第10回Busan Ocean Half Marathon Race
7月、島でのアイアンマンレースを終え、その散々な結果から
日本有数のアイアンマンの知人に尋ねたことがある
「自分の(トレーニングの)やり方に限界を感じている
プロにお願いしてトレーニングプログラムを作成(有料)してもらおうと思っているんですが…
あなたは、どのようにしてトレーニングを決めているのですか
何か参考にされているものがあるのなら教えてください」
「トレーニングは誰かに頼るのではなく、自分で決める
自分の体調、状態、気候、仕事…そういったものを考慮して決める
それが続けられるコツだ」
と答えてくれた
何かに頼るのは簡単だ
それは確かだ
うまくいかなかった時は
誰かのせい
何かのせい
にしてしまえばいい
でもそれは本当の意味で
強い
ということだろうか
強さは誰かに決めてもらうものじゃない
強さは誰かに頼るものではない
トレーニングを見直してみた
アイアンマンの知人のトレーニングを参考にしてみた
自分の伸ばしたいところ、自分の苦手なところ
レースまでの時間
日々の時間の使い方
自分でトレーニングをつくってみた
今までの自分を振り返り
もう一度、トレーニングを見直し
自分はトライアスロンを始める前
ランナーだった
だからランをメインにしたトレーニングが中心だった
その比重を少し落とし、その分、バイクとスイムに振り分ける
少しずつだがランのタイムが落ちていった
かわりにスイムの泳力と、バイクの脚力は自分でも分かるくらいついてきた
今回のハーフマラソンは自分のターニングポイントになるかもしれない
ランナーとしてやっていくのか
アイアンマン(トライアスリート)としてやっていくのか
このレースの結果が教えてくれるだろう
ここでランが思うような走りが出来なかったら、今後はランのレースは出ないでトライアスロン1本で行こう
二兎を追う者は一兎をも得ず
何かを得れば何かを失う
それならが、それで受け入れよう
全ては、自分の走りが教えてくれるはずだから
レース当日
昨日、朝ジョグの後昼寝してしまったので、昨晩はなかなか寝付けなかった
それでも明け方になるとようやく眠れたようだ
朝6時起床。6時半に朝食
ご飯、味噌汁、野菜、卵焼き、フルーツ、ヨーグルト
9時スタートの3時間前の食事でしっかり食べておかないと消化できないので、ここは何度も噛みながら消化作用を促す
その後コーヒーを飲みながらゆったり食休み
今日はYOMEの友だちがこのマラソンに出場するために昨晩かの地に到着して家に泊まっていた
YOMEは友だちと談笑
自分はデスクワークをこなし、
7時半すぎにバランスボールでゆっくりアップ
8時にレースウェアに着替え
コーディネートは(下から)
シューズ:Newton Distances
ソックス:Xソックス ラン・パフォーマンス
タイツ:CW-X レボリューション(ロング)
シャツ:スキンズ TRI400メンズコンプレッションスリーブレス
アーム:A400 メンズスリーブ
グローブ:アディダス ラングローブ
キャップ:アンダーアーマー
家からすぐ近くがレース会場なので、アップがてら会場を見に行く
すでにかなりの人数が集まっている。さすが1万人規模以上の大会だ
8時20分、家に戻ってくる
もう一度、要項のコース図を確認。頭にたたき込む
スキンズのスリーブが擦れるようなので、脇の下にワセリンをたっぷり塗る
トイレで最後の軽量化
以前のマラソン大会の景品だった、薄手のウィンドブレーカーを羽織ってスタート会場へ
8時40分会場到着
スタート脇の茂みの中に来ていたブレーカーを脱いで隠す
(取られてもいいぐらいのモノだが、ゴール後に家に帰るまで羽織れるとありがたいので)
スタート地点に近づくと、選手達がぞろぞろとスタートゲートのさらに向こうまで移動を始めている!?
確かスタートとゴール地点は一緒だと思ったのだが???
かの地お得意の変更か、何かか?
…と思い、その集団についてぞろぞろ歩く
どうやら大橋の入り口まで移動するらしい
ここまで来て初めて、他の選手のゼッケンの色が違うことに気づく
かの地の言葉はしゃべれないので、近くを歩いていた欧米人に
「この集団はハーフ(の選手)?」
と尋ねると、
「これは5㎞(の集団)だよ」
とのこと
ガーン!
