電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304を聴く

2015年02月21日 06時04分08秒 | -室内楽
過日、山形交響楽団のモーツァルト交響曲全曲定期演奏会「アマデウスへの旅」の終結に際して開催された「松田理奈が奏でるモーツァルトwith池辺晋一郎&飯森範親」コンサートで、開幕冒頭に、ヴァイオリン・ソナタ第28番を取り上げておりました。ホ短調K.304 です。
1778年にマンハイムで書かれた6曲のうちの1つで、旅先のパリで母アンナが病死するという不幸に見舞われたときのものだそうです。

第1楽章:アレグロ。ヴァイオリンとピアノがユニゾンで奏でる主題は印象深く、思わず聞き耳を立ててしまいます。やがて、いつもの流暢なモーツァルトの調子が戻ってきますが、やはり悲しみの影が再現してきます。
第2楽章:テンポ・ディ・メヌエット。この曲の儚げで切ない開始が、妙にお気に入りです。たしかにセンチメンタルな曲なのですが、そうとばかりは言っておれない面があると感じます。

この曲は、これまで、ジョージ・セルがピアノを担当しクリーヴランド管のコンサートマスターだったラファエル・ドルイアンがヴァイオリンを奏した1967年のステレオ録音をもっぱら聴いております。CDはSONYにしては珍しい廉価盤で、SRCR-1650 です。
この演奏では、ピアノを受け持つ指揮者ジョージ・セルの腕前に野次馬的興味を持つところですが、これがたいそう立派なものです。いわゆるヴィルトゥオーゾ・スタイルではありませんが、若い頃にピアノの腕前を買われて、R.シュトラウスの下で歌劇場の練習ピアニストとして活動していたというセルの、それもなるほどと思わせる練達のピアノによる表現です。オーケストラでは女房役となるドルイアンとともに、モーツァルトの心細く孤独な心情を垣間見せてくれるような演奏です。
録音は明瞭なもので、ヴァイオリンとともに、硬質なピアノをよくとらえており、音量をあげると、奏者の息遣いがけっこう聞こえます。それもリアルといえばリアル。

■ドルイアン(Vn)、セル(Pf)
I=6'50" II=5'06" total=11'56"

さらに、この哀しさや切なさを感じさせる音楽で、すでにパブリック・ドメインになっている録音がある(*1)ことがわかり、公開されているものをダウンロードして聴いてみました。それが、グリュミオー(Vn)とクララ・ハスキル(Pf)による1958年の録音(FLAC)です。なんとまあ、当時の代表的な演奏の録音が、「廃盤です」「品切れです」という通告でくやしい思いをせずに、すんなりと入手できてしまいました。これがパブリック・ドメインの最大の恩恵でしょう。ただし、録音のほうはやはり時代相応で、必ずしも良好で満足できるレベルとは言えないようですが。

■グリュミオー(Vn)、ハスキル(Pf)
I=6'21" II=5'24" total=11'45"

(*1):モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304~「クラシック音楽へのおさそい」~クラシック音楽|リスニングルーム



写真は、モーツァルトが出入りしていた貴族の館でおやつに出されたチョコレート……ではなくて、過日の菓子業界の陰謀に今年も加担した証拠として押収した物品です(^o^)/

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