親の姿には、感動した。
「大きいお腹じゃのう」と、お父さんとお母さんは、お腹をさわる。
嫁さんは、思わず涙を流した。幸せの涙って、こういうものなんだ。
何ヶ月もお腹の中に赤ちゃんを抱えているというのは、大変なストレスだろうし、日常生活にも十分な注意が求められる。そのフィニッシュがいよいよ明日に迫った。そこで、長い間会っていなかった両親との対面…。彼女の感慨も、ひとしおだったろうと思う。
明日…
と言っても、もう、これを書いているのは今日29日の朝なので、
今日の午後、赤ちゃんが生まれる予定である。
帝王切開での出産だから、入院期間は来週水曜日まで9日間という、少し長い期間だが、お産の時間は通常よりも短くて済むそうである。
モミィとソラにとっても、初めてできる従兄弟である。
モミィも「赤ちゃん、早く見たいねぇ」
と、このごろはそのことをよく口にしている。
そうだね~。
早く見たいね~、僕も。
~ 7月29日 午前8時 ~
PS
本日午後2時前に、赤ちゃんが生まれました。
元気な男の子です。
よかったです~。