時刻は8時50分、あと10分でハーフのスタートだ!
※5㎞のスタートは9時15分
急いで最初のスタート地点のゲートに戻る
スタート3分前にギリギリ戻れた
ふぅ…
前から3列目あたりに位置でスタートを待つ
ふと心拍を見ると"124”
情けない…緊張しすぎてどんどん心拍が上がっている
3回深呼吸
そして、自分に語る
何のためにココに来た
入賞の為じゃないだろう
お前は挑戦者だ
結果は気にするな
つぶれるまで走れ
お前はお前の成すべきコトをしろ
…少し落ち着いてきた
例によってかの地のMCの長いトークによって、すでに9時3分をまわっていた
何度か檄を飛ばされたあと、ようやくスタート
今日は右手にSUUNTO T6D、左手にGarmin 405CXを付けていた
ガーミンはすぐにスタートボタンを押したのだが、
スントがなかなか計測が始まらない?
あれ?
よく見ると、必死に右側ラップボタン(スタートボタンは左)を押していた
この間、5秒ほど
自分に苦笑い…と同時に頭がスッキリした。
何を慌ててる
行くぞ、俺!
初めの100mほどですぐに飛び出した先頭集団の最後尾につく
大概最初は、無理に飛び出すヤツと本当にレースを狙っているヤツとが混在する
案の定、どんどん削られていく先頭集団
スタート1㎞ほどで5番手に付けていたが、
前の2人との間が開きそうなったところで、前に出て3番手に移動
そのまま3㎞地点まで3人団子状態で進む
ちょうどその時、
「ウッディさん、ファイト!」
聞き慣れた声が!
トライアスロン仲間であり親友のブルース君がカメラ片手に応援してくれていた
ありがとう、すっごい元気をもらいました!
そのまま3人で走っていると、前の二人がさらにペースアップ
ガーミンを見ると、二人はほぼ3分ペース
速い。別次元だ
これ以上付いていくのは危険だと思い、一人旅覚悟で前の二人から離れる
自分のペースは3分30秒
これでも、自分にはかなり速いペースだ
ビルドアップ走ならこれが全力走行ぐらいだ
だが、今日はヤバイくらい脚が良く回る、呼吸も苦しくない
(心拍は180いってましたが…)
最後までこのペースでいけそうだ
いや、たとえペースが落ちたとしてもいけるところまでいってやる
そのためにここにきたんだ
5㎞を過ぎた段階で、トップ(黄色のランパン上下)から50mほど離れて、
2番手(白のランパン上下)さらに50mほど離れて私といった感じ
後ろを振り返っていないので分からないが、後ろからの足音は聞こえてこない
これ以上前の二人とも離れることもなさそうなので、
このまま走りながら、少しずつ2番手の白に追いつくつもりで走る
いつも思うのだが、追われるよりも追うほうがいい
今回も長い直線が続くコースなので、常に前の選手が見えている状態
これは自分にとっては良い状況だ
ただ、本当は、15㎞ぐらいまでは先頭集団にツキイチで付いて、
ラスト3㎞でスパートをかけようかと思ったが、
今回は開始早々一人旅とは…
まあ、前の二人も条件は同じなのでこのまま行くしかない
7㎞ぐらいからメインの橋の入り口へと続く折り返し地点に到着
ここで私の後ろにピッタリとつける4番手のランシャツ・ランパンのおじさんと合流
自分のペースが落ちて捕まったのか、
と思ったがペースは以前3分30前後
相手がさらにペースを上げて追いついてきたんだ
8㎞の給水地点手前で、カーボショッツジェルを補給
水のコップを鷲づかみして喉に流し込む
今日はスキンズの背中のポッケにカーボショッツ2本入れている
10㎞手前と15㎞地点あたりで補給するつもりだったの、1本目は予定通り
ここから橋の中腹まで、50m先の白の2番手と3番手の私
そして、ぴったりくっつくランシャツおじさんとペースは変わらず走り続ける
3年間、ずっと見続けていた橋を今こうして走っているのだが
周りの景色を楽しむ余裕なんてちっともなかった
前に見える2番手、油断するとすぐに抜かれそうな4番手のおじさん
その間に挟まれている自分は常に気が抜けない状況だった
10㎞地点をすぎ橋が下り始める頃から、後ろのおじさんの息づかいが変わり、足音が擦るような音へと変わった
限界が近づいているんだ
ランの下りは自分の得意分野
リラックスして身体を前傾にし、ストライド大きめで楽に下る
同時に呼吸を休ませるために、たっぷり吸って吐く
橋を下りきる頃にはおじさんの気配は消えていた
このまま橋の終わりまで走り、そのまま道路に沿って直線を走る
2番手の白の走りが少し変わってきた
腕降りのリズムがおかしい、左肩が落ちている、
そして明らかに速度が落ちているのが分かった
白も限界だ
自分の状態を確認する
腕の力みはない
肩甲骨と骨盤は連動して動いている
呼吸は苦しくなってきたが、このペースならまだいける
白への追撃を始める!
