8月はガバナンスのないボクシング連盟への批判から始まりましたが、8月末も今度は女子体操の同じ構図のスキャンダルで終わりそうです。全くうり二つの構図を眼前に見ていながら、まだ懲りないパワハラ夫婦がいるとは、あきれます。しかもこの夫婦、山根判定と同じように過去に塚原判定を批判され辞任したことのある前科1犯だそうですね。最初は「宮川の言っていることはすべてウソだ」と言っていたのですが、弁護士によって自分たちの愚かさに気づかされ、謝罪の言葉の多い代筆声明文を出しましたが、本心は「すべてウソだ」にあるとしか思えません。
と、私はかなり断定的に書いていますが、ほぼ間違いなしと思っています。
日刊スポーツ紙のサイトによれば、「日本体操協会の副会長で日体大の学長でもある具志堅氏は、宮川の苦しい胸のうちを思い『18歳の少女が嘘をつくとは思えない。協会としては宮川を守っていこうということ。練習環境も確保したいと思う』と語り、早期に第三者委員会を立ち上げる。」とのこと。
体操協会はボクシング連盟と違って、選手ファーストの精神を持った金メダリストの具志堅氏のようなまともな人がいてよかったですね。
一方、世界に向かってパワハラ全開のトランプですが、昨日も国連の難民救済組織への拠出金を今後一切止めると宣言しました。不幸な人々をより不幸にするのがトランプ流アメリカ・ファーストの本質のようです。
一体このパワハラ男を止める力はどこにあるのでしょうか。イランやトルコは経済的に限界が近づいているし、中国の力もイマイチのように思えます。唯一あるとすれば、アメリカ国内の司法でしょう。トランプのすべてを握る元顧問弁護士コーエン氏が司法取引に応じて本当のことをしゃべり始め、8つの罪状を認めたことで、多くのヤバイ事実を検察側が得ました。同時にトランプ選対本部長だったマナフォート氏が同じく8つの罪状で有罪になりました。
さらにトランプの現在のホワイトハウスでの弁護士マガーン氏の辞任が決まったことなどがトランプの逆風です。彼の個人弁護士として残っているのはトランプと同じ穴のムジナ、元ニューヨーク市長であるジュリアーニだけとなりました。
そして最新ニュースは、モラー特別検察官が調査の中で、遂に外国との疑惑のシッポを掴んだというものです。ワシントンのロビーストのサミュエル・パッテン氏が上院の諮問委員会でウソの証言をしたことを認めました。彼はウクライナ系のオリガルヒの金をトランプの就任パーティーに非合法に支払ったことを認めたのです。トランプ包囲網は一段と狭まっています。
今後もモラー特別検察官に期待しましょう。ただし、こうした件でトランプ自身の違法性が認められたとしても、司法省は大統領を訴追はしません。何故か?それについてはまた別途。
さて、グローバリゼーション・ファティーグのことをしっかりと終えてなかったので、今回は私なりの結論を提示したいと思います。グローバリゼーション・ファティーグそのものの指摘はフランスの人口動態歴史学者であるエマニュエル・トッドの歴史認識から始まりました。
彼の著書から引用した次のまとめを最初に掲げました。
戦後世界は3つ目の局面に分かれていて、現在は3番目の局面に入ってきた。
1.1950年―1980年 成長局面・・・アメリカが先行し、日本と欧州が追い付いてきた。消費社会の到来した時代
2.1980年―2010年 経済的グローバリゼーションの時代・・・ここ数世紀の様々な世界的潮流は、例えば民主主義、自由主義などと同様、グローバリゼーションもアングロ・アメリカン、すなわち英国と米国によって推進された。ソ連と中国の共産主義はそれに対抗できなかった。
3.2010年以降、グローバリゼーションのダイナミズムが底をついてきている・・・その兆候は本家のイギリスとアメリカも例外とせず、むしろとりわけこの2国で限界が表われてきている。
それが現象面としてあらわれているのが、
1.アメリカでは不平等の拡大、支配的白人男性グループにおける死亡率の上昇。社会不安の一般化により、ナショナルな方向への揺り戻しが始まり、その象徴がトランプやバーニー・サンダースの登場である。
2.イギリスもアメリカ同様にグローバリゼーション行き過ぎの影響を受けた結果BREXITを決め、欧州統合プロジェクトから抜ける決断をした。
これらを起こした理由は彼によれば、「グローバリゼーション・ファティーグ、行き過ぎたグローバリゼーションによる疲れである。」彼はグローバリゼーションの推進は経済理論の中でもネオリベラリズム(新自由主義)によるものだと断定し、それが移民問題を生起させたとしています。
それに対して私の批判は、
エマニュエル・トッドによる歴史の人口動態分析から、すぐに移民問題は導けない。彼はグローバリゼーションが移民を生起させることのクリアーな説明をしていません。逆に移民問題からグローバリゼーションが限界に来ているという議論もすぐには導けません。
そして私の提案する移民問題の解決策は、グローバリゼーションをより進展させ移民を生み出しているアフリカ諸国などにしっかりとした経済的基盤を作ることだとしました。この主張に対して普段からグローバリゼーションを批判しているような方々からも反論が来ていません。
ではこの問題の結論に入りたいと思います。エマニュエル・トッドは反グローバリズム、あるいはグローバリゼーション・ファティーグが移民・難民問題を作り出し解決不能に至っていると主張、その結果トランプという怪物が出現し、欧州でも極右勢力が力を得てEUの間に分断が生じていると断じています。
しかし私はそうではなく、彼や多くの反グローバリゼーション論者は、グローバリゼーションと移民・難民問題をごちゃまぜにしているに過ぎない、と思っています。
理由を述べます。アメリカではトランプが選挙戦を通じて最も訴えて功を奏したのは、「メキシコ国境に巨大な壁を作り、不法移民を拒絶する」という主張で、それが受けていました。欧州でも移民拒否の政策が大衆受けして極右が票を獲得し、イギリスでは国民投票で反移民派が多数を獲得、イタリアでは連合政権に入り込み、ハンガリーやオーストリアでも政権の一部を担い、フランスではルペンが負けましたが多くの票を獲得、ドイツですらメルケル政権側が極右に地方選挙でしてやられたのです。
では、移民・難民問題なかりせば、アメリカ・欧州の政治は一体どうなっていたでしょうか。多分アメリカではトランプが勝利することなく、EUではイギリスにしろイタリアにしろ極右寄りの主張が政権を脅かすどころか、極右台頭の余地などなく、かなり平穏に過ごすことができたに違いありません。
こうしてみると、トッドの著書名にある「問題はイギリスではなくEUなのだ」は間違っていて、「問題はグローバリゼーションとは関係のない、単なる移民問題なのだ」とするのがあるべき題名だと思います。今日の移民問題はグローバリゼーションの行き過ぎの結果などではないからです。
そして繰り返しますが、前回の「その3」で示したように、「移民問題の解決の決め手はグローバリゼーションの一層の進展である。」となります。
つまり「グローバリゼーションの行方には明るい未来が待つ」、それが楽観的な私の結論です。