3月25日
2012Ironman Asia-Pacific Championship Melbourne
3時起床
不思議と眠さはない
緊張しているからだろうか
昨晩コンビニ買っておいた、
海苔巻き、ヨーグルト、マフィン、バナナで朝食を済ませる
どうも腹の調子が良くない。正露丸は持ってきているが、レース会場に着いてから酔い止めと一緒に飲むつもりだった
トライアスロンウェアの上にフリースとトレラン用のジャージを着る
それでも寒いくらいだ
予報では6℃まで下がっているらしい
水温は一体何度なのだろう?
3時45分、全ての用意を持ち、EXPO会場向かいの選手バス乗り場へと向かう
4時発の大型バスが数台止まっていた
そのうちに一台に乗り込む
偶然、日本人グループの方と一緒になった
いくつか言葉をかわしているうちにバスは出発
1時間ほどでフランクストンへと到着
途中何度か眠くなりそうになったが、
ここで寝ると、身体が固くなってしまうのでiPodシャッフルで少しだけ気分を高めておく
5時会場到着
6時半にはトラジションエリアを封鎖する
それまでの準備ということだが、1時間半あれば問題ないだろう
まずは、バイクに行き、補給食をセッティング
水用のボトルに水を入れる
タイヤの空気は昨日7気圧チョイまで入れておいたので、抜けてなければ丁度7気圧ぐらいなっているだろう
案の定、タイヤは昨日同様パンパンだったので、そのままにしておく
この時点で6時少し前
もう一度トイレに行き、再度軽量化
酔い止めと正露丸を飲み、少し早かったが、ウェットに着替える
水温の冷たさは周囲も噂していた
おそらく16度前後だろうか…
唯一悔やまれるのが、
まさか入らないだろうと思って持ってこなかったブルーセブンティーの防寒水泳グッズ(キャップ、手袋、靴下)のこと
しかもEXPO会場でも販売していたのだから、これだけ気温が寒ければ当然水温も低いだろうと考え、買っておくべきだった
今更言ってもしょうがないのでせめてもの対策で、
普段は気持ちが悪くなるのでやらないスイムキャップ耳隠しをしてみる
肌を出す部分を少しでも減らしておきたい唯一の抵抗
用意を全て終えて、着替えを大会側が用意したリュック入れて預ける
まだスタートまで20分以上ある
そうこうしているうちに選手の波が海沿いに向かって動き始めた
どうしたのかなと思い、私もそちらに向かってみる
理由はすぐに分かった人垣で前は見えなかったが、後5分ほどでプロがスタートするので、その様子を見に集まってきたのと、
その後のエイジグループでの場所取りも兼ねての移動だった
日本からは西内選手が出ている
オージーでは、昨年のアイアンマンの覇者クレッグ・アレキサンダーと一昨年の覇者、ミリンダ・カーフレーが出場している
地元が盛り上がらないわけがない
まだ空は暗く、ブイがまったく見えない状態で7時プロがスタート
同時にエイジグループも動き出す
桟橋近くのフローティングスタートということで、私も選手と一緒に海の中へ入っていくが…
冷たい!!!!!
とっても冷たい!!!!!!