と思った時、すぐ後ろに別の気配を感じた
赤いランシャツに「長崎」の文字が書かれた方が、いつのまにかピッタリ私の後ろにつけていた
いつから付かれたんだ!
少々驚いたが、残り10㎞を切ったこの段階で付いてくるとは、相当計算した走りだ
しばらく長崎と一緒に走るが、
折り返し地点を曲がり、橋の復路へと入るあたりで長崎が前に出た
私もすぐ後ろにつく、そのまま2番手だった白をかわす
白も我々についてくる
2位集団が3人団子状態で、復路の橋を登り始める
往路は橋の上(2階建てのようになっている)を通るので、景色もよく見えたはずだが、
復路は往路で通った橋の下の道を通るので、前に見えるのは永遠かと思うほど長い長い直線だ
14㎞地点で長崎がペースダウン
おかしいな…と思っていたら、たまらず白が前に出る
確かにこのペースなら私も前に出たいくらいだ
前に出た白のフォームがかなり崩れている顎が上がり苦しそうだ
一方の長崎は、乱れのない綺麗なフォーム、呼吸も乱れていない。
まさか…
と思ったその週間、長崎が猛烈なスパート
まだ16㎞地点
ゴールまで5㎞以上
早すぎる…と一瞬思ったが、すぐに長崎の後ろにつく
恐らく警戒していなかったら、自分も反応できなかっただろう
この段階で完全に白は脱落
10㎞コースの参加も同じコースをチラホラ走っていたので、前を走る黄色トップはもう見えない
つまり、長崎と自分の2位の座をかけての走りが始まったのだ
18㎞地点まできっちり長崎の後ろにつく
まったく無駄のない脚運び
かなりレース慣れしている様子
そこで、長崎が後ろを振り返り、私と目が合う
ほんの少し驚いた様子
ここで、とどめのスパートを長崎がかけてきた
もちろん、反応したが、さすがに脚がついてこない
ペースは3分10~20
速い
少しずつ離されていくが、ある程度の距離を保ったままの速度でお互い走る
残り1㎞、橋の出口が近づいてきた
ここで、まさかの兆候が、右と左のふくらはぎがピクピクしている…両足とも攣りそうだ…
ここまできて…もう少しもて!
拳でたたく、脚が自分の意思とは無関係に暴走しそうだ
まだだ、まだだ!
ここで最後のカーボショッツを補給。少しでも脚が攣るのを後伸ばしに出来ればと願う。橋を下ると10㎞の選手が集団が前にいて、なかなか進めない。声を出そうとするが、口からは呼吸だけでそれ以上は何もできない。何とかぶつからずに全てかわして、ゴール前の直線に入る。手前50mほどのところで、長崎がゴールしたのが見えた。
悔しい…でも、まだ俺のレースは終わっていない!
ゴールまであと20mほどで、脚が言うことをきかなくなった
酷使した脚の反乱だ、脚がもつれる。真っ直ぐ走れない
動け!動け!動け!
