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仮想通貨リブラについて

2019年07月18日 | 仮想通貨について

  このところ金融界の最大の話題はフェースブックを中心に計画されている仮想通貨リブラです。最近は仮想通貨と言う呼び名より「暗号資産」と呼ぼうとなっていますが、まだ市民権を得るところまで行っていないのでここでは仮想通貨と呼ぶことにします。 

   リブラはこれまでのビットコインなどと違い、運営を27社による協同組合的な協会組織が担うことで信任を得ようとしています。フェースブックは6月に以下のような表明を行いました。

 Libra's mission is to enable a simple global currency and financial infrastructure that empowers billions of people.

   訳しますと、リブラの使命はシンプルな世界通貨と金融インフラで何十億人もの人々に恩恵を与えることです。

   実現すればたしかに安価な振替・決済などで多くの人がメリットを受けます。例えば国をまたぐ銀行振り込みはひどくコストが高いのですが、ほとんどただ同然になるでしょう。

   これに対しG7を中心とした先進国政府やIMF、世銀などの国際的金融機関が強い関心を持ち懸念を表明しています。昨日7月17日にはG7財務相・中央銀行総裁会議で、リブラに対する重大な懸念が表明されました。18日の時事通信を引用します。

「米IT大手フェイスブック(FB)が計画する暗号資産(仮想通貨)「リブラ」について「重大な懸念」を共有。規制を念頭に置いて、迅速に対応することが必要との認識で一致した。各国の財務省や中央銀行が金融システム安定や金融政策に悪影響を及ぼすとの危機感を募らせる中、G7が足並みをそろえたことで、国際的な規制の枠組みづくりに向けた検討が今後本格化しそうだ。2020年前半の発行を目指すリブラ計画は遅れる可能性がある。」

   いったい各国の金融担当首脳は仮想通貨リブラの何を懸念しているのでしょうか。ここで仮想通貨に関する私の指摘を振り返ってみましょう。そうすることで懸念の内容がおよそわかります。まず17年9月に私はビットコインに対して投資する危険性を以下のように指摘しました。( )内はその後の進展と追加説明です。ビットコインに対する疑問の形式を取っていました。

 引用

  疑問その1.ビットコインよりもっといいものが出てきたら、価値がなくなるんじゃないの。(リブラがそれにあたります)

 疑問その2.銀行が自分の信用でビットコインBを始めたら、そっちがより安心だよね。

  (今回のフェースブック主導によるリブラはこの指摘のバリエーションで、フェースブックの他にVISAなどの企業が参加を表明したことで、信用を高めています。また日本では三菱UFJなどが独自の仮想通貨への参入を表明しています)

 疑問その3.銀行が信用できないなら、中央銀行の日銀がビットコインNを始めたらどうなの。(すでにいくつかの中央銀行は検討中です)

 疑問その4.それでも信用できないなら、世界銀行がビットコインWをはじめたらどうなの(世銀はリブラに懸念を表明)

 疑問その5.少なくとも特定の通貨価値とイコールのものが出てきたら、価格変動にわずらわされないで、実用性が増すんじゃないの。たとえば円連動のビットコインYとかドル連動のビットコインDとか。

(リブラはまさにこうした既存通貨との交換価値を保つ工夫をすると表明しています)

 疑問その6.世界各国がマネーロンダリングに悩みビットコインに規制をかけて流通禁止になったらどうなんの 。(これもG7の中心的話題の一つでした)

 引用終わり

  私の上記のブログによる指摘は17年9月でしたが、その後ビットコインは17年末まで上昇を続け、18年に入って大暴落しました。そして暴落が始まった18年2月4日に、再度仮想通貨に対して以下の追加の指摘もしています。

 

「各国の中央銀行なりIMFなどが、果たして仮想通貨の流通を野放しにするかです。通貨当局からすれば野放しