電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋義夫『若草姫~花輪大八湯守り日記』を読む

2011年10月19日 06時41分53秒 | 読書
中公文庫で、高橋義夫著『若草姫~花輪大八湯守り日記』を読みました。

羽州肘折温泉で湯守りをつとめる花輪大八は、新庄藩で郷代官をつとめた花輪五左衛門の次男で、城下では火花の大八と異名をとる暴れ者でした。ある日、真冬にソリに乗ってやってきて、布袋屋に泊まっている姫様のおつきの者が、心臓を一突きにされて死んでいるのが見つかります。大雪の中、代官所から調べに来ることも期待できず、いったん雪の中で仮埋葬します。身分を明かそうとしない姫様のおつきの女は、花輪家の次男と知り、「若草ものかたり」という三冊の草子を手渡し、自分たちに万一のことがあれば、石川丁の寺下半蔵という者に届けてほしいと依頼します。どうやら、お家の大事にかかわる争いがあり、姫様たちは殺された男に監視されていたようなのです。

合海の伝兵衛という目明しが登場しますが、これが一癖あるけれど憎めない男です。道場破りをしたはいいが、怪我をして湯治に来た牟田小四郎という西国武士のとばっちりで、松坂道場と対立するハメになります。さらに、どういうわけか実家の兄が蟄居させられるという展開。武士の時代におけるミステリー風な物語です。



山形県内の実在する地名が舞台となる時代小説ということで読み始めましたが、冬の湯治場を背景に展開される活劇と推理はなかなかのものです。余計な甘さがないので、読んでいながらくすぐったくなるようなことはありません。『花輪大八湯守り日記』というシリーズがどのくらい続いているのか、とんと不明ですが、本書はどうやら第二弾であったようです。第一巻は『湯けむり浄土』という作品らしい。興味が持たれます。
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