氷水です
それでもウェットに中に入ってきた水が体温で暖まってくると少しずつ慣れてきた
この温度で脚を攣るのだけはイヤだなぁと思っていると、集団がだんだん前に泳いでいく、
フローティングスタート故にラインが引いてある訳でもないので、我慢出来ない選手が少しずつ前に出てしまうためだ
こちらとしては、立ち泳ぎであまり動き過ぎると冷たい水が入ってくるので、
少しでも動かないようにしてスタートを迎えたいのだが、まだ時間まで10分ほどある
まいったな
少しだけ空が明るくなって来た頃に、スイムスタート
やや後方からのスタートだったので、それほどバトルに巻き込まれることもなかった
スイムは反時計回りの1ラップ
それだけターンまでの距離も長い
周りからどんどん遅れて泳いでいくうちにいつのまにか最後尾グループになっていた
結構、スイムトレは力を入れてきたつもりだったが、(まわりから見ればとても遅かったと思いますが本人は必死です…)まったく歯が立たない
しばらくすると周りの選手が見えなくなってきた…完全に置いていかれた
まだ空は薄暗くブイはよく見えなかったが、
それでも周りの選手の水しぶきだけを便りに泳いできたのに、それすら出来なくなった
何度か平泳ぎで進行を方向を確認しながら泳ぎ、周りにまばらになったきた選手達と一緒にブイらしきところに向かう
白いブイらしきものが見えてきて、やったぁとばかりに泳いでいくと通過の目印のためのブイ…まだまだ先らしい
果たして真っ直ぐ泳げているかも分からない
ずいぶん長く泳いでたような気がした
そのうち再び選手の水しぶきが見えてきた
ようやく最初のコーナーとなるブイの場所だ
ここを左に曲がり、しばらく進みまた左に曲がる
最初のスタート地点側を目指して泳ぐようになる
ここで波が右側からやってくるようになり、私は右でしか息継ぎが出来ないので、結構、塩水を飲んでしまった
さきほど、距離の長さをイヤというほど感じたが、
今度はその倍の長さを泳ぐのだからゾッとする
なるべく距離の長さや冷たさ、波酔いことは考えないようにしてとにかく腕を回した
不思議なことに距離の長さも冷たさも感覚が麻痺してきた成果(とくに寒さは)だんだん気にならなくなってきた
永遠かと思うほど泳ぎ、先ほどぬか喜びしたブイを過ぎて、ようやくターンのブイへ、左へ左へと2つのブイを抜けて最後の直線となった
ここまで来ると、少しだけ気持ちも楽になる
自分の身体の状態を考えてみると、腕はまだ回る
それにいつも気になる脚を攣ることもなさそうだ
スイムの疲れはバイクやランに影響することは少ない
だったら全部出し切ろうとプルの伸びとかき、慣れないキックと少しだけ早くスイムアップ出来るようにと奮闘する
最後は桟橋に上がるのかと思ったら、どうやら周りの選手はさらに先のビーチまで泳いでいくので私もついていく
このビーチまでがまた長い
なかなか脚がつくところまで行けない
ようやく脚がつくところまで着たと思っても、寒さのせいか思うように脚が動かない
身体の大きいオージーはわっしわっしと途中から歩いてビーチに向かっていたが、私はドルフィンジャンプで極力水中移動
何とかままビーチへと上がり、シャワーを通り抜けて、T1へと通じるテントへと向かう
テント内のバイクバックはほとんど残っていなかった…
つまりほとんどの選手がバイクへと移動してしまったということだ
自分のスイムアップタイムは見ていなかった…
ショックでもあったがバイクで挽回すればいいと返って吹っ切れました
自分のバイクバックを取り、その先の男女に分けられた仕切りの中でバイクの用意をする
椅子に座って初めて自分の身体がガタガタと震えていることに気付いた
自分でもどうしようもないくらい身体が震え、椅子がガタガタと動くほどだ
思うようにウェットが脱げずにいると、
ボランティアがやってきて
「大丈夫か?」
と声をかけながらウェットを脱がしてくれた
バイク用のレースベルトも付けようにもバックルが震える手ではめられない
見かねたボランティアがベルトをつけ、
念のためと入れておいたウィンドブレーカーのベスト(これがなかったら走り出すことは出来なかったと思う)を着せてくれた
アームカバー、靴下、靴も手伝ってもらいながら何とか履き終えた
礼を言いたくても口がうまく動かない
ボランティアの「Keep Going!」の声でバイクラック側へと背中を押される
バイクもほとんどない状態だったので、自分のバイクを見つけるのは簡単だった
バイクをラックから下ろし、乗車位置へバイクと共に走る
この寒さで走り出して大丈夫なのか…一瞬考えてしまいそうなったが、
「考えるな!」自分を叱りバイクに乗車
身体が借り物みたいで、どう動かしていいか分からないくらい冷え切っている
長丁場のバイク、チェジュの二の舞(前半飛ばし過ぎて後半バテる)だけは避けたい
身体の感覚はなくても、とりつけたGarminセンサーはしっかりと自分の状態を表示してくれている
今はこれが便りだ
昨年、8月のアイアンマンディスタンスレースのバイクと同様、
心拍を150前後、ケイデンス80~90、パワー180~200W(パワー計はつけてないので目安)ぐらいを維持して走り出す
今回のバイクコースは
T1から市街地を少し走りすぐに高速道路(EastLink)へと続くコースだ
今回のレースのために、道路は封鎖したというのだから選手としては嬉しいかぎりだ
この高速道路を北へ45㎞走り折り返して市街地に戻ってくるコースを2ラップとなっている
スイムの遅れを取り戻したい気持ちもあったが、
今回のコースはまったく試走できていなかった(自転車では走れなかったので)ので、
1ラップ目はセーブして走ろうと思っていた
スイムでは私より早かったであろう、体つきの多いオージーたちを抜いていく
※後日、IronmanLiveをネットで見ていたYOMEから1ラップ目の前半で150人ほど抜いていたと聞かされた
高速道路ということで、
一昨日からの風の影響を心配していたが(周りに何もないので)それほど気になるほどでもなかった
また、見渡す限りの直線道路なので走りやすいことこの上ない
ところが、ここで大きな誤算が…
寝不足という訳ではなかったが、あまりにも単調すぎる道路で走行中にボーとしてきた
信じられないことだが、気を張っていないとだんだん蛇行して気が遠くなってくるのだ
この日のためにトレーニングを積んできたのに何をやっている!
と頭では自分を叱りつけるが、身体が言うことを聞かない…レース中なのに
自分がなぜこのような状態になってしまうのかまったく不思議だった
それでも高速道路のおかでそれなりのスピードで何とか最初の折り返し(45㎞)ポイントまで着た
(1ラップ目の)復路はシャキッとしないと!と自分の頬をたたきながらペダルをまわす
復路になると身体もかなり動くようになり、ようやくバイクで走っている実感も沸いてきた
気温が低く日も出ていないので、エイドで水を取る必要もなく、用意していた補給食と水、ジェルだけど充分だった
60㎞を過ぎたあたりから
古傷の左膝が少しずつ痛みだしてき
レース前しばらくバイクに乗れなかったから膝が驚いているのだろう…
などと思い気にせずそのまま走っていると、
痛みが膝からふくらはぎへと広がり、それをかばうようにしていた左足首がきしむような痛みに変わってきた
マズイなぁ…
今まであまり感じたことのないような痛みだ
そのうちに
痛みは刺すような痛みへと変わり、
左脚での引き脚は使えなくなってしまった
左脚はペダルに添えて、右足のみでペダルをまわしている感じだった
以前、膝を痛めた時は、3ヶ月自転車に乗ることが出来なかった
ふとそんなことを思ったが、今は前に進むしかない
再び市街地に入る
鈴なりの応援とはこういうことか…と言わんばかりの大歓声
凄い…ただ、その歓声に応えられるような走りには遠く及ばない自分がいることに歯がゆい思いがした
市内中心部あたりでUターン
再びもう1ラップ走り出す
もう左膝は少し引き上げようとするだけでもズキッと激痛がはしる
正直あと90㎞走る気がしなかった
だからと言って、ここですごすごリタイア出来るか!
再び高速道路へと走る
ところがもう膝に力が入らないので、速度はほとんど出なくなっていた
唯一出来るのが、ダンシング
体重を乗せて、膝を落とすように走れば痛みはかなりマシになる
ダンシングしてスピードが落ちてくると再びダンシング…この繰り返し
こんな走り方、ママチャリ乗っている中高生でもしないだろう
でも今はこれが精一杯
周りの選手が自分をどんどん抜いていく
イヤなものだ…この感覚
チェジュで二度感じた、どうしようもない無力感
前に進みたくても力が出ない
下を向き、必死にあえぐ…
止まりそうなぐらいスピードが落ちる、再び痛みをこらえてダンシング
しかし、今思えば、それもまだマシだったのかもしれない
先ほどの永遠と続く真っ直ぐな道路で、今度は痛みのせいで頭がボーッとしてきた
思考力が停止しそうだ、気がつくとガードレール寄りだったら、中央線に寄っていたり…
落車しなかっただけでも良かったかもしれないが、朦朧とした頭で目に映る白線だけを見つめ走っている
痛みがずっと続くと現実を受け入れるのが難しくなってくるのか、痛みが身体を支配しているせいか、
だんだんと今走っているこの現実が夢にも思えてきた
速度はほとんど出ていなかったのだろう
自分の前後も誰もいない
自分の前にも後ろにもどこまでも続くこの道で自分一人がいるような錯覚(おそらく本当にそれに近い状況だったと思うが)で、リアリティがなさすぎる
夢なら止めてしまおうか
何度も思った
脚をついてもいいんじゃないか
息をするのと同じくらい自然にそう思えてきた
直前のところで踏みとどまることが出来たのは、
15㎞ごとにあるエイドでのボランティアの呼びかけのおかげ
そのたびに自分がここに何をしに来たのかを思い出しハッとする
まだ身体が動くなら行こう
