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 物価上昇4%だって、冗談じゃない!

2023年01月11日 | ニュース・コメント

  昨日、東京都区部の12月の物価上昇率が4%と発表されました。

 電気代が前年比26%、都市ガス代は37%と大幅に上昇。そして生鮮食品を除く食料品は7.5%、生鮮食品も6.5%。携帯電話代も22.1%の上昇。

 われわれが日常生活で支払っているものの大半がこんなに上昇しているのに、その他を含めて合計するとたった4.0%だと発表されています。実感とはかけ離れています。いったい何故こんなことになるのか。理由はおかしな理屈が隠されているためです。それは物価指数の構成比で2割を占める「帰属家賃」の存在です。

 

 帰属家賃とは何か?

 そもそも物価指数は、家計が何にいくら使ったかの割合を家計調査から計算し、その割合の合計が100になるよう調整して計算します。構成比は数年ごとに変化させます。でないと例えば携帯電話の普及などを反映できないからです。

 それだけであれば、持ち家のある方は家賃の上昇率は家計には響きません。しかし物価統計上はみなし家賃を支払っているとされ計算されるのです。それが帰属家賃で、構成比はなんと家計費全体の2割も占めているのです。実際にアパートを借りている人の家賃上昇率は1%にも満たない0.7%上昇ですが、それを全家庭が払っているものと仮定されるため、物価上昇率の足を引っ張っています。

 そのためエネルギーや食料品の爆発的上昇の足を引っ張り、加重平均合計値がわずか4.0%になってしまうのです。

 

 だったら実感を反映する「実感物価上昇率」を発表すれいい。それが私の主張です。食品・エネルギーは当然含め、帰属家賃は除く。そうすれば家を持つ人の実感により近づきます。

 

 しかし物価当局はさらにそれとは正反対のことを行っています。どういうことか?

 それは食品・エネルギーを除く「コア指数」の発表です。コアとはいかにもそれが一番大事だぞというネーミングですが、それには変動の激しい食料品もエネルギー関連も除かれているのです。何故そんなことをするのか。その理由は、食品・エネルギーは変動が激しく、長期のトレンドがつかみづらいというエコノミストなど専門家の要請があるからです。ちなみに昨年12月のコア指数は3.6%で、総合物価4.0%よりさらに低い数字です。我々はそれらの歪んだ数字を大本営発表として受け入れざるをえません。

  日銀などはコア指数をベンチマークにして金融政策を決めますので、経済全体はコア指数によって大きな影響を受けるのです。

(注)コア指数は日本とアメリカでは採用品目で「生鮮」食料品を含めるか否かなどで違いがあります。話を複雑にしないため、ここでは生鮮食品だけを除く日本基準を使っています。

 

 ついでに腹立ちまぎれに申し上げれば、これだけ物価が上がっている中で日本の厚労省は年金支給額を減らす老人いじめもしています。老齢年金満額支給の月額は令和2年度の65,171円に対して今年度は65,075円。わずかですが「マクロスライド」という訳の分からない政府のごまかし政策により減らされているのです。ここではそのお話は省略します。

 一方私は、金額は少ないですが、アメリカ合衆国から年金をもらっています。毎年12月に来年の年金額のお知らせが来るのですが、今年はなんとプラス8.7%です。物価上昇率をきっちりと反映してくれますので、納得の数字です。これまでもほぼ毎年増額してきました。なんという差でしょう。なおアメリカと日本では、支払い年度の開始月が異なるため、それも若干考慮する必要はあります。

 以上、「物価上昇4%だって、冗談じゃない!」でした。

 

 

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