電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩。時々は実際に散歩を楽しみます。

三浦しをん『舟を編む』を読む

2012年11月20日 06時03分53秒 | 読書
平成24年に本屋大賞を受賞した作品、三浦しをん著『舟を編む』を読みました。

第1章:玄武書房辞書編集部の荒木公平は、監修者の松本先生との二人三脚で、国語辞典『大渡海』の編纂作業を続けて来ましたが、定年退職を前にして、後任となる編集担当者を探しておかなければならないことに気づきます。ようやく探し出したのは、なんとも風采のあがらない、馬締光也という男でした。

第2章:馬締光也の日常生活と恋愛、辞書編集者としての適性が描かれます。真面目な馬締、タケ(竹)おばあちゃんの孫娘が香具矢(かぐや)さんで、「月の裏」という料理屋で板前修行中というのですから、まさに「竹取物語」の世界。伝統的駄洒落保存会会員の当方といたしましては、思わずうれしくなってしまいます(^o^)/

第3章:馬締とは正反対の性格の西岡正志が、国語辞書の編纂事業から離れ、広告宣伝部に移ることになり、悩みます。あまり向いているとは思わなかった実務とは別に、辞書編纂の事業に別の角度から愛着を感じるようになっていたのでした。

第4章:新人が辞書編集部に配属になります。女性向けファッション雑誌編集部から来た岸辺みどりです。彼女の役割は、辞書に最適な用紙の選定。あけぼの製紙の宮本と組んで、究極の辞書用紙を開発選定しながら、ちゃっかり恋人もできてしまうあたりが、いかにもな展開ではあります。

第5章:四校の段階で、一語欠落が判明し、泊まり込みで校閲作業のやり直しに突入します。辞書編纂も大詰めです。そこへ松本先生が入院したとの報せが入り、馬締は社外編集者となっている荒木とともに、試し刷りを持って見舞いに行きます。大きなプロジェクトの完成の喜びと悲しみ。見事なエンディングです。



うーむ、なるほど。本屋大賞を受賞したのも頷けます。個人的には『ピエタ』(*)が一押しでしたが、国語辞書とヴィヴァルディの楽譜とでは、前者のほうがより一般性があるのは否めません。一冊の本の中で2組が結婚し1組が恋愛関係に入るという展開は、読者の期待に応えたのか作者の好みなのかはわかりませんが、よりハッピーエンドに近い『舟を編む』のほうが、悲哀の色濃い『ピエタ』よりも人気が出たのは無理もないことかと思います。

(*):大島真寿美『ピエタ』を読む~「電網郊外散歩道」2011年7月

【追記】
主人公となる馬締光也には、だれかモデルがいるのではないかと感じていました。さすがは Google です。それらしい取材記事(*2)を探してくれました。

(*2): 朝日新聞デジタル:「舟」を編む 果てはない

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15 コメント

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Unknown (けん)
2012-11-20 11:23:05
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
写真 (こに)
2012-11-20 17:58:05
narkejpさんの机にしをんさんの本がマッチしています♪

恋は成就、辞書編纂も無事完了
真面目な馬締クン、良かったです。
けん さん、 (narkejp)
2012-11-20 19:38:57
トラックバックをありがとうございます。松本先生はお気の毒でしたが、全体的には気持ちの良いお話でしたね。なんだか、NHKのプロジェクトX の辞書編纂版みたいでしたが(^o^)/
こに さん、 (narkejp)
2012-11-20 19:44:53
コメント、トラックバックをありがとうございます。私の机の写真なぞを掲載すると、乱雑なのがバレバレですね(^o^;)>
『舟を編む』、なかなかおもしろかったです。けん さんへの reply でも触れましたが、NHK の「プロジェクトX」の辞書編纂版みたいでした。伝統的駄洒落保存会としては、たいへん気に入った想定でした(^o^)/
面白かったのですか? (おなら出ちゃっ太)
2012-11-21 13:27:41
粗筋だけ拝見すると、何かありがちな展開な気もしますが…
評価されたのは辞書編纂の舞台裏のディテールなのかしら?
おなら出ちゃっ太 さん、 (narkejp)
2012-11-21 20:14:27
コメントありがとうございます。おもしろかったですよ。辞書編纂の裏側を垣間見ることができたのと、軽量級ですがそれなりによくできたストーリーと、両方で楽しみました。ただし、個人的な好みで、ヴィヴァルディの弟子たちを主人公にした大島真寿美さんの『ピエタ』のほうがぴったりくる、ということです。図書館で借りたのにはそんな理由もありまして(^o^)/
読みたい (四季歩)
2012-11-21 21:48:00
この本、知りませんでした(汗)
でも、何かしら面白そうな予感がしました。
何よりもカップルは幸せなほうが良い、
というのは確かです。
それから、辞書の編纂の裏側というのも
面白そうです。
四季歩 さん、 (narkejp)
2012-11-22 20:06:11
コメントありがとうございます。なかなかおもしろかったですよ。辞書の編纂の裏側というのも、興味深いものがありました。筋立てはわりに軽量級ですが、この辞書編纂という事業の性格が、最後まで読ませる力を持っていました。
おっしゃるとおり (きし)
2012-11-23 21:54:35
おっしゃるとおり辞書編纂という目のつけどころがいい作品ですよね。「軽量級」とは言い得て妙、です!
私も「ピエタ」の美しさのほうに軍配をあげたいですねえ。
あっ! (きし)
2012-11-23 21:55:50
言い忘れました。トラックバック、ありがとうございました。

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