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中国のおそろしさ2

2020年02月13日 | 中国問題

  前回の記事で私は中国おそろしさを「一帯一路」に名を借りた領土拡張戦略としてとらえました。もともと南沙諸島の一方的領有などあからさまな領土拡張もあればこうしたインフラ支援を装った密かな侵略もあります。

  今回は私の感じている最も恐ろしい中国について解説したいと思います。それは技術革新力です。5Gで世界の通信インフラを席巻しつつあるファーウェイが象徴しています。ファーウェイはアメリカでは徹底的に排除されていますが、その他の国では受け入れられていています。代表的には最近受け入れを表明したイギリスですが、ロシアや北欧、その他のEU諸国でもほとんどの国が受け入れを表明もしくは検討しています。世界で表立って排除しているのはアメリカ、日本、オーストラリアくらいなのです。技術的にすぐれていてコストが安ければ競争力があるのは当然です。日経によるとファーウェイの基地局の世界シェアーは34%、同じ中国のZTEが18%を占め、両者が半分以上のシェアーを占めています。その他はサムスン21%、エリクソン15%、ノキア9%。これがファーウェイを検討中の国々が加わるとシェアーは1社で5割を超える可能性があり、世界のデファクト・スタンダードになる可能性は大きいのです。

  それが何故脅威なのか。昨日2月12日のウォールストリートジャーナルによれば、「米当局者によると、中国の華為技術(ファーウェイ)が法執行当局による使用を前提にした「バックドア」を利用し、世界中の携帯電話ネットワークにひそかにアクセスすることが可能になっているという。米政府は友好国に対し、同社製の機器をネットワーク上で使用しないよう呼びかけている。」

   これはアメリカ政府の一方的宣言ではありますが、通信機器によりこうしたことが可能になるという警鐘で、エチオピアではそれが実行されていました。

 

  さらに他の先端技術では中国の優位がより鮮明になってきました。ちょうど昨日2月12日の日経朝刊は1面トップで先端10分野での国別特許出願数を取り上げています。先端技術とは以下のような技術ですが10分野の内なんと9分野ですでに中国がトップなのです。 

・AI  

・量子コンピューター  

・再生医療  

・自動運転  

・ブロックチェーン  

・サイバーセキュリティ  

・仮想現実 

・ドローン  

・伝導性高分子 

・リチウムイオン電池

 

  おいおい、先端技術ほぼ全部じゃないか。

そうなんですよ。ちなみに2位はアメリカが7分野、日本が2分野となっていて、後塵を拝しています。同じ統計の2005年版ではアメリカと日本が1位2位の大半を占めていましたので、様変わりなのです。特許出願数は今後の先端技術製品シェアーの先取りと言ってよいでしょう。

  中国による技術革新は何故問題なのか。今後それらの技術は当然軍事用に応用され、中国共産党による国内支配に加えて世界支配の礎になるからです。特に恐ろしいのはAIや情報通信などの分野です。昨年5月に私はブログで「国家情報法」のニュースを引用しましたが、再度掲載しますので、とくとご覧ください。

17年6月の日経新聞ニュースです。

 引用

中国で28日、国家の安全強化のため、国内外の「情報工作活動」に法的根拠を与える「国家情報法」が施行された。国家主権の維持や領土保全などのため、国内外の組織や個人などを対象に情報収集を強める狙いとみられる。効率的な国家情報体制の整備を目的に掲げ「いかなる組織及び個人も、国の情報活動に協力する義務を有する」(第7条)と明記する。

習近平指導部は反スパイ法やインターネット安全法などを次々に制定し、「法治」の名の下で統制を強めている。だが、権限や法律の文言などがあいまいで、中国国内外の人権団体などから懸念の声が出ている。国家情報法は工作員に条件付きで「立ち入り制限区域や場所」に入ることなどを認めたほか、組織や市民にも「必要な協力」を義務付けた。

引用終わり

 

  これに従えば、例えばファーウェイが設置する世界中の通信設備を通過する情報を、「今日からすべて国に提供しろ」と言えば、ファーウェイは従わざるをえません。義務なのですから。

  みなさんもよくニュースで見ると思いますが、政府自身も国内に監視カメラを設置。その台数は昨年の2月のブルームバーグのニュースですでに2億台に達しているとのこと。そのネットワークは「天網」と呼ばれ、すでに稼働中です。画像はAIによって解析され、すべての個人の行動はくまなく見張られています。その能力は例えば渋谷のスクランブル交差点を1度にわたる1千人を数十台で写し出せば、瞬時にすべての個人を識別できます。こいつは国家転覆を企んでいると個人を特定すれば行動のすべてを四六時中監視しているので、スクランブル交差点の真ん中で逮捕することすら可能です。その個人の通信内容もすべて通信インフラによって把握されているため、瞬時に証拠を突き付けられて逮捕され投獄される体制が整っているのです。それらは天網が単なるネットワークではなく、AIにより高度な解析能力を持っているからです。

 

  そうした「特定」をもし人海戦術でやろうとすると百万人単位の人海戦術になりますが、AIなら人手はかからず24時間稼働可能です。

   先にリストされた10の先端分野すべてで中国がリードする世界になれば、どれほど恐ろしいことになるのか、私には見当もつきません。しかし実際にその世界が時々刻々と近づき始めていることを我々は認識すべきなのです。

 

コメント (8)
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