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●漫画・・ 「けものみち」

 幼少時、両親を不慮の事故で亡くして天涯孤独の身となった、この物語の主人公、月形潔は父親の親友に育てられていたが、多感な少年期、大恩のある父親代わりの、葵学園創立者・九条総一郎の太腿をナイフで刺してしまう。その後、事が警察ざたになることを案じて、九条総一郎は月形潔を少年の内から、留学と称してアメリカへと出してしまう。アメリカ生活をする中で成長して行く月形潔は、逆に恩人・九条総一郎の男としての偉大さに気付き、恨みよりも尊敬の念を持つ。波乱のアメリカ生活を送る青年期の月形潔は、アメリカで凄絶な経験をして大人となる。急死した九条総一郎の後妻である、若き九条彩子が学園を継ぎ、二代目理事長となっていた。

 都内きっての名門校、葵学園だったが、立地が都内屈指の繁華街、赤坂に学校があり、学園の周囲は夜の歓楽街が取り囲んでいる。名門優良校・葵学園にも不良化の波がじょじょに及びつつあり、女子生徒の中には夜の街に出て深夜・明け方まで遊び、悪い大人の甘言に騙され女子高生売春まで行う生徒まで出て来ている始末だった。大都会の闇に呑まれそうになっている学園の危機に、前理事長の大恩を返すべく、十年以上の時を経て、アメリカから、成長して大人になった月形潔が帰って来る。前理事長の遺言に従い、月形潔は名門・葵学園の理事として就任する。学園を守る使命を遂行する、月形潔の命懸けの学園防衛戦が始まる。

 

 赤坂、夜の歓楽街の裏側に巣くう悪い大人たち、暴力団関係の大人たちから学園の生徒を救うべく、夜の街に繰り出す月形潔。女子高生売春を斡旋して金儲けをしているヤクザ者たちをこてんぱんに伸ばし、ディスコやクラブに出入りして店の裏側で大麻など違法薬物を購入しようとする男子生徒を家に返し、またまたヤクザ者たちをこてんぱんにやっつけてしまう。

 ストリートファイトの喧嘩の腕は抜群の強さを誇る月形潔の得意ワザは、神技ナイフ捌きだった。ニューヨーク裏町の不良どおしの闘争の中で磨き上げたナイフ捌きの腕前は超一流で、あっという間に何人もの敵勢の衣服やベルト、指先までも切り落としてしまう。驚異の硬度を誇る特注ナイフは、ヤクザ者たちの振るう日本刀の刃さえ折ってしまう。

 葵学園·理事の月形潔は剣道部の面々に学外パトロールを依頼する。剣道部主将·巽次郎と月形は男と男の契りを交わし、剣道部·全部員と酌み交わし、学外パトロールを使命とする昭和新撰組を、剣道部を中心に結成する。これより昭和新撰組は赤坂の街をパトロールし、夜の街中に出歩く学園生徒に注意を呼び掛け、補導を行う。昭和新撰組を結成した剣道部は、柔道部やボクシング部、拳法部の部員たちと確執が生じ、ひと悶着あるが、校外での争いの果てに、剣道部の軍門に降り、和解の後、柔道部·ボクシング部·拳法部は昭和新撰組の第二隊となる。

 赤坂歓楽街の裏側で暗躍する暴力団組織は、月形潔を倒す刺客をニューヨークから呼び寄せる。ナイフ使いの黒人で名をマックザナイフといい、そのナイフ捌きの腕は類い希なる素早さだった。昭和新撰組最強の主将·巽次郎の剣道のワザを持ってしても、マックのナイフ捌きの前では手玉に取られてしまう。

 月形を倒す刺客、マックと月形とはアメリカ時代の因縁があった。月形がニューヨークに居た少年時代、裏町の不良界で一度、ナイフ使いの雌雄を決する対決があって、マックは月形に破れていた。マックは雪辱をはらす再戦でまたも月形に敗れてしまい、二度とナイフの使えない身とされてしまう。

 夜の赤坂の街の闇を牛耳るダイヤモンド興業と、その組織の上位にある薔薇興産。薔薇興産会長職にある、夜の赤坂の女帝·ローズ御影。ローズ御影は葵学園の理事の一人を色仕掛けで篭絡する。葵学園理事長・九条彩子にダイヤモンド興業の魔の手が迫る。また、月形潔の情婦である赤坂芸者、千秋にも魔の手が伸びる。ダイヤモンド興業のヤクザ者たちをこてんぱんにのして行く月形潔。

 赤坂の闇組織は、月形潔に第二第三の刺客を送って来る。元プロのキックボクシング全日本チャンピオンで、アーチェリーで五輪級の腕前の用心棒の男。ナイフ捌きの凄ワザの使い手、月形潔にはストリートファイトでの、ある信条があった。それは、素手の相手とのタイマンには武器は使用しない、という自らに科した掟。そこを突かれて、無手の月形は、全日本チャンピオン級のプロ・キックボクシングの腕と素手で対決することとなる。元キックボクサーはもの凄く強く、簡単に月形は敗れてしまう。身体を癒して後、再戦で相手の男に何とかアーチェリーを持たせ、アイデアで勝機に持ち込み、元キックの用心棒をナイフ技で、再起不能の身に落とす。

