因果応報、奢れる者久からず
こうした教訓を地で行くトランプのあせりが、強引な退院という行動で見て取れます。大統領選が1か月後に迫り、いよいよホームストレッチまで来て一発逆転を目指したトランプでしたが、コロナにより見事に転倒しました。
感染を受けた10月4日のアメリカABCニュースの世論調査では72%が「トランプ氏は新型コロナの危険性を真剣に受け止めなかった」、あるいは「トランプは適切な感染予防策をとらなかった」と答えています。
軽視が72%もいるということは、岩盤と言われている40%の支持層の中でも、ダメ出しをした人が相当いるということです。簡単に計算すれば、
72%-40%=28%
支持者40%のうち28%は、 28÷40=70%
つまり支持者でも7割の人は愚かさにあきれているということです。2つの調査は異なるものとはいえ、ざっくり言えばこういうことでしょう。しかしトランプ支持者のこと、あきれてはいても選挙では支持する人がきっと大半でしょう。
では感染により、トランプ対バイデンの支持率はどう変化したか。これはまだ十分な調査結果は出ていませんが、感染後の調査例を一つ示します。
ロイターより引用
トランプは1日夜に新型コロナウイルス陽性が判明し、翌2日から3日間にわたって入院を続けている。世論調査は、ロイター/イプソスが成人1005人を対象に10月2日~3日に実施。11月の大統領選で投票予定の有権者は596人で、そのうちの51%がバイデンを支持、41%がトランプを支持する結果となり、バイデンのリードはここ1カ月で最大となった。
引用終わり
まだ大半の調査機関は追い付いていませんが、追い付いている世論調査ではバイデンとトランプの差は10ポイント以上になっています。ちなみにトランプ支持が鮮明なFOXニュースの3日~6日の調査でさえ、バイデン53%対トランプ43%と10ポイントもの差になりました。
従来の世論調査ではなく、事態の変化を即日反映させることのできる当選予想オッヅを見てみましょう。まずディベート前の平均ではバイデンの当選55ポイント程度、トランプの当選45ポイント程度で、差は10ポイントでした。しかしディベート直後に差が19ポイントと大きく拡大。さらに感染後10月2日には61対37.5、差が23.5ポイントと決定的に拡大。退院後10月7日のオッヅでは64.0対35.4でその差は28.6とさらに拡大しています。感染者トランプのあきれた行動を見てのことです。
あきれた内容とは、入院中のトランプが支持者に向けて車でパレードし、セキュリティガードや医療関係者を危険にさらした。その上ホワイトハウスに戻ったとたん、マスクをはずして演説して見せるという愚かなパフォーマンスを行いました。ホワイトハウスでは昨日時点でトランプの周辺者が13人も感染しているクラスター発生地帯となっています。
「トランプこそコロナのスーパースプレッダー」です。すでに負け犬となったトランプの焦り狂ったパフォーマンスは、やればやるほど支持を失うという悪循環に入りました。
このところトランプは選挙で落選したら裁判でひっくり返してやると宣言し、落選後に重点を変えています。しかしそれは簡単なことではありません。というのも議会は民主党、共和党の全員一致で「大統領選挙結果を守り、スムーズな政権移行を行うべし」と決議しているからです。それはもちろんトランプの無駄な抵抗をやめさせる目的です。そうさせないためにも選挙人の獲得数で大差がつくか注目されます。
一方でトランプの感染について、「選挙用のウソ」だとか、「不利な状況の逆転を狙った感染だ」などというおかしな陰謀論が横行しています。私は常にこうした陰謀論的なうがった見方には組しません。彼は自分の命をリスクにさらせるほど若くないし、バレット氏の指名式典にホワイトハウスの上級スタッフや上院議員、軍幹部など多数を呼びリスクにさらすなど、すべてトランプ自身が不利になることばかり。
もし彼がコロナを克服して「どうだ、オレ様はコロナを打ち破ったぞ」などと叫んでも、トランプの反対者が支持側に回ることなどありえない。あるとすれば、コロナに感染したためトランプから離反した元支持者の一部が戻る程度の話です。
就任以来一度も支持率が50%を上回ったことのない大統領は、史上多分トランプだけでしょう。いや、前回大統領選でも選挙人獲得数では勝ちましたが、票数ではヒラリーに負けているので、選挙でも支持率は5割に満たなかったのです。その支持率をコロナ感染でさらに低下させる中、再選などありえないというのが私の予想です。
副大統領候補のディベート
その中で日本時間の本日、副大統領候補二人のディベートがありました。このディベートは前回のトランプによる妨害ほどのひどさはなかったのですが、やはり劣勢となり焦っているペンス副大統領がハリス氏の発言をさえぎったり、司会者が止めるもの無視して話し続けるシーンが多かったと思います。アメリカのメディア、日本のメディア、そしてアナリストたちの評価を簡単にまとめますと、
「カマラ・ハリス氏が副大統領、そして大統領に不測の事態が生じたときのピンチヒッターとしての資質が十分にあると証明した。政策内容の討論でもペンスは精彩を欠き、ハリスが勝っていた」というものです。
みなさんはもう覚えていらっしゃらないと思いますが、前回選挙での副大統領候補のディベートを私は「悪ガキ ティム・ケインと校長先生ペンスの戦いでペンスの勝」と評しました。今回は「悪態をつく高校生ペンスと、落ち着いた女性教師ハリスの戦いでハリスの勝」と表現しておきましょう。
討論直後のCNNによる勝ち負け調査では、ハリス59%、ペンス38%とハリス。ABCの調査ではハリス66%対ペンス34%、圧倒的にハリス勝利でした。
ここまでくるとアメリカではトランプ対バイデンの政策比較ではなく、バイデン勝利後のシナリオがメインテーマになりつつあります。バイデンの掲げる政策内容の分析や株式市場に与える影響などの議論が深まりつつあります。