評価 (3点/5点満点)
法人税の実効税率が他国よりも高く日本企業の競争力が弱い要因となっていると主張する大企業だが、利益に対する実際の税納付額(実効税負担率)は低いのが実態。
この本では、そんな実態の理由について主に以下の3つを挙げています。
1.日本の税制(所得課税)の欠陥
受取配当金が課税対象外になっていることなど、本来大企業が納めるべき税金を納めなくてもいいようにと、法制を歪めてまで徴税を怠っている現状の租税システム。
2.租税特別措置法による優遇税制
政府が打ち出した優遇税制によって、税金を低く抑えられた状態が続いている。
3.多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ
日本の税法の力が及ばず、グローバル化の時代に追いつけない抜け道が多くある。海外の支社や現地法人を隠れ蓑にしたり、タックス・ヘイブンの国々を迂回するお金の流れ。
こうした大企業の尻拭いをさせられているのが、中小企業や国民であり、大企業からきちんと徴税すれば、消費税の増税は必要ないと主張しています。
税は、一般のビジネスパーソンにはなかなか理解が難しい分野ですが、知らず知らずに自分が損をしているという事態を少しでも回避できるよう、こういった知識も持っておきたいですね。
【my pick-up】
◎二重課税のケースはまれ
「受取配当金益金不算入制度」(法人間配当無税)は、法人企業と株主個人の二重課税排除のために設けられた側面もありました。しかし今では、大企業の利益の多くは、個人株主に帰着していないのですから、もはやこの制度を適用する根拠は失われたに等しいのです。
◎租税国家を脅かす「国際的二重非課税問題」
問題は、先進国重視(居住地国課税)と発展途上国重視(源泉地国課税)とでの二重課税を排除しようとしているうちに、源泉地でも居住地でも課税されない「二重非課税」(世界中のいずれの国にも税金を払わないこと)という驚くべき事態が生じてしまっていることです。