 次に送られて来た刺客は、巨漢のプロレスラー崩れ。海坊主のような巨漢の外人レスラー崩れだったが、これまた月形の信条を突いて来て、素手のタイマンに持ち込んだにもかかわらず、外人レスラー崩れの巨漢は、月形のアイデア勝負で失神して敗れてしまう。そして月形の前に、ついに最強の敵、仕込み杖の、ステッキに真剣を仕込んだ、居合いの達人・木内猟介が立ちはだかる…。

 赤坂の街に夜な夜な開帳される、違法闇カジノの最強の用心棒、木内猟介。済みません、月形潔と居合いの達人·木内猟介の戦いがどうだったか、忘れたし、今ここにその、超合金ナイフ対仕込み日本刀の格闘シーンが載ったコミックス本がないんで、確かめることもできないんですが、ダイヤモンド興業が倒れ、薔薇興産のローズ御影も失脚する。昔からの腐れ縁の恋人どおしの仲だったローズ御影と木内猟介は、確か二人一緒に去って行くんだっけかな(?)。

 その後の展開は、赤坂の夜を爆音鳴らして猛スピードで走りまくる暴走族の一団が、月形と昭和新撰組に絡んで来る。六本木の夜に君臨する暴走族、スペード鉄騎団とその女頭領マリー。月形との抗争の中でマリーと月形は解り合えるが、実はスペード鉄騎団の後ろには九州に拠点を置く暴力団勢力、玄海グループが居た。玄海グループは六本木の夜を制圧し支配する。

 確か、スペード鉄騎団·頭領のマリーが、月形と通じたことから玄海グループに拘束され、裸に剥かれて縛って吊るされ、拷問みたいな暴行を受ける、SM みたいなシーンがあったと思う。玄海グループには東京侵出のリーダーである幹部の男が居て、この幹部の男が合気道の達人で腕っぷしがメチャ強いんだよね。

 玄海グループ対、東京のナワバリを死守しようとする関東の暴力団、千早組の暴力団抗争が進む。月形が理事を勤める葵学園の立地する赤坂も、抗争に捲き込まれようとしている。そんな中で、玄海グループ東京侵出リーダーの幹部、戸狩と月形が最初にあいまみえる。相手が素手ならばこちらも無手で闘う月形は、戸狩の合気道の凄ワザの前に子供扱いで手玉に取られ、月形は敗れる。

 この後、月形はドスを構えた戸狩と、今度は得意のナイフを持って再戦したりするし、また、月形の情婦(愛人)だった赤坂芸者·千秋が記憶をなくし、一時期、戸狩と関係が深くなって行くようなエピソードもある。まあ、僕は雑誌連載リアルタイムで全編読んでるし、コミックス版全10巻でも全編読み返してるけど、後半部の本は手元にないし、後半部のストーリーはちょっと忘れてます。あい済みません。芸者の千秋は、愛人っていうか、月形は独身だから普通に恋人どおしだよね。戸狩と千秋の仲が深まって行く中での、月形のジェラシー的な感情とか見ものですね。最後は千秋の記憶は戻るんだっけか? 

 原作・真樹日佐夫-劇画・影丸譲也の、格闘アクション劇画の黄金コンビで送る、ハードボイルド格闘ヴァイオレンス巨編「けものみち」は、1970年代後半の、秋田書店発行の青年コミック誌「プレイコミック」に連載されました。「プレイコミック」は1968年に創刊された、隔週刊(月二回刊)の、青年向けのコミック中心の雑誌です。

 60年代後半に入って、67年から69年頃までの間に、それまでになかった青年向けのコミック雑誌が、雨後の筍のようにニョキニョキ、各出版社から創刊されました。双葉社の「漫画アクション」、秋田書店の「プレイコミック」、小学館の「ビッグコミック」、少年画報社の「ヤングコミック」…。みんな、67年から69年の間頃の創刊ですね。60年代後半に入って、世間一般で「大学生が漫画を読む!」と驚かれた頃です。それまで子供の読み物だった、少年漫画を「週刊少年マガジン」など、高校生、大学生、若い社会人が読むようになった。実際、60年代後半に入って来ると、少年漫画週刊誌の漫画の内容が、お話のレベルが高くなった。収録されている漫画のストーリーのレベルが、一般的な小学生読者にはちょっと難しいようなレベルの内容になって来た。それまで小学生対象だった児童漫画雑誌が、小学生時の読者を持ち上がって行ったんですね。読者と雑誌が一緒に成長して行った感じかな。

