電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『ワーキングプア~日本を蝕む病』を読む

2010年03月05日 06時22分45秒 | -ノンフィクション
NHKスペシャル取材班による『ワーキングプア~日本を蝕む病』を読みました。この番組は、残念ながら見ておりませんが、単行本が出て話題になっていることは承知しておりました。このたび、ポプラ社からポプラ文庫で出ていたのを見付け、購入して読んでみたものです。漠然とは感じておりましたが、現在就職活動中の息子がもう少しすると出ていかなければならない社会が、なんとも大変な変貌をとげていることを、あらためて知ることとなりました。

本書の構成は、次のようになっています。

I 「貧困」の闇が広がる日本
II ホームレス化する若者
III 崩壊寸前の地方
IV 夢を奪われた女性
V グローバル化の波にさらわれる中小企業
VI 死ぬまで働かざるをえない老人
VII 荒廃を背負う子ども
VIII 現実に向き合う時


全給与所得者の5人に1人(21.8%)は年収二百万以下、若者の4人に1人は非正規雇用、そして女性給与所得者の約4割が年収200万円以下で、急増する外国人労働者が賃金水準をさらに押し下げるという現実に、あらためて愕然とします。正社員になれない若い世代の現実が、出生率の低下や教育に関する国際調査の地位低下などになって表れており、雑誌や新聞の購読率の激減なども、たぶん同じ文脈の中でとらえることができるのでしょう。

考えてみれば、当方も大学在学中に父親が吐血し、胃切除手術を受けなければならない事態になりました。今になって思えば、あれが原爆症由来の消化器系癌の闘病生活の始まりだったのでしょう。以後、寝たきりの祖父、全盲の祖母を含む家族の生活を支える責任は、私にかかってきました。当時、進学が決まっていた某大学院には診断書を添えて入学辞退を出し、思い切り方向転換しましたが、たまたま就職できたから良かったものの、もしあのとき就職することができなかったら、一家の生活は破綻していたことでしょう。セーフティ・ネットの弱い社会における生活の危うさは、とても他人事とは思えません。

昔から、病気と貧困は連鎖しています。平均的な生活水準が上昇することで、特効薬以上に疾病率が低下してきたことは歴史が示すところでしょうが、そういう統計的なことばかりではなく、働き手の病気がしばしば一家の運命を変える例は、どなたでも身近なものとして挙げることができるはず。健康で働けることを感謝しつつ、息子たちの世代が将来に希望を描くことができる社会であってほしいと願うばかりです。

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2 コメント

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Unknown (Zion)
2010-03-05 19:51:42
我が家自営業でして、おそらく給料など考えたらワーキングプアにはいってるかも。まあでも楽しくやってますよー。
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Zion さん、 (narkejp)
2010-03-05 20:57:13
コメントありがとうございます。たしかに、健康で楽しく働けるのが一番です(^_^)/
ただ、本書の内容はそれができなくなったときのことをテーマにしていますので、重いです(^_^;)>poripori
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