2015 Ironman Japan
ラン編
旧大和小を後にして道路へ出る
ここでバイクジャージを脱ぎ忘れたことに気付く
汗をたっぷり含んだバイクジャージは重り以外の何物でもない
T2に戻るか…
一瞬思ったが、今にも止まってしまいそうな脚の状態を考えると1mでも一歩でも進んだ道を無駄にしたくない
腰から下が別のモノが付いているかのよう
大腿部からの痺れが酷くジンジンと着地の度に痛む
今まで練習してきた…ハムと尻で逃がす動き…どころか大腿部が思うように動かせない
それでも体幹と体重移動、腕振りで前に身体を押し出す
バイクで抜いた外国勢に再び抜かれる
付いていきたくても脚が思うように動かない
だが、不思議とネガティブな思考にはならなかった
頭の中は大腿部からの鈍い痛みで余計なコトを考えられるほど回っていなかったようだ
至って、シンプルに考えていた
”必ず脚は戻る”
自分の動きが出来る…その時まで、今は耐えろ
おそらくペースは6:00/㎞ぐらいまで落ちていたと思う
端から見れば歩いているのと同じくらいだろう
それでも、
足が動くうちは絶対に歩かない
と決めて脚を運ぶ
2㎞から3㎞おきに設置してあるエイドには必ず立ち寄るようにした
既に持参しているジェルは口に含むだけで吐き気がするようになっていた
ランでは水分のみで行こう思い、エイドでは毎回止まり、レッドブル、バームクリアアップルを補給
スポンジを頭と腰、大腿部に当て身体と患部を冷やす
日差しが出て気温も上がってきた
濡れたバイクジャージが着地の度に左右に揺れ邪魔になる
エイドの度にボランティアに預けるか、捨ててしまおうかと思ったが…
同じくらい大腿部からの痛みが頭の中を”占領”し始めていたので、少しでも意識が逸れるなら
…とそのまま着て走ることに
3㎞弱を過ぎたあたりで未舗装区間に入る
事前にランコースは試走していたので覚悟はしていたが…
未舗装の登りは巨大な壁だ
皆、下を向いてフラフラしながら歩いている
ピッチを小刻みにして突っ込む
歩いているスピードと変わらないかもしれないが、
”絶対に歩かない”と決めて、腕を振り深い前傾で何とか身体を運ぶ
2㎞ほど続く舗装区間はどの選手にとっても厳しい
自分も未だ四頭筋からハム・尻への切り替えがうまくいかない
今は耐えろ
体幹で腕振りで体重移動で…脚を前に前に…
何とか未舗装区間をクリアし、舗装道路に戻りしばらく進むと
バイク序盤で登った湖畔までをつなぐ3㎞の下り区間に入った
ここで一瞬迷う
四頭筋のダメージを最小限に抑える”ピッチ走法”で走る…か
身体を前傾にしてスピードを乗せて突っ込む”ストライド走法”…か
脚(大腿部)の感覚がまだ戻っていない以上、
前者の走法ではダメージを抑えた動きが出来るかどうか分からない
そこで、
一か八か、後者のストライド走法で行くことに
ヘタをすれば四頭筋のダメージに拍車がかかり最悪動けなくなるかも…
だけど、このまま大腿部痺れたままでは、本来の動きがいつ戻るかも分からない
これはチャンスだ!
大きく踏み出す
なるべく着地はフラットに…
ハム、殿部、体幹で受け止め、衝撃はやや前傾にしている体重に上乗せして推進力に
ダッダッダッ…
下り始めて2㎞過ぎたあたりで
徐々にハムと殿部の張りを感じるようになってきた
…と同時に股関節からの動きが少しずつであるがスムーズに
可動域が広がってきた
イケる
脚が…身体が…蘇ってきた
坂の後半
ペースは4:00/㎞前後
オカエリ
待っていたよ
脚は重いが力が入るようになってきた
自分のイメージ通り脚が動く
待たせやがって
行くぞ
洞爺湖到着
13㎞通過
残り約30㎞
湖畔沿いのフラット道に入るとペースは4:20/㎞前後に安定
大腿部の痛みあるが、動きの主導権は既に自分にあった
湖畔に出ると、一旦左折して短い折り返しポイントを目指す
既に折り返してすれ違う選手をチェック
青ゼッケン(40-44)は目視で13人
このポイントを通過している選手がいたらカウント出来ていないが、おそらく自分は14番手(だと思っていた)
一人ずつ確実に捉える!
