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中国リスクについて その7

2014年04月18日 | ニュース・コメント
 前回はソ連崩壊のきっかけとなった東欧諸国の崩壊に、ジョージ・ソロスの支援があったというお話を差し上げました。もちろんそれだけが原因ではないでしょうが、一定の影響力は持っていたと思われます。

 中国には東欧諸国のような周辺国はありません。チベットのように自国に編入してしまった地域はありますが、それらの地域が反抗しても国内問題だと主張されれば国際社会は支援しづらく、中国政府にはかないません。漢民族以外の民族が漢民族に対して反乱するというシナリオも、現実的ではないと思います。むしろ体制の敵は体制内の自国民でしょう。東欧諸国と違い、中国人民は世界の情報を問題なく取れる時代になっています。そのため自国の抑圧的な体制への人民の不満は非常に強いものがあります。私の勝手な中国崩壊シナリオは、チベットなどの民族的反乱からではなく、自国民の不満の爆発がきっかけだろうと考えています。

 それは経済的恩恵に浴していない地方から始まる可能性が大です。農地を取り上げられた農民、地方政府の主導する不動産開発などに投資して損失をこうむった小金持ちの反政府運動は侮れません。それに呼応するのは都会で失業中の若者でしょう。大学を卒業しても仕事にありつけない若者が半数近くいて、不満のはけ口を政府に向け共同歩調を取る。それにプラスして、阿古先生の記事にあったような知識人も「新公民運動」などを通じてそれらをサポートすることになるでしょう。

 まず反体制側の農民や若者は共産党の地方政治局員をはじめ地方の党有力者をことごとく血祭りに上げ、不正蓄財をあばくでしょう。同様に一般警察官も警察官僚を血祭りに上げ不正蓄財をあばき、最後は一般の軍人が軍の有力者を・・・、という連鎖が起こる可能性があると思われます。こうした動きはこれまで世界中の独裁者達がたどった道と同じですが、中国の場合は独裁者ではなく、独裁集団が対象となるため、独裁者一人を血祭りにするだけでは済まないところが収拾を長引かせると思います。

 中国政府が習近平になって本格化した汚職の検挙などは、そうした反体制的な動きを察知して自らを律する方向なのですが、それを強力に推し進めると党の中堅実力者達も身の危険を感じ始めます。すでに逃げの手を打っている「裸官」同様、自分が汚職で挙げられる前に逃げるが勝ちとなるでしょう。

 では先に指摘した中国の経済的バブル崩壊と抑圧的体制への不満の爆発が一度に起こった時にはどうなるかについてです。結論的に申し上げますと、バブルの崩壊と国内の政治的な混乱が国内を騒じょう状態にし、長期に渡り国が疲弊する可能性が大いにあると思います。理由は、共産党の一党独裁体制に変わる体制が見出しにくいからです。60年以上続いた体制のため、誰もが民主政治に慣れ親しんでいないのです。

 ソ連からロシアへの変遷を振り返ると、74年続いた共産党独裁が91年のソ連邦解体で終わり、エリツィンが大統領だった混乱期を経て98年に財政が破綻。99年のプーチン大統領就任後数年を経てやっと資源大国として落ち着くまで、政治・経済的な混乱は10年以上続きました。そしてロシアの場合、エネルギーを中心とした「資源」という切り札が出てきて初めて国を治めることができました。要は財政がバラマキをすることが可能になったのです。

 では中国に混乱を収束させる切り札があるか?巨大な人口という資源が唯一の切り札でしょう。しかし人件費の安さだけの勝負では、新新興国にかなわなくなってきますので、切り札と言えるかは疑問が残るのです。


 とまあ、ここまでエラそうなことを書いていますが、私は国際政治の専門家ではありませんので、しょせん過去の歴史に照らし合わせるとこんな具合か、という程度のお話として聞いておいてください。

 では、そうしたことが実際に起こった場合を想定し、日本をはじめ世界経済へどう影響するか、ここが一番大切なところですので、次回はそのあたりを金融市場の専門家の視点から考察してみることにします。

コメント (8)
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