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America is Back!

2021年03月14日 | バイデンのアメリカ

  バイデン政権が発足してあと数日で2か月になります。まだ発足早々ですが、この2か月をレビューしておきましょう。

  まず政権の支持率ですがいつものRealClear Politicsによれば、発足当初から平均で支持率およそ55%、不支持率およそ40%でその差が常に15ポイントほどあります。非常に安定的に推移しています。就任してから一度も50%を超えたことがないままに終わってしまったトランプ政権とは大違いです。ついでに言えば、大統領選でのトランプの得票率は、そもそもヒラリー・クリントンより2ポイントくらい低い得票率でした。

  昨年11月の大統領選挙の得票率はバイデン51.3%、トランプは46.7%で、その差4.6ポイントでした。選挙の時より政権発足後の方がバイデンの支持率はだいぶ上昇しています。もちろんあの議会占拠で死者まで出した騒乱も大いに影響しているのでしょう。就任早々バイデンは多くの政策を大統領令や議会の賛成決議で実施していますので、それらに評価を受けていると思われます。

 

政治スタイルはトランプの独りよがりのツイッター政治から、まっとうな政権運営へ回帰

いきなりツイッターで爆弾を投げつけ、閣僚や官僚たちがあわてて追いかけるというやり方から、バイデンは常に閣僚や官僚たちと合意形成をしながら進めるというまっとうな政治スタイルに戻しました。大統領と閣僚や官僚との関係は良好で誰一人やめてはいませんし、ホワイトハウスをトランプのようにファミリービジネスにしてもいません。「そして誰もいなくなった劇場」とは大違いです。

  

  ではこの2か月弱でバイデン政権は何を実施あるいは宣言したのか具体的に見てみましょう。まず最初に行ったのは、トランプ政権が発足直後「America First」でぶち壊した国際協調路線への復帰です。就任演説で強調した「America is back!」を文字通り実行しています。それらのうち主なものをあげてみます。

 

1.アメリカ第一主義から国際協調路線への復帰

・地球温暖化対策のパリ協定への復帰

・WHO脱退を取り消し、協調へ

・トランプ政権下で撤廃された様々な環境規制の再構築

・国連や世界の民主主義勢力と協調しその価値観を重視し、反独裁政権の姿勢を明確化

金正恩やプーチンなど、世界の独裁政権にすり寄ったトランプ路線を翻した。最近発表された対中国政策でウィグル族の人権を重視したことにもそれが現れている。対中戦略構築のため、日米豪印による「クアッド」と呼ばれる首脳会談を3月12日に主催し、自由主義陣営の結束を図った。

 

2.コロナ対策

科学を否定したおろかなトランプの正反対を行き、公約である「100日以内に1億人にワクチン接種」が予定以上の進展を見せ、37日で半数の5千万人に接種を終えた。バイデンは3月12日の演説で、「独立記念日の7月4日までには家族が集まってパーティーができるようにする」と目安を示した。ワクチン政策は民間人、軍人を含め元医師・看護師などの医療関係者を総動員し、接種場所も病院だけでなくヤンキースタジアムなど様々な施設内やショッピングセンター、薬局などに分散させている。それに加えてグーグルはCDC疾病センターと協力し、接種場所をグーグルマップ上に表示するサービスを開始。

一方政府職員らを対象に、政府の敷地内ではマスクとソーシャル・ディスタンスを100日間守ることが定められ、マスクをせずに感染したトランプと違い、国民に感染抑止の見本を示した。

 

3.経済対策

・200兆円の対コロナ経済対策予算、国会通過

トランプ政権下では企業対策、インフラ投資を重視したが、バイデン政権は低所得者の家計支援を重視し、半分の100兆円あまりを家計支援に。一人当たり1,400ドルの配布を今月中に終える予定。ばらまきではあるものの8万ドルを超える高い所得の世帯を除いた。

 

4.女性の権利と人権重視、人種差別撤廃

人種の平等と疲弊した地域をサポートする連邦イニシアチブを導入。 これは政府が統括する施設やプログラムにおいて人種差別を撤廃する取り組みで、全ての省庁に200日以内にアクション・プランを提出することを義務付けた。またトランプによるイスラム信者の入国禁止令も撤廃。昨日はアジア系住民への暴力などヘイトクライムを非難した。

  以上は新政権が発足2か月足らずで実施あるいは宣言した多様かつ広範な主な政策です。それらすべてを全国民が支持しているわけではありませんが、かなり順調な滑り出しを見せています。

 

  しかし就任演説で強調したもう一つの公約である「Unity」、国内の分断を終わらせ結束に向かわせるための方策としては、上記の政策は賛否が分かれるものが多く、決定打にはなっていません。

  アメリカでの一般的論調は、今後の最も大きな課題は分断の修復であると言われていますが、バイデンは少なくともトランプのように分断をひたすら煽ることで求心力を得ようとするわけではないため、かなり安心して見ていられます。今後上の5に記した政策の奏功が待たれます。分断の修復は国内でも国際関係でも同じですが、 

  アメリカが世界の地政学上のリスクの焦点ではなくなった

という事は確実に言えます。

コメント (5)
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