折り返しポイントを通過
Garminは機能していないので、この時は自分のペースは掴めず
でも、確実に前を追う背中が大きくなってくる
ここからは湖畔沿いを反時計まわりにゴールへと向かう
ラン序盤で抜かれた外国勢をパスして進む
自分の動きが戻って安心したせいか、尿意で途中2度ほどストップ
猛者の中にはバイクやランの途中に処理してしまう方もいらっしゃるようですが…
自分はまだそこまで出来るほどの大物ではないので…(^_^;
エイドも止まらずに行けばもっとタイムを稼げたのかもしれませんが、補給取らず…の42㎞はこの状態では無理でした
どこまで自分の動きがもつが分からないが不思議と不安はありませんでした
本来の動きとスピードが少しずつ戻り
いつものように流れる景色と心地よい心拍
自分の心が折れなければ必ず前を捉えることが出来る
すれ違いざまEさんがハイタッチしてくれた
一人じゃない
一人だけど、一人じゃない
ありがとう
一人一人、青ゼッケンをかわし
バイク後半で抜かれた選手は全て抜き去ったあたりで
フィニッシュゲート手前の折り返し
この時点で10番手(だと思っていた)
Sさん、そしてSさんがコースすぐ脇で応援してくれていた
空っぽだと思っていた身体に力がみなぎる
一人じゃない
背中を押す…力強いエール
まだだ
この苦しみも痛みも全部受け止めてやるから、全部、全部、力を出してくれ
明日のコトはいい
これからのこともいい
ありったけの力…全部出してくれ
自分の宿泊している宿の横を通過する際、芝生にバイクジャージを抜いて投げ捨てる…ゴメンな、後で必ず取りに来るから
少し…いや、かなり身体が軽くなった
エイドに止まっている時間を差し引くとおそらく4:00/㎞ぐらいのペースで動けていたのだと思う
再び元来た道を戻り折り返しポイントを目指す
路側帯寄りの狭いコースを進む
前を行く選手に「右…通ります!」と声をかけ抜いていく
一人、二人、遙か先にいたと思っていた青ゼッケンを抜かす
まだだ
まだ
事前情報で40-44は6つのスロットがあると聞いていた
もし手が届くなら
10か月…今日、この日のために積み上げてきた
一度は諦めていた思いが力をくれる
Kona…
あと二人
あと二人抜けば6番手だ…
再び折り返しポイントを周り
残り2㎞
既に水も受け付けなくなっていた
エイドは素通り
フォームが乱れてくる
もたせる…もってくれ…俺の脚
黒ユニフォーム
目標にしていた7番手の選手をかわす
あと一人
ゴールまで続く小石路面へと入った
残り1キロ弱
前を行く選手が見えない
それでもいい
必ずつかまえる
心臓が口から飛び出そうだ
脚が股関節からちぎれそうなほど痛い
苦しい
苦しい
でも、
まだだ
まだだ
あと一人
まだ見ぬ一人を抜いてやる
フィニッシュゲートが見えてきた
前を走る選手が一人
こちらに気付いて何か言っている
「俺、違うよ!45-49」
と言って、ピンクゼッケンを見せていた
関係ない
ゴールラインを越える最後の最後まで
全力で行くんだ
フィニッシュゲートへと続く芝生
目の前には…選手はいない
ただそこにあるのは
ゴールゲートとゴールテープ
最後まで自分らしく
これは俺のレースだ
おぉぉぉぉおぉぉ!