ぼんやりした意識の中でようやく2ラップ目の折り返し地点を過ぎた
この先にエイドがある
補給が必要だったわけじゃいが、膝の具合を見たかった
これだけ痛むとランにも影響するだろう
膝の痛みが立っていられることすら出来ないようなら棄権しよう
そう思い次のエイドで自転車を止める
クリートを外すのに足首に痛みがはしる
ふらつきながら何とか自転車を降りるが、その場でドスンと腰が落ちる
自転車がすぐに支えたが、膝に力が入らない
ランどころじゃないなぁ
さすがに焦りと諦めに似た気持ちで一杯になる
しばらく座り込んだままストレッチをする
痛みが脚から頭にまで響く感じだ
20分ほどすると、膝を曲げてどうにか立ち上がることが出来るようになった
棄権しよう
もう笑うしかない
こんな状態で走ってもしょうがない
分かっていても…
心のずっと奥の方で何か引っかかっていた
ランは無理だが、バイクだけでも終わらせたい
まだ時間はある、止まらなければどんなに遅くでもバイクだけなら足切りにならないはず
どうせ止めるならやれるところまで行こう
こんな状態でどうしてそう思えたのか正直自分でも分からないが、
エイドに止まること30分、再びバイクにまたがりペダルに足をのせていた
皮肉にも風は海からの向かい風になり、ただでさえ遅くなっていたスピードはさらに遅くなる
およそ40㎞、ダンシングで乗り切りしかない
そう思うと、周りから何人抜かれようと気にならなくなった
抜くなら抜け!俺のゴールはこの数十㎞先だ
バイクだけ何としてでも走りきる
そこでこのレースは終わりだ
それでいい、それでいいだ
風がようしゃなく吹き付ける…
この時の表情をカメラマンが撮っていたが、生気のない顔とはこういうものかと思うように顔は疲れ、口はだらしなく開き、ペダルを回す脚には力を感じなかった
メーターの数字が少しずつ180に近づく度にゴールが近づいていると信じ、永遠と思える1㎞、1㎞を進む
メーターの距離が1㎞進む度にあと何㎞と自分に言い聞かせる
もう惰性で走れるところは少しでも前に進むように身体をかがめ
とてもなく長く感じる最後の10㎞ほどを走った
町が見えてきたあたりで応援の声が聞こえてきてた
あと少し、あと少し、それで終わりだ
トランジション近くの降車エリア手前でシューズのダイヤル(スペシャのBOA)をゆるめ靴を脱いでおく
ボランティアが手を差し出し、バイクを預ける手前でバイクを降りる
まっすぐ歩くことが出来ないがそれでも何とかテントの中へと早足で駆け込む
ランに行く気はなかったのに…
反射的にフックにかかっているランバックを取り、トラジション内の着替え用の椅子に座る
ああ、終わった
本当にそう思った
ボランティアの方がさっと私の側に着て、靴を履かせようとしてくれる
別の方がゼッケンベルト(ラン用)を出してバイク用と付け替えてくれる
いや…もう、いいんだよ
まわりがてきぱきと動いてくれる中、ぼんやりした思考で思った
本当に…それでいいのか
少しだけはっきりしてきた
やり尽くしたのか
ここがオマエのゴールなのか
走ろうとか…そんな思いがあったわけじゃない
ただボランティアに促されるまま、ラングッズにチェンジしてランスタートに送り出された
多分、誰かが
「もういいんだよ」
「よくやったね」
と、言ってくれたら止めていたと思う
でも、まわりは
「All done!」
「Keep going!」
「You can do it!」
私の完走を疑わず応援してくれる
何で…???
