一年前はアイアンマンなんて想像もできなかった
完走できるとも思っていなかった
そんな私が、今日この日を迎えた
レース当日
4時におきて、YOMEを起こさないようにストレッチをして
食欲はなかったが朝食を食べる
おにぎり2個
バナナ2本
インスタントみそ汁
これ以上は食べれなかった
本当はこの後のことを考えるともっと食べておいたほうがいいのだと思うが
胃が受け付けない
5時過ぎに部屋の電話で部屋に集まるように言われた
レース前のミーティングかと思ったら朝食でした
山盛りご飯にキムチといろいろ進められましたが、丁重にお断り
6時前にはモーテルを出発
レース会場にはすでにたくさんの選手がトランジットで準備をしている
どの選手もとても強そうに見えてしまう
ブルース君たちは余裕があるなぁ
事前に入水チェックも終わっている
ジェルをバイクのフレームにつける人も多いが
私の場合は、ゼッケンベルトにこのようにゴムでつけます
バイクパートで残ったものはそのままランパートでも使えるので
今日のバイク
本当はフルクラムのレーシングゼロにチューブレスタイヤを履かせるつもりだったのですが
リアタイヤの空気漏れが(パンクではないのに)ヒドイので、今回は、いつもの練習用のマビックのキシリウムSL
一日晴れだったら、リアにはパワータップを履かせようと思ったのだが、
今日もかなりの猛暑で昨日のようなスコールもあるかもしれないので、
パワータップはホイールバックに入れたまま(実はこれが後でとんでもない事態を生むことに…)
DHバーの先端には、スキンズのパワースリーブを
寒さ対策ではなく日焼け対策です
マイティマンコース図
今回のレースでは、スタート地点とゴール地点が違います
スイムは、造船場近くの海を2ラップ
海から上がって公道を136キロ走り、F1サーキット場に戻ります
1周5.6キロのサーキット場をバイクで8ラップしてバイクパート終了
その後、サーキット場を1周、公道を往復して、再度、サーキット場1周で42.195キロのフルマラソン
ゴールはF1サーキット場
…の予定でしたが、スタート間際にコース変更!?
かの地のこととはいえ、これだけ直前の変更にはさすがに他の方も
驚いていた
ランは公道を3ラップしてサーキット場入り口でゴール
となりました
かの地の言葉がまったくわからない私を気遣って、周りの方が英語で教えてくれました
そんわけで、ランのグッズはトラックに載せてF1サーキット場に移動です
これも教えてもらわなかったら、ラングッズを渡すことができませんでした
スイムスタート5分前
結局、アップできず
まあ、長丁場だからあせらずいくしかない
スイムスタートエリアが狭いため
計測ポイントを過ぎた時点でタイムがカウントされる
7時スタート時間だか、列に並んで海まで向う
腕時計のスタートを押して、一回深呼吸して計測エリアを通り海に飛び込む
3.8キロスイムのスタートだ
気温はかなり上がっていたのだが、浮力優先でロングスリーブのウェットをチョイス
最初の1周がとてつもなく長く感じた
とにかく700人近くが一斉のスタートだったので、そこそこバトルもありました
緊張して身体も固くなっていたので、ずいぶんと無駄に力の入った泳ぎをしていたと思う
中央、赤い帽子の男性の上に青い腕のウェットが私
1周目のかなり手前にブイがあり
ここでUターンかと思ったのがだが、周りを見るとまだ皆さん前へ泳いでいる
もっと先なのか…心が折れそうになるが、息継ぎの時、青空が見えてきた
あぁ、お前はそこから見ているんだな
まぶしい夏の日差しが目に痛い
でもアイツもそっから見ているようで
みっともないコトできねえなぁ…と再び泳ぎ始める
2周目に入る
息継ぎの時、空を見るたびに何となく元気をもらっているような気がしてきた
すると、そこまで気付かなかった肩周りの力むがとれてきた
腕をガムシャラにまわすのではなく、しっかり水を押し出す
プルとローリング
遠くの水を抱え込んで後ろへと送る
海と喧嘩するな、水と同化しろ
いつも何度なくプール練で練習してきたことが思い出されてきた
かなり楽に泳げるようになってきた
しかし、2周目の最後のターンをしたあたりから体の冷えを感じて
それが少しずつ足の先に集まってくるような…
足を攣る前のあの独特な感覚がしてきた
嫌な予感がする
もう少しもってくれ
意識するほどフォームが乱れる
と、その時、足の裏の筋肉を攣った
慌ててしまいそうな自分と妙に落ち着いている自分の二人がいた
後者の方が強かった
すぐに背泳ぎに切り替えプルだけ続けて
足は伸ばしたまま痛みをやり過ごす
空を見上げると、とても時間がゆったりしているような気がした
海に浮かんでいるだけ
静かな時間
時間にして数秒だろう
すぐに身体をもどしクロールの体制に
周りには猛者たちが水しぶきをあげている
そうか
ここが今の俺いる場所だ
不思議と恐れや不安はなかった
体のスイッチが入ったようだ
