朝起床して顔を洗い、身だしなみを整えるときに欠かせないのがスマホのラジオ。
洗面の時間帯は、NHKの「らじるらじる」というアプリでNHKの放送を聞いています。
そんなNHKラジオですが、今朝の「社会の見方・私の視点」というコーナーでは、IT評論家の尾原和啓さんが登場。テーマは『今年のITのキーワードは信頼と共感になるのではないか』というお話で、とても興味深いものでした。
尾原さんのお話の趣旨は、「ネットビジネスというと、個人が隠された匿名性が強く、そこに詐欺や誹謗中傷、ステルスマーケットや偽情報など、危ない世界と思われがちですが、そうではなくて、特に今年は、信頼や共感こそが大切にされるキーワードになるだろう」というもの。
その例として挙げていたのがエアB&Bという、インターネットで空き部屋を貸してネットで決済するという今どんどん拡大中のビジネス。
ネットで登録してきた客に対して、この貸部屋には『よろしかったらお買い求めください』というお土産やお酒が置かれていて、なんとその代金支払いがただの箱が置いてあってそこに代金を入れてもらうシステムなんだそう。
日本の地方の道端にも似たような野菜売り場がありますが、これなど日本らしい信頼社会だからできることなんじゃないかと思っていたものが、このエアB&Bで増えてきているというのです。
こんなことが成立する理由は、利用者に対する貸主からのレビュー(=評価)があるからなんだそう。
部屋を貸した側が借りたお客に対して、『この客はちゃんとお金をごまかさずに利用してくれた上客です』とか、『料金を払わずに酒を飲んでいったひどい客』などといった評価をするシステムがあるので、これによって、クレジットカードで支払う事で特定されている本人に対する評価が下されることになるのです。
そして、この評価が価値を持ち、評価の高い客に対してはより高度なサービスが与えられる一方、評価の低い客に対しては、そうしたサービスが受けられないという差別や区別がつけられるようになる。
そうなると、利用客としての評価が高い方が得になるので、皆ネット上での信頼を得るためにまっとうな行動をとるようになる、というのです。
似たようなシステムは、ネットオークションでは既にあって、出品者と買い求めた客が互いに相手を評価することができます。
互いに顔の見えない匿名同士でのオークションでは、商品の配送や対応などが評価され、「この出品者は過去に○○個の出品をして、99%の購入者から良好と評価されています」というデータや、「この購入者は過去に▲▲個の品物を購入して、100%の出品者から良好と評価されています」という記録が残ります。
この評価を参考にすることで、ネット上での取引が安心して行えるシステムになっています。
つまり匿名性と信頼は両立が可能というわけで、それが今年はいよいよ本格的に社会的に認知されてくるのではないか、というのです。
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信頼や共感の心を持つことが、社会においてちゃんと得をするシステムとして機能するというのは面白い時代の流れです。
尾原さんは、ご自身の著書「ITビジネスの原理」という本の中でも、情報を発信するメリット、デメリットとして、「インターネットの普及によって、情報を隠しておくよりも、自らさらけ出す方がメリットが多くなった」と論評されています。
企業の不祥事などは、外からバレる前に自分から発信したほうが、被害が小さいし、情報を発信することで、外からの反応や情報提供を受けられて、豊かになるのだと。
実際の社会の中でも(自分自身の所属組織や連絡先などの個人情報の入った)名刺を配り、しかも一枚でも多く配って一枚でも多くの名刺をもらい、付き合いの幅を広げようと努力しているのに、SNSなどではそうした情報や自分自身のバックグラウンドをほとんど書かずに、匿名の自分で参加していて、自分をアピールしたがらない人が実に多いものです。
誹謗中傷は怖いけれど、逆に、正直でまっとうな自分であれば他人が評価してくれることが普通のことになりつつあります。
正直や誠実へのモチベーションがネットによって高まる時代を、興味深く見守っていきたいと思います。