電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

児玉龍彦『内部被曝の真実』を読む

2011年10月30日 06時05分12秒 | -ノンフィクション
ヒロシマにおける被曝二世の一人として、放射線と健康の問題については、ずっと関心を持って来ましたが、福島原発事故以来、とくに内部被曝の問題について、報道などに注目しております。

先日、行きつけの書店で、児玉龍彦著『内部被曝の真実』という幻冬舎新書を見つけ、購入してきました。著者は、ネット上ですでに有名になっている、

七万人が自宅を離れてさまよっているときに、国会は一体、何をやっているのですかっ!

と、私たちが日頃思っていても言えない台詞を国会の場で代弁してくれた、東大先端研の教授です。あの怒涛の15分間は、まさに「学者が心底怒ったときの姿」を体現したようなものでした。

本書は、その怒りを、データと冷静な分析に代えて再現するとともに、国会で提出された資料を併せて収録したものです。コンパクトですが、内容はきわめて重いです。たぶん、雑誌等の広告料収入を当てにしていない出版社だから実現できた企画なのかもしれません(^o^)/

本書の内容は、次のとおりです。

第一部 7・27衆議院厚生労働委員会・全発言
 1. 私は国に満身の怒りを表明します
 2. 子どもと妊婦を被曝から守れー質疑応答
第二部 疑問と批判に答える
第三部 チェルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ
 ~エビデンス探索20年の歴史と教訓~
第四部 "チェルノブイリ膀胱炎" ~長期のセシウム137低線量被曝の危険性~
おわりに  私はなぜ国会に行ったか
付録  国会配布資料

本書を読み、著者の主張するように、緊急な対策がとられることを切に望みますが、それと同時に、別な感想も持ちました。

(1) 猿橋勝子博士の業績の偉大さを、あらためて感じました。
(2) 母乳から 6Bq/L のセシウム検出 と言われても「たいしたことないじゃん」と思ってしまう、数字のコワサ。

女性科学者の目標となっている、猿橋賞という顕彰のもととなった、猿橋勝子博士(*)については、以前にも何かのテレビ番組で観たことがあります。それが、思いもかけない形で、アクチュアルな現実として再登場したことに、歴史の不幸を感じずにはいられません。

(*):「猿橋勝子という生き方」米沢富美子著~「千の天使がパスケットボールする」より

また、WHO の基準では、飲料水の場合、10Bq/L になっているそうですが、母乳に 6Bq/L の放射性セシウムが含まれるということは、どういう意味か。これは、1 リットルの母乳で平均して1秒間に6個の割合で放射性セシウムが崩壊し、放射線を出している、ということになるのでしょうか。1分間にはその60倍、1時間にはその3600倍、・・・ということになります。活発に細胞分裂を行い、成長途上にある乳幼児の体内で、強い放射線が炸裂しているイメージが浮かびます。実際には、母乳中にもカリウム40の自然放射能が含まれていることは承知していますが、エネルギーの大きさも違うでしょうし、さて、大丈夫なのか・・・。

テレビ等の報道の基調は、時に「被災地から脱出した人に帰宅を呼びかける」情緒的な面が感じられることがあります。原発事故が収束したわけではないのに、と思ってしまいます。

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