叫ぶ
力の限り
弟よ
そこから見ているか
生きているのは、こんなに苦しくこんなにもカッコ悪くて
こんなにも素晴らしいんだ
兄ちゃんゴールしたぞ
ゴールテープを切った
”完走”だ
集中して消えていた周りの音が蘇る
脚がもつれて倒そうになる
踏んばれ
そのままゴールに向き直り
一礼
「ありがとうございました」
Run(42.2㎞)3:26:16
ラン編
旧大和小を後にして道路へ出る
ここでバイクジャージを脱ぎ忘れたことに気付く
汗をたっぷり含んだバイクジャージは重り以外の何物でもない
T2に戻るか…
一瞬思ったが、今にも止まってしまいそうな脚の状態を考えると1mでも一歩でも進んだ道を無駄にしたくない
腰から下が別のモノが付いているかのよう
大腿部からの痺れが酷くジンジンと着地の度に痛む
今まで練習してきた…ハムと尻で逃がす動き…どころか大腿部が思うように動かせない
それでも体幹と体重移動、腕振りで前に身体を押し出す
バイクで抜いた外国勢に再び抜かれる
付いていきたくても脚が思うように動かない
だが、不思議とネガティブな思考にはならなかった
頭の中は大腿部からの鈍い痛みで余計なコトを考えられるほど回っていなかったようだ
至って、シンプルに考えていた
”必ず脚は戻る”
自分の動きが出来る…その時まで、今は耐えろ
おそらくペースは6:00/㎞ぐらいまで落ちていたと思う
端から見れば歩いているのと同じくらいだろう
それでも、
足が動くうちは絶対に歩かない
と決めて脚を運ぶ
2㎞から3㎞おきに設置してあるエイドには必ず立ち寄るようにした
既に持参しているジェルは口に含むだけで吐き気がするようになっていた
ランでは水分のみで行こう思い、エイドでは毎回止まり、レッドブル、バームクリアアップルを補給
スポンジを頭と腰、大腿部に当て身体と患部を冷やす
日差しが出て気温も上がってきた
濡れたバイクジャージが着地の度に左右に揺れ邪魔になる
エイドの度にボランティアに預けるか、捨ててしまおうかと思ったが…
同じくらい大腿部からの痛みが頭の中を”占領”し始めていたので、少しでも意識が逸れるなら
…とそのまま着て走ることに
3㎞弱を過ぎたあたりで未舗装区間に入る
事前にランコースは試走していたので覚悟はしていたが…
未舗装の登りは巨大な壁だ
皆、下を向いてフラフラしながら歩いている
ピッチを小刻みにして突っ込む
歩いているスピードと変わらないかもしれないが、
”絶対に歩かない”と決めて、腕を振り深い前傾で何とか身体を運ぶ
2㎞ほど続く舗装区間はどの選手にとっても厳しい
自分も未だ四頭筋からハム・尻への切り替えがうまくいかない
今は耐えろ
体幹で腕振りで体重移動で…脚を前に前に…
何とか未舗装区間をクリアし、舗装道路に戻りしばらく進むと
バイク序盤で登った湖畔までをつなぐ3㎞の下り区間に入った
ここで一瞬迷う
四頭筋のダメージを最小限に抑える”ピッチ走法”で走る…か
身体を前傾にしてスピードを乗せて突っ込む”ストライド走法”…か
脚(大腿部)の感覚がまだ戻っていない以上、
前者の走法ではダメージを抑えた動きが出来るかどうか分からない
そこで、
一か八か、後者のストライド走法で行くことに
ヘタをすれば四頭筋のダメージに拍車がかかり最悪動けなくなるかも…
だけど、このまま大腿部痺れたままでは、本来の動きがいつ戻るかも分からない
これはチャンスだ!
大きく踏み出す
なるべく着地はフラットに…
ハム、殿部、体幹で受け止め、衝撃はやや前傾にしている体重に上乗せして推進力に
ダッダッダッ…
下り始めて2㎞過ぎたあたりで
徐々にハムと殿部の張りを感じるようになってきた
…と同時に股関節からの動きが少しずつであるがスムーズに
可動域が広がってきた
イケる
脚が…身体が…蘇ってきた
坂の後半
ペースは4:00/㎞前後
オカエリ
待っていたよ
脚は重いが力が入るようになってきた
自分のイメージ通り脚が動く
待たせやがって
行くぞ
洞爺湖到着
13㎞通過
残り約30㎞
湖畔沿いのフラット道に入るとペースは4:20/㎞前後に安定
大腿部の痛みあるが、動きの主導権は既に自分にあった
湖畔に出ると、一旦左折して短い折り返しポイントを目指す
既に折り返してすれ違う選手をチェック
青ゼッケン(40-44)は目視で13人
このポイントを通過している選手がいたらカウント出来ていないが、おそらく自分は14番手(だと思っていた)
一人ずつ確実に捉える!
