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株式暴騰への警鐘、日銀は株式売却のチャンスだ

2023年06月19日 | 株式市場へのコメント

 4月に来日したバフェット爺さんの日本株買い宣言が誘い水になり、株式市場がとんでもない相場を形成し、勢いを増しています。ニュースは「株価は今日もバブル崩壊後の高値を更新しました」と毎日言い立てています。

崩壊後の高値って、いくらのこと?

 不思議なニュースですよね。38,915円がピークなので、そこまではいつだって崩壊後の高値に決まってますよね。それを毎日更新だっていわれても、私には全くピンときません。ニュースを書いたり読んだりする人はそれに対して疑問を持たないのでしょうか。ピークを超えたら初めて「最高値更新」と言って欲しいですね。

 この相場上昇要因として指摘されているのは、①東京証券取引所による「株価純資産倍率が1倍を切っているのはけしからん」という改善要請と、②4月中旬に来日したウォーレンバフェットの「日本株買い宣言」、③日本企業の収益改善、とされています。しかしこのうち東証による指導は、大した影響を持たなかったと私は見ています。

 理由は単純で、2月の宣言から4月中旬のバフェット爺さん来日まで、株価はほとんど上昇などしていないからです。それに対してバフェット爺さんの「日本株をもっと買うぞ」との宣言後はほぼ一貫して上昇を続け、日経平均は2万6千円台が3万3千円台へ、たった2か月で25%以上上昇しました。

 その間の買い主体は海外投資家で、東証宣言後の3月には2.4兆円も売り越していたのが、バフェット爺さんが来日した4月は3兆円の買い越し、5月も3.5兆円の買い越しです。これを見ても爺さんのご託宣の威力を感じます。

 その間逆に売りに回っているのが個人投資家と信託銀行で、まさに逆張りをしています。相場の格言「人の行く裏に道あり花の山」を地で行っているのです。さてどちらが報われるか。

 一方、要注意は証券会社などによる個人投資家を対象とした悪乗り商法です。今回は特にこれまで株式投資など経験したことの無い若い世代を中心にワナを仕掛けています。投資に関するサイトから週刊誌、TVのワイドショーまで、新NISA導入をエサに株式投資を煽りまくっています。

 

 株式相場もう一つの格言は、「シロウトが株の話をし出したらピークだ」です。こんなに上昇している相場を見てこれから買いに入るのは愚の骨頂です。そんなことはいっさいかまわずに「さあ始めよう、新NISA使い方」と煽るのが銀行証券など、シロウト相手の商売上手です。先ほど指摘したとおり、これまでに株式投資を十分に経験した個人は、いまが売り時とみて売りに回っています。

 TV番組を見ていてもう一つ気になるのは、投資初心者への解説です。株価の変動要因などいくらでもあるのに、あーだこーだと言い立て、それがいつだって普遍の真理だと教えていることです。

 株式相場上昇の原因はほぼ経済金融要因ですが、下落要因は無限にあります。一番ありそうな経済金融要因は、ここまで保ってきたアメリカ景気が後退することによるアメリカ株の下落、そして確率は低くとも起こったら大ごとなのは日本財政の破綻です。しかしその程度の経済の内部要因だけでは済みません。ロシアがたとえ小さな核爆弾でも使用するか、あるいは中国が台湾に侵攻でもしようものなら大暴落間違いなし。特に台湾は日本の近隣ですから、上昇している日本の株価が世界で一番の大暴落になるかもしれません。そうしたことが投資のリスクだということなど、シロウト向け解説では聞いたことがありません。日本は地震国ですから、今年100年を迎えた関東大震災がまた起こるかもしれないし、30年以内の確率が6~7割もある東南海地震が起こるかもしれません。

 天変地異に戦争などの災害は保険屋さんのように、「それは免責です」などということは株式市場にはないのです。それに対して米国債投資は、そうした天変地異や戦争などで株価が暴落するたびに世界中から買いが集まるなんとも幸せな大災害特約保険付投資であることを忘れないようにしましょう。

 

 最後に私から日銀へ一言、

「上昇中の今こそ日銀は保有株を売るべきだ!」

じゃなかったら、いったいいつ売るんだ、今でしょ!

 

 もちろん日銀の株式売りは株価の下落につながりかねませんが、この調子だと売り時を逃すか、あるいは暴落に拍車を掛けるタイミングで売るしかなさそうなのが気になります。

コメント (20)
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