電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『八朔の雪~みをつくし料理帖』を読む

2013年06月12日 06時01分16秒 | 読書
角川書店ハルキ文庫で、高田郁著『八朔の雪~みをつくし料理帖』を読みました。

本書は、享和二年の淀川の洪水で両親をなくした澪(みお)が、大阪の天満一兆庵の嘉兵衛に拾われ、天性の味覚を見込まれて料理人の見習いとなりますが、様々な運命にほんろうされて、元女将の芳と二人、江戸の長屋で暮らしながら、そば屋「つる家」で働く中での出来事をつづるお話です。言ってみれば、身を尽くして料理に打ち込む娘の物語。

第1話:「狐のご祝儀~ぴりから鰹田麩」。物語の始まりは、主要な登場人物の顔見せが主題でしょう。そば屋「つる家」の主人の種市、常連客の小松原さま、澪と芳、町医者の源斎、裏店の気のいいおかみさんのおりょうとみなしごの太一などです。小松原さまと呼ばれる浪人風の男は、なにやら謎の人物のようです。
第2話:「八朔の雪~ひんやり心太」。心太は「ところてん」と読むのだそうで、どう考えても不思議な読み方です。吉原の遊女が登場するのも流れとしては唐突なのですが、ここは澪の幼なじみの野江との関わりで、多少の不自然さはやむを得ません。淀川の洪水で澪が両親を失うところは、ドラマの背景を説明する上で大事なステップなのでしょう。
第3話:「初星~とろとろ茶碗蒸し」。そば屋「つる家」の店主の種市が腰を痛め、もう仕事を続けるのは無理と宣告されます。で、考えたのがそば屋ではなく澪に店をやってもらうこと。種市がなぜ「つる家」という名前にこだわったのか、その理由も明かされます。あれこれ悩む澪を決断させるのが、やっぱり小松原さまの一言。さらに、「基本に戻れ」という指摘も。この人は、ずいぶん良い役回りですねぇ。そして、ここに初めてライバル登龍楼が登場し、いきなり放火で店を失ってしまいます。
第4話:「夜半の梅~ほっこり酒粕汁」。澪はなかなか前向きです。屋台の店を出して、酒粕汁を売ります。寒い季節に熱々の酒粕汁はこたえられないでしょう。ブリの代わりに塩鮭が入っているとのことですが、大根とニンジンとコンニャクと油揚げと根深ネギが材料といいますから、三平汁や石狩鍋ともまた違うようです。吉原のあさひ太夫こと野江との連絡役をつとめるのが、翁楼の料理人の又次です。小松原さまは、やっぱりいい役回りです。



なかなかおもしろい。娘料理人というシリーズ、『舟を編む』でもヒロイン役の香具矢さんが「女で板前というのはおかしいか」と問う場面がありました。料理=男の世界ということを、実はようやく認識した次第。なにせ、今までは老母と妻の家庭料理が中心で、料亭の板前さんの顔など見たことがありませんでしたので(^o^;)>poripori


コメント (8)    この記事についてブログを書く
« 音楽用語が名前になった例 | トップ | シューベルト「交響曲第1番」... »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はまります (よし)
2013-06-12 17:08:39
遠方の友人たちに借りたり買ったりして8巻を読みきり、15日に出る最新刊を予約しました。
大坂(上方)の食材の特徴や言葉使いをうまく使っているのも楽しみです。
昨年北川景子の主演でドラマ化されましたが、まだホンの一部なので続編を期待しています。
はまる物語ですね。
返信する
よし さん、 (narkejp)
2013-06-12 20:26:03
コメントありがとうございます。同じように、はまっております(^o^)/
なかなかおもしろいですね。さっそく続巻を購入し、次々に読んでおります。15日に新刊が出るのですか。それは楽しみです。
返信する
偶然です (アルマーニ)
2013-06-12 23:08:16
私もたまたま今週から読み始めました!
現在2冊目です。
若干あれやこれやが短期間で起こってしまったり、都合良すぎるところもありますが、まあ娯楽小説ですからね。

当時の料理とか、食材とか、上方と江戸の違いとか、なかなか面白いですね。

返信する
アルマーニ さん、 (narkejp)
2013-06-13 05:37:01
コメントありがとうございます。おや、偶然ですね! 味の好みは様々で、みな一様な反応は考えにくいと思うのですが、そこはまあ「お約束」で、テレビドラマ化するにはかえってよいのかもしれません。なかなか面白く、楽しめます。
返信する
Unknown (晶子)
2016-02-06 20:00:38
たいへんご無沙汰しております。
トラックバックありがとうございました。
今さらながら読んでみましたが、面白かったので、わたしもシリーズを追いかけようと思います
返信する
晶子 さん、 (narkejp)
2016-02-06 20:57:46
コメントありがとうございます。数年前に読みはじめて、止まらなくなりました。途中で良いタイミングで新刊が出ましたので、あまりじれったい思いをせずに、比較的スムーズに読み終えました。なかなかおもしろかったですよ。
返信する
2作目購入しました! (こに)
2019-05-29 07:45:49
長い年月に渡って続く物語なのですね。するとドラマも続編アリかな。
画像でお隣に写っている吉田篤弘さんのも良作ですよね。私の中では吉田さんベスト3に入ります。
返信する
こに さん、 (narkejp)
2019-05-29 18:19:59
コメントありがとうございます。比較的、読後感のよい物語ですので、楽しめると思います。2作目というと、『花散らしの雨』でしょうか。吉田篤弘さんの本も、この頃おもしろく読んでいたはず。つい先年のような気がしていましたが、もう6年もなるのですね。早いものです。
返信する

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事