ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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大丈夫か日本財政17年版 その7 日銀保有の国債はどうなる 3

2017年06月25日 | 大丈夫か日本財政

  日本の債券取引の指標である10年債の金利が、先週末まで7営業日全く動かなかったというニュースが流れました。取引量が極端に細っているために起きている現象です。日銀が浮動玉をほとんど吸い上げ、金融機関が長期保有を決め込んでいたはずの国債まで吸い上げ尽してしまったからです。

  株式相場で言えば日経平均株価が7日間動いていないのと同じくらいの重大事です。それは流動性の枯渇そのものです。日本の投資家が一番欠如しているのが、この流動性に対する重要性の認識です。

  私は著書でもこのブログでも、『資産運用にとって一番大切なことは、一に流動性、二に流動性、三にも流動性だ』と申し上げてきました。それがソロモンブラザーズに入社した最初に受けた教育で、当時の会長が言った言葉です。

  一般的に日本では債券のことはニュースとしてほとんど扱われませんので、こうした価格変動がないという事実を知らない方も多いと思います。扱わない理由は、マスコミ側が資本主義の基本がわかっていないためです。投資=株式=資本としか見ていない。わかっていないというもう一つの証拠は「自己資本比率が高いことはよいことだ」という間違った認識からきています。債券=借金。借金は少ない方がよい。このことが間違った認識だという説明はまた別途差し上げます。

  もう一つ日経新聞が取り上げた最近の日本市場の異常な点は、日銀の株買いです。6月24日土曜日の日経夕刊トップは「日銀、株、買い一辺倒」というタイトルで、異常さを指摘しています。簡単にサマリーします。

「異次元緩和の一環で上場投信ETFの買い入れ金額を、16年7月から年6兆円に拡大してから1年近くがたち、推定残高17兆円。上場している企業のうち833社で、日銀は上位10位以内の安定大株主になった。保有割合は多いものから、アドバンテスト16.6%、ファーストリテーリング15.0%、太陽誘電14.1%・・・。」

  株式は価格さえ上がればだれも文句を言わないため、こうした異常事態を強く非難する人はあまりいません。記事では一応、「株価が上昇しているうちはよいが、下落に転じたらどうするのか。そして債券は償還期限が来るが株には償還がなく、出口は見えない」という指摘はしています。

  売れないものを抱えるというリスクを、リスクを取ってはいけないはずの日銀が最大限抱え込む。その異常さをみなさんはしっかりと頭に入れておいてください。物価に対して効果がないにも関わらずそれを継続する日銀に、いずれはトガメが来ます。

  普段我々が多く目にする金融に関するコメントは、株屋さんちのストラテジストやエコノミストのコメントが多いため、真っ向からの批判はあまり目にしません。彼らはひたすら株価が上向くニュースを流し続けるため、目が曇っています。

  

  さて、今回は日銀の出口戦略です。なるべく簡単に説明しますが、どうしてもわかりづらい付利問題に触れざるをえません。

  大規模な資産買い入れの対価として短期金融市場には巨額の余剰資金が供給されています。日銀がたとえ長期債を買っても、売り手の銀行は日銀の当座預金に預けるので、それは短期資金になります。しかも実際にはその大部分が「超過準備金」として預けられたままになっています。そのことはアメリカでも同じだということを前回説明しました。

  この巨額の超過準備がある程度解消しないと、市場には資金不足は生じません。資金不足が生じないということは、市場で短期金融取引は成立しづらいので、市場金利が付かないというような状況になってしまいます。それが長期金利でも起きていて、先ほどニュースになったと書いた、長期の指標銘柄まで値が動かない、というところに至っています。

  短期市場は銀行が資金調達をする市場。長期市場は銀行にとって資金運用をする、つまり例えば国債に投資をする市場という違いがあります。銀行の基本行動は短期調達・長期運用で利ザヤを稼ぐことです。

  理論的には、買い入れた国債を市場で売却できれば、あり余る資金を市場から吸収できます。すると超過準備も自然に解消できることになります。ところが日本の場合、長期金利が上昇してしまうのは自殺行為ですから、絶対にできません。

  では、出口戦略論議をすでに終えて、いつ実際に開始するかという段階に達しているアメリカの場合はどうか。もしFRBが景気回復による金利上昇局面で債券を売却すれば、安値での売却となり、巨額の売却損を計上しなければならなくなります。評価損ではなく、実現損になってしまいます。そこでFRBが編み出したのは債券の満期到来を待って、保有債券を徐々に減らしていく方策です。

つづく

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