電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋義夫『さむらい道(上)』を読む

2021年12月15日 06時01分26秒 | 読書
中央公論新社の単行本で、高橋義夫著『さむらい道』上巻をよみました。書名の『道』は「みち」とよませるようで、「最上義光(よしあき) 表の合戦・裏の合戦」という副題のとおり、戦国期の大名で山形城主である最上義光を主人公とする物語です。最上義光と言えば、小説等でもあまり良く描かれない戦国武将の代表的な存在かもしれませんが、実際はそれほど悪役ではなかったみたい。

物語は、義光と父・義守の対立に発する襲撃から始まります。要するに家臣団の内部対立が父子の確執のもとであり、その背後には伊達家や天童頼久ら最上八楯の勢力争いがあり、要するに最上家はまだ不安定な地方領主の一人にすぎないということです。高擶(たかだま)城に軟禁されていた義光は山寺に脱出、ここでしがらみのない流れ者などを加えながら配下を増やし、力を蓄え、機を見て実力行使の形で山形城に戻ります。

本丸の父・義守と新館の子・義光の対立は、結局は外部の力を頼みとする父・義守が逃亡する形で展開しますが、やはり周辺勢力との危ういバランスが続きます。その間に、織田信長の台頭と挫折、豊臣秀吉と明智光秀との決着など、歴史を揺るがす大事件が続きますが、正直に言って山形は遠い。関西で起こる事件は、最上川舟運の紅花商人などの情報がたよりです。その点、谷地の白鳥十郎長久は情報が早く、最上義光の立場から見れは立ち回りがいちいち小面憎い。庄内の悪屋形・武藤氏の動きもあり、宿敵天童頼久と裏で暗躍する白鳥十郎長久を倒し、領内をまとめる必要がありました。



面白いです。昔の山本周五郎『樅の木は残った』原作の大河ドラマでは、伊達家の立場から描かれていましたので、当然のことながら最上義光とその妹・義姫は悪役として描かれます。伊達政宗は母・義姫から毒殺されそうになるのですが、山本周五郎は母親だから罰しなかったことにしていたのではなかったか。その筋立てはどう考えても無理があります。高橋義夫さんのほうが、解釈はずっと合理的です。


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