 マガジン・サンデーを高校生以上の青年が読むようになって、大人読者の娯楽にも対応できるコミック誌が必要になって来た。時代に応じて、67年から69年の間に次々と青年コミック誌が誕生した。一つは貸本の衰退もあるでしょうね。貸本漫画は小学生も読んでたけど、お話のレベルは児童漫画雑誌に収録された児童漫画よりも、対象年齢的に内容が高かった。児童漫画誌が小学生向けだったら、貸本漫画は一般的に中学生以上から青年・大人向けだった。昭和30年代から40年代アタマくらいまで、よく貸本漫画は、中卒で工場で働く多くの若者の娯楽、と言われてましたからね。男性・女性とも。戦後を終えてまだまだ貧しかった、昭和30年代から40年代前半の時代に、貸本漫画は、中学を出て工場労働に就いている、勤労少年・青年の仕事を終えた余暇の娯楽だった、と言われてましたね。

 原作・真樹日佐夫-劇画・影丸譲也のハードボイルド巨編、「けものみち」の、「プレイコミック」連載期間がはっきりした期間が解らないんですよね。どうも済みません。僕の持っているB6判コミックス「けものみち」第1巻の初版発行が1986年ですが、この本は「プレイコミック」発行の秋田書店発刊のコミックスではなくて、日本文華社の発行なんですよね。秋田書店発行の秋田漫画文庫全10巻の発行が始まるのが1980年ですね。秋田書店からは「けものみち」のB6判コミックスは発行されたんだろうか?出てないんじゃないかなあ。いきなり秋田漫画文庫の文庫サイズで発行されたんじゃないかなあ(?)。隔週刊(月二回刊)の連載でコミックス全10巻の量って、何年くらいの連載期間が掛かったんだろ?

 「けものみち」がプレイコミックに連載されてた期間が70年代後半から、いっても、まあ、80年代アタマくらいまでの間であることは間違いない、と思うんですけどね。勿論、僕は「けものみち」は当時のプレイコミック誌上でリアルタイムで読んでますけど、後にコミックス版でも再読完読してます。これが日本文華社発刊のB6判全10巻ですね。だいたい、僕がこの時代のプレイコミックを毎号、本屋や駅のキョスクで買って読んでたのは、「けものみち」の続きが読みたかったから、というのが第一でしたからね。

 「けものみち」の主人公、月形潔には憧れましたねえ。雑誌連載で読んでた当時、コミックスでまとめて読んでた当時。月形潔はカッコ良かったなあ。お兄さんの梶原一騎の描くヒーローもカッコ良いんだけれど、僕は真樹日佐夫さんの描くヒーローの方が好きでしたね。キャラに憧れました。日佐夫氏とお兄さんとでは、同じスポーツ・格闘技のヒーローを描いても、キャラの味が違う。真樹日佐夫氏の描くヒーローの方が、何ていうか、ヒーローキャラにアソビがある。梶原一騎氏の生み出すヒーローは硬いですね。四角四面というとオオゲサだけど、何ていうのか、教条的というか、ヒーローが硬い感じ。悲壮というかね、何か精神的にアソビのないようなヒーローキャラが多かった気がする。それに引き換えると日佐夫氏の作るヒーローキャラは、もっと自由な雰囲気がある。ヤクザっぽさというと誤解を呼ぶが、ちょっとヤクザっぽさみたいなフリーな雰囲気。ともすればアウトロー的な感じかな。正義感の持ち主だけど、アウトロー的な感じ。何か、「正義!」とかいう悲壮感じゃなくて、もっと自由な感じかな。こんなふうに言っても伝わらないですね。梶原一騎の劇画と、真樹日佐夫の劇画を読み比べてもらうしかない。そうすれば、キャラクターの違いが解る。

 「けものみち」の主人公、月形潔は、基本、ハードボイルドな硬骨漢キャラですね。身体の中心に一本太くて硬い頑丈な骨が通っているような、揺ぎ無い屈強な精神力の柱を持っていながら、ユーモアでも感じさせそうな落ち着いた余裕がある、男の中の男のカッコ良さ、というか、そんなヒーローキャラですね。どんな困難な状況でも自分の信条は決して曲げないような強靭な精神性と、表面にそれを見せない余裕ある態度。カッコ良いなあ。漫画読んでた若い頃は、月形潔のハードボイルド・キャラに憧れまくってましたねえ。

 

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 日本文華社って、今のぶんか社の前身なんだな。というか途中で改名して「ぶんか社」になったものらしい。創業はけっこう古くて、戦後の1948年、元文藝春秋社で働いていた方が創業したものらしい。今のぶんか社というと、ストーリー四コマ漫画を集めた漫画雑誌が目立ちますね。でも現在のぶんか社はファッション誌から、自動車·バイクの趣味系の雑誌など、多岐に渡って出版業を営んでるようですね。コミックスも確か、ぶんか社コミックスのレーベルで刊行してますね。

 

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