残り半周
行くぞ
ハイエルボー、ローリング、ハイエルボー、ローリング・・・
頭で繰り返し、3回に1回ヘッドアップを入れて前へ前へ泳いだ
もう迷わない
スイムデッキを上がり、トラジットエリアへ
およそ2時間近く泳いでいたらしい(遅い…)
しかし、予想以上にバイクが残っている
お腹の中がゴロゴロする
トイレにでも行ったらすっきりするのかもしれないが、それはどうしても行きたくなった時でいい
今は、スイムの遅れを取り戻すためにもバイクの準備にとりかからないと
フルマラソン用のソックスを履いて、バイクシューズを履く
身体は冷えているが、いつものホテルのプールに比べたら温水と言っていいぐらい暖かかった
加えて日差しも出て気温もかなり上がってきた、バイクで走っていれば腹の様子も治まるさろう
さすがに180キロ素手で走ると手の皮ももたないかもしれないと思い
バイクグローブも装着
慌てず乗車エリアに向かい
シューズをしっかりはめてからバイクパートスタート
バイクパートはYOMEは来れませんでしたので、写真はありません
(業者が来ていたので、後日アップできると思います)
スタートしてすぐに
スキンズのパワースリーブをつけて軽めのギアでアップがてらクルクルまわします
前回の
スーパーマンのバイクパートでは前半からかなり飛ばして後半まったく足がまわらなくなってしまったので、今日はかなり抑え目で走ります
感じとしては、弱メディオぐらいでしょうか
パワータップ装着していないのでわかりませんが、180~220W前後ぐらいでしょうかね
DHバーを持っての姿勢を、同じく前回のバイクパートでは2時間と耐えることが出来ずいたのですが、
今回はまったく問題なかったです
不思議だ
確かにDHバーを持ったスタイルを意識してローラー台にも乗っていましたが、
いいところ1時間半ぐらいでした
補給の方ですが、後半になると固形物が食べれなくなるのは分かっていたので、
1時間に1本パワーバーを食べるようにした
でも2本でお腹一杯それ以上は無理でした
水は40分おきぐらいに口に含むようにした
サドルの後ろにつけたボトルはちょっとした段差でも問題なかったので安心していたが
一度だけ、車の減速用の段差のところで一本ボトリと落ちた
オリピックディスタンスなら拾わないが、この時点でまだ100キロも走っていなかったので、一旦止まりボトルを拾ってから再スタート
ボトルが落ちたのはこの1回だけ
むしろ優秀な方だろう
すごいぞエリートパロン!
およそ30キロごとに補給所があった
水と補給食とシャワーを浴びられるようになっていたそうだが
水も食料も十分あったので、(お腹の方も大丈夫だったので)全てスルー
風はあまりなく平坦な道が多かったのでとても走りやすかった
ここでTTバイクがあれば…とちらっと思ってしまう
コースは比較的に工場地帯や田園の中と交通規制しやすい道が多かったが
市街地や四車線の大通りを横断する場面もあり、地元の警察がすべて車をストップしてくれた
これはかなり気持ちがよかった
コースの分岐点にはボランティアの方か警察がほとんど立っていてくれたので、
道に迷うことはなかった
暑い中本当にありがたかった
バイクの方は、順調にいつもどおりに
抜きはするが抜かれない
で順位を上げていく、おそらくブルース君は得意のスイムで私のはるか前を走っているはずだ
まずはブルース君に追いつこう
その思いでペダルを回す
脚の方はコワイくらい快調にまわっていた
調子が良すぎる…そんな気さえする
こんな時に勢いに乗ってペダルを回すと後半足が売り切れる
長丁場だ
あせるな
前回同様100キロすぎあたりでスピードがガクっと落ちるのかな…
と思ったら、ほぼ最初と同じくらいの強度でペダルを回している自分に驚いた
そろそろF1サーキット場かな
なんて思ったら後ろから集団が来た
トレインを組んで45キロ以上のスピードで走っている
ルール上、ドラフティングは禁止なのだが
あいかわらず、その辺は守られていない
もっとも、第三者からの補給も禁止されているにもかかわらず、サポートの車が付いていたり、
途中でホイールを変えたりしている人もいるぐらいだから
ルールもあってないようなものだが…
トレイングループがそのまま前へと消えていったが、
可笑しなことに坂やある程度の平地が続くところでは、いつも追いつく
坂でスピードが落ちるのは、体が重いのだろう
ムキムキのスプリンター体形は登りには向いていない
また、トレイン内でも調和が保たれていないようで
誰も前を轢きたがらない
結果、スピードにムラがある
こちらは上りも下りも一定の強度で走っているので、トレイン組はまったく無視していた
結局、サーキット場に入る前にトレイン組は壊滅
個々バラバラになった元トレイン組を抜いてサーキット場へ
この時点で5時間を過ぎている
風がかなり強くなってきた
ディスクホイールの人は横風をモロに受けてつらそうだ
ここからF1サーキット場を8周