分からない
でも応援に後押しされて、脚を引きずりながら身体を左右に振りながら…
歩き出していた
間違っている、こんなことしたら、しばらくトレーニング出来なくなる
いや、レースに参加出来ないことになるんだぞ
分からない
ただ一つハッキリしていること…歓声の中、思ったことが一つある
ゴールはここじゃない
俺のゴールはここじゃない
歩いていた
すごく無様だったと思う
苦痛に顔をゆがめ、歩いては止まり、歩いては止まり
周りの人がどんどん抜いていく
エイドのたびに補給を取る…どういう訳か異常に腹が減る
何度かエイドのテントで休ませてもらいアイシング
膝の痛みは頭の先まで響く感じだ
42㎞…長い
いつものランならそれほど苦も無く走れる距離が…今日は永遠に感じる
それでも、前に進めば少しずつゴール近づく
這ってでもゴールラインを越えてやる
ボランティアだけではない、
市街地を走る沿道、海岸沿いの芝生から、
惜しみない声援…誰かにこんなにもパワーをもらったのは初めてかもしれない
そして、無償のエールはどんなものよりも力を分けてもらえる
20㎞を過ぎて時点で痛みは全身を覆ってきた
夕日がだんだんと海に吸い込まれていく
時々、自分が何をしているのか分からなくなるほどボーッとしていた
痛みで麻痺してきたのか
残り15㎞
夕闇が迫ってきた
膝の感覚がない
不思議なことに
痛みに慣れてきたのか膝を動かすことに抵抗がなくなってきた
脚が動くぞ
少しスピードを上げてみた
イケル
アドレナリンでも出ているのか、眠っていたような脚が急に動き出した
一気にスピードが上がる
ススメ!ススメ!
インターバルトレーニングのようだダッシュで残り10㎞通過
また、次に痛みがきて脚が動くなるのも怖かった
いや、そんなこと考えたのは一瞬でただ走っていた
痛みとか完走とか…そんなこと吹っ飛んでいた
暗闇が港を多い残り5㎞過ぎから蛍光スティックみたいなものが配られる
受けとるように言われた気もするが、今はただ前へ進みたかった
残り1㎞
もう真っ暗だ
それでもゲートの左右に溢れんばかりの人が手を差し出す
その中、ハイタッチする間もなくダッシュでゴールへ
身体がとっくに限界に達している
ゴールゲート見えた
観客声援もアナウンサーの声も大音響の音楽も全部消えた
頭が真っ白だ
一瞬だった
そして頭上にゴールゲートがあった
見てたか?
やりきったぞ
頭上に指を指す
次の瞬間、
身体がガクンと崩れた
ゲートの坂道を転げ落ちそうになったところを医療ボランティアに抱きかかえられた
何か言っているがよく聞こえなかった
そのまま車いすでメディカルテントに運ばれる
…………………………………………………………………………………………………………………
ふと気がつくとベッドに寝かされていた
全身がベッドに張り付いたようで動かない
身体が鉛のようだ…しかも激痛が走る
医者がやってきて一通りの検査をする
どうやら
骨に異常はなさそうだ
痛み止めをもらい、再び寝込んでしまった
何時間寝ていたのか分からない
冷気で目が覚める
夜は10℃を着る寒さだ
勝手に出ていっかどうか分からなかったが、
ここにいても風邪をひきそうだったのでタオルを身体にまいて脚を引きずりながらホテルに戻る
シャワーを浴びて、着替えをして…
これだけでも恐ろしく時間がかかった
そのまま眠ってしまいたかったが、トラジションに預けたスイム、バイクバックを受けとり、バイクを受けとらなければ…
バイクは段ボールに梱包されゴール地点まで配送されていた
参加者全てのバイクが一台一台梱包されているのだから、そのサポートにも驚かされる
自分のバイクも見つけました…中身はこんな感じです
日付は変わっていましたが、まだまだ選手が自分の相棒を取りに来ていました
ホテルに戻るころには、夜中の1時を過ぎていた
部屋に戻るとそのままベッドに倒れ込んで眠っていた
終わったよ…
2012Ironman Asia-Pacific Championship Melbourne
スイム 1時間29分43秒
バイク 6時間34分07秒
ラン 4時間29分59秒
トータル 12時間46分19秒