折り返しポイントを通過
Garminは機能していないので、この時は自分のペースは掴めず
でも、確実に前を追う背中が大きくなってくる
ここからは湖畔沿いを反時計まわりにゴールへと向かう
ラン序盤で抜かれた外国勢をパスして進む
自分の動きが戻って安心したせいか、尿意で途中2度ほどストップ
猛者の中にはバイクやランの途中に処理してしまう方もいらっしゃるようですが…
自分はまだそこまで出来るほどの大物ではないので…(^_^;
エイドも止まらずに行けばもっとタイムを稼げたのかもしれませんが、補給取らず…の42㎞はこの状態では無理でした
どこまで自分の動きがもつが分からないが不思議と不安はありませんでした
本来の動きとスピードが少しずつ戻り
いつものように流れる景色と心地よい心拍
自分の心が折れなければ必ず前を捉えることが出来る
すれ違いざまEさんがハイタッチしてくれた
一人じゃない
一人だけど、一人じゃない
ありがとう
一人一人、青ゼッケンをかわし
バイク後半で抜かれた選手は全て抜き去ったあたりで
フィニッシュゲート手前の折り返し
この時点で10番手(だと思っていた)
Sさん、そしてSさんがコースすぐ脇で応援してくれていた
空っぽだと思っていた身体に力がみなぎる
一人じゃない
背中を押す…力強いエール
まだだ
この苦しみも痛みも全部受け止めてやるから、全部、全部、力を出してくれ
明日のコトはいい
これからのこともいい
ありったけの力…全部出してくれ
自分の宿泊している宿の横を通過する際、芝生にバイクジャージを抜いて投げ捨てる…ゴメンな、後で必ず取りに来るから
少し…いや、かなり身体が軽くなった
エイドに止まっている時間を差し引くとおそらく4:00/㎞ぐらいのペースで動けていたのだと思う
再び元来た道を戻り折り返しポイントを目指す
路側帯寄りの狭いコースを進む
前を行く選手に「右…通ります!」と声をかけ抜いていく
一人、二人、遙か先にいたと思っていた青ゼッケンを抜かす
まだだ
まだ
事前情報で40-44は6つのスロットがあると聞いていた
もし手が届くなら
10か月…今日、この日のために積み上げてきた
一度は諦めていた思いが力をくれる
Kona…
あと二人
あと二人抜けば6番手だ…
再び折り返しポイントを周り
残り2㎞
既に水も受け付けなくなっていた
エイドは素通り
フォームが乱れてくる
もたせる…もってくれ…俺の脚
黒ユニフォーム
目標にしていた7番手の選手をかわす
あと一人
ゴールまで続く小石路面へと入った
残り1キロ弱
前を行く選手が見えない
それでもいい
必ずつかまえる
心臓が口から飛び出そうだ
脚が股関節からちぎれそうなほど痛い
苦しい
苦しい
でも、
まだだ
まだだ
あと一人
まだ見ぬ一人を抜いてやる
フィニッシュゲートが見えてきた
前を走る選手が一人
こちらに気付いて何か言っている
「俺、違うよ!45-49」
と言って、ピンクゼッケンを見せていた
関係ない
ゴールラインを越える最後の最後まで
全力で行くんだ
フィニッシュゲートへと続く芝生
目の前には…選手はいない
ただそこにあるのは
ゴールゲートとゴールテープ
最後まで自分らしく
これは俺のレースだ
おぉぉぉぉおぉぉ!
叫ぶ
力の限り
弟よ
そこから見ているか
生きているのは、こんなに苦しくこんなにもカッコ悪くて
こんなにも素晴らしいんだ
兄ちゃんゴールしたぞ
ゴールテープを切った
”完走”だ
集中して消えていた周りの音が蘇る
脚がもつれて倒そうになる
踏んばれ
そのままゴールに向き直り
一礼
「ありがとうございました」
Run(42.2㎞)3:26:16
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