電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

マーラー「交響曲第3番」を聴く

2012年09月02日 06時03分14秒 | -オーケストラ
LPからCDになって嬉しかったのは、ベートーヴェンの「第九」が一枚に収まったことでした。曲の途中でLP面をひっくり返す手間もいらず、曲の途中で、あの素晴らしいアダージョの途中で音楽が途切れる理不尽さもなくなり、喜んだものです。
ところが、CDになってもなお不便な曲もありました。それは、マーラーの「交響曲第3番」のように、1枚のCDに収まらない長大な曲の場合です。カセット・カーステレオでも、2枚組LPが90分テープ1本に収まらず、車を更新してカーステレオがCDに変わっても、2枚組のCDの出番はさほど多くありませんでした。

PCオーディオが主体になって、このあたりの事情は変わりつつあります。2枚のCDをパソコンに取り込み、USBオーディオプロセッサを通して全曲を聴くことができるようになり、この曲に再び親しむようになりました。

資料によれば、グスタフ・マーラー36歳の1893年夏、作曲に着手し、3年後の1896年8月6日に完成したとされています。部分的な演奏はともかく、全曲の初演は1902年といいますから、20世紀に入ってからのことになります。これも意外な事実で、てっきり世紀末のことだろうとばかり思っておりました。しかし、それにしても大規模な曲です。楽器編成も、Wikipediaによれば、

フルート4(すべてピッコロに持替え)、オーボエ4(4番はコーラングレに持替え)、クラリネット 3(3番はバスクラリネットに持替え)、小クラリネット 2(2番はクラリネットに持替え)、ファゴット4(4番はコントラファゴットに持替え)
ホルン8、ポストホルン、トランペット4(第6楽章でコルネットに持替え可)、トロンボーン4、チューバ
ティンパニ2(各3台ずつ)、大太鼓、小太鼓、軍隊用小太鼓、シンバル付き大太鼓、タンブリン、シンバル、トライアングル、タムタム、グロッケンシュピール、調律された鐘 4ないし6
ハープ2
弦五部:合計88人
アルト独唱、児童合唱、女声合唱

というものだそうで、いやはや呆れるほどのすごさです。

当初は「夏の朝の夢」という題名を持っており、各楽章にも表題が付けられていたのだそうで、この長大な音楽の手がかりにはなるように思います。こんなふうです。

第1楽章:「牧神が目覚める、夏がやってくる」、力強く決然と、ニ短調、4/4拍子。
第2楽章:「牧場の花たちが私に語ること」、テンポ・ディ・メヌエット、イ長調、3/4拍子。
第3楽章:「森の動物たちが私に語ること」、コモド・スケルツァンド。急がずにスケルツォ風に、というような意味でしょうか。ハ短調、2/4拍子。
第4楽章:「人間が私に語ること」、きわめてゆるやかに、神秘的に。ニ短調~ニ長調。アルト独唱は、ニーチェの「ツァラストゥラはこう語った」の最後でツァラストゥラが歌うところだそうです。歌詞の中身は、どうもあまりピンときませんが(^o^;)>poripori
第5楽章:「天使が私に語ること」、テンポは活発に、表現は率直に(朗らかに)、ヘ長調、4/4拍子。「子供の不思議な角笛」から「三人の天使が楽しい歌をうたった」より。アルト独唱、女声合唱、児童合唱が加わる童話的な世界です。
第6楽章:「愛が私に語ること」、ゆるやかに、平静に、感情をこめて。ニ長調、4/4拍子。壮大で力強く輝かしい、でもかなりしつこい終結です。

この曲を聴くと、「子供の不思議な角笛」や「交響曲第4番」も聴きたくなってしまいます。ギネスブックに載りそうな長い曲なのに、不思議なものです。季節は夏、マーラーの自然描写というか自然への共感は、東洋の島国に住む中高年の心にも訴えるものがあります。

演奏は、CDがエリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団、ドリス・ゾッフェル、リンブルグ大聖堂少年合唱隊、フランクフルト聖歌隊女声合唱団、DENON COCO-70473/4、1985年4月、フランクフルト、アルテオーパーにて収録されたPCM/デジタル録音です。ヘッセン放送との共同制作。

LPのほうは、クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団、マージョリー・トーマス、バイエルン放送女声合唱団、テルツ少年合唱団、1967年5月、ミュンヘンのヘルクレス・ザールにて収録されたアナログ録音で、型番はグラモフォンのMGX-9923/4 というものです。この演奏は、けっこうお気に入りでした。

■インバル指揮フランクフルト放送響
I=32'31" II=9'56" III=18'04" IV=9'35" V=4'02" VI=23'53" total=98'01"
■クーベリック指揮バイエルン放送響
I=30'47" II=9'35" III=16'50" IV=9'18" V=4'06" VI=21'47" total=93'23"



カセットテープのほうは、今は亡きM君からのいただきもので、ショルティ指揮シカゴ響によるものです。

【追記】
参考までに、演奏時間のデータを追加しました。

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