脚を引きずるようにしてゴール
声にならない声で叫ぶ
気がつくと、ゴールテープを切っていた
走った
走れた
走りきった
すぐに後ろを振り返る
「ありがとうございました!」
今度は声に出して言った、呼吸は乱れたままだがどうしても伝えたかった
まわりから拍手が溢れていた。
終わった
もう何も残ってない
すべて出し切った
後悔はない
ゴール後、すぐに長崎の方に声をかける。
やはり日本人だった
しかも実業団
2位、3位と日本人独占だ
表彰式まで若干時間があったので、家に戻り、プロテインを飲んで着替えて自転車で会場に向かう
表彰台に上がるなら着たいと思っていた、
「合力日本」のLEGONジャージを着て行った
長崎さん(仮名)も表彰台の近くの控えの席にいらっしゃったので、少し話をした
二回のスパートは意図的なものだったらしい
追いついたところでスパートをかけて相手の戦意喪失する作戦だったとか…
本人曰く「いやらしい作戦ですいません」と謝っていた
また私の後ろに付く前に、ずっと私の走りを観察していたそうです
私の走りが、やや脚をひきずり気味で登りにリズムを感じなかったので、
スパートをかけたら付いてこれないだろうと判断したとか
二回目のスパートは私が後ろについているとは思わず、後ろを振り返り私がまだついていたので、
予定外の二度目のスパートだったとか
長崎さん(仮名)と一緒に
普段の練習内容を聞くと、1ヶ月に300㎞ほど走る(数年前は、1ヶ月1000㎞!)そうですが、
普段は通勤ランがメインだとか
ペースも5分ぐらいで調子が良い時は4分半と、私のジョグと同じくらいだった
ただ、違う点は意識している部位
肩甲骨から骨盤までが常に連動していることを意識して
"ゆっくり速く”がモットーだとか
それを聞いてハッとした
それは自分も3種目のトレーニングで常に意識しているのと同じことだ
もう一つアドバイスして頂いたのは、
そうした意識を確認するのに、一番良いのが階段登りだと言う
楽に階段を上れている時、全身の筋肉が一番良い状態で総動員して働いているらしい
そういう状態だと一段抜かししても疲れない筋肉になる
…とのことだった
長崎さん(仮名)とは
短い時間だがとても貴重な話を伺えた
今回のレースはかの地でもかなり大きなレースだったためか
かの地や、日本からも新聞記者の方が来ていて私たちも取材を受けた
10㎞入賞者の欧米の方(男性はイギリス人、女性はカナダ人)やハーフの我々日本人2名と
外国人勢が歴代最多の上位3位以内の入賞者だったらしい
かの地の新聞(デジタル版)に掲載されていました
スポンサーも大手がついたためか
テレビの報道に加えて編集された動画もアップされていた
ココをクリックしてもらうと動画に飛びます
1分43秒あたりから、私も登場します
YOMEは2時間15分で完走、お友達も2時間5分で完走
丁度、表彰式前にゴールできたので、写真を撮ってもらった
かの地のマラソンでは、今まで2回入賞(取り消しになったのも加えると3回)したことがあるが
いずれも4位と7位
一つ順位が上がるだけで、こんなにも違うとは
たくさんの方が見て下さる前での表彰台
2年前のトライアスロン(オリンピックディスタンス)での3位入賞よりもお客さんの数とメディアの数がまるで違います
アナウンサーの呼びかけに応えて手を上げる
花束、賞状、トロフィー、賞金(20万W)と頂く
かの地の言葉ではなく、英語で「Congratulations」と言って手渡された
こんなちょっとした配慮も嬉しかった
念願のLegon合力ジャージでの表彰台
バイクではなくランでの表彰台ですが(笑)
アイアンマンを想定したロングのトレでも、ハーフに対応できることがわかったこと
それと、体脂肪云々はあまり関係ないこともわかった
そういった数字に惑わされず、
しっかりと目標をもったトレーニングをしていけば、結果はついてくる
それが分かっただけでも、収穫の大きいレースだった
YOME&お友達も完走スマイル
第10回Busan Ocean Half Marathon Race
ハーフマラソンの部 1:16'11" 3位
天気:晴れ。気温:16~18度。海雲台~広安里(橋の横断、平坦基調)
平均心拍183。最高189。エネルギー消費1070kcal
Total: Av3'35"/km
今日の走りが全てを教えてくれた
走ろう
これからも
Ironmanとして