足はまだ動く
大丈夫だ
応援に来ている方が誰ともなく水を差し出してくれる
これはありがたい
(後で聞いた話だが、大会側で用意した水がなくなり、応援していた方が持ち寄った水を
選手達に渡してくれていたらしい)
ほとんどの区間が向かい風で身体を起こすと止まってしまいそうになるほど
一番風を避けられるスタイルがDHバーを持つこと
5時間以上走って、DHバースタイルをとっても首は痛くならない
毎周回、サポーターの方が差し出してくれる水、コーラ、ジュースの美味いこと
(ただし、上手くとれずに一度だけ頭からコーラをかぶってしまいました・・・)
周回数を重ねながら、
塩、梅干、塩トマト、羊羹など補給する
身体は欲しているが、固形物を食べると気分が悪くなる
そろそろ水分のみの補給でないと体が受け付けなくなる
6周目あたりが一番辛く
風が巨大な固まりのように前に立ちはだかっているようで前へ進めない
やはりここでもトレイン部隊がいました
便乗したい気持ちもありましたが、途中、チェーン切れで肩を落として歩いている人を見かけ
今、足が動いて、自転車も万全なのに何を言っているんだ
と自分を叱咤
何とか8周回終え、メインスタンド裏手に入ると、
係員にバイクを降りるように言われる
バイクは別の係員の方がどこかに持っていかれる
私は、そのままランのバックが何百と無造作においているエリアに案内された
100番のランのバックを受け取ると、今度はランシューズに履き替え
夢中になって気がつかなかったが、普通に歩けたんですよね
前回は、バイクをまともに置くこともできないくらい足にきていたのに
ランパート
果たして42.195キロ
走りきれるのか
公道を3往復なのだが、あきれるくらい直線道路を3周するわけで
精神的にはかなりキツイが
逆を言えば、常に前の人が見えているわけで目標は立てやすい
前の人を一人ずつ抜いていけばいいだけだ
走り始めは、お腹がゴロゴロして上手く走れなかったが、尿意を処理すると身体も軽くなった
ここで補給所で楽しみにしていたコーラを飲む
この日のために2週間カフェイン断ちをしていた
ここぞという時に飲むコーラは体の隅々を目覚めさせてくれる
およそ5キロごとに給水所があり、コーラと水を1杯ずつ飲んでいた
心拍計はトライアスロンの時は、最初のスイムからデータを拾えないので
今回はつけずに走った
ただ、ランのペースが分かるようにスントのセンサーはつけていたので自分のペースを
チェックしながら走るようにした
最初は4分50秒くらいだったが、
だんだんスピードが乗ってくると4分15秒ぐらいのペースまで上がってきた
1周目往路で復路を走るブルース君を見つけた
ブルース君とは1周差か?
なら2周分抜けばいい
ランだけは誰にも負けないくらい走りこんできた
いつもの持久走と同じくらいよく足が動く
2周目後半少し中だるみしたが、3周目はもう一度スピードを上げて走る
3周目の復路、
サーキット場へと向う道に夕日が差していた
本当に1日中レースしているんだなぁ
ふと思った
走るのは好きか?
自分に聞いてみる
大好きだ
この瞬間も、
そしてこれから続くゴールまでの道
ハムが張っている
そろそろ足にきそうだ
でも
このレースのケリをつけるのは自分しかいない
自分のゴールを踏むために
たぶん
これからも先もずっと続く道なんだ
この道を
これからの道を
走る
走りきる
サーキット場内に入り、ゴールまであと2キロ弱
目の前に3人いる
一人かわす
さらにスピードが上がった
キロ4分のスピード
二人目をかわす
もう一人前にいる
キロ3分50秒
スピードが自然と上がる
会場が見えてきた
3人目を抜いた
ゴールラインが見えた
ダッシュ
全力をぶつける
今、この瞬間に全てを出し切れ
終わった
でもまだ走れる
力を出し切れなかった
力の出し所がわからなかった
悔しい
でも
完走できたんだ
今はそれでいい
周りのスタッフに言われるがまま
簡易ベッドに寝かされる
別にどこも悪くないのだが
かえって体が冷えてしまった
前回のレースでは、しばらく動けなかったが
今回は普通に立って歩けている・・・YOMEが「歩けるの?!」と驚いていた
バイクと預けていた荷物を取りにメインスタンド側に行く
まだこれだけの荷物が残っている
制限時間は今日の夜中の12時
無造作に置かれたバイクたち
傷とかついてないかなぁ・・・
メインスタンドとコース以外はほとんど完成していなかった
来月のF1レースまでに間に合うのかな
我々と一緒に帰るはずだった方がゴールしたのが11時過ぎ、
5時間近くレース場で待つことに…これなら我々だけでバスで帰った方が早かったのでは・・・
自宅に戻ってきたのが、翌朝の5時過ぎ
1時間ほど仮眠を取って出勤
レースよりもこの日の仕事の方がある意味キツカッタ
アイアンマン
最高です
頭の中ではすでに来シーズンのことばかり考えています
目標は、今年の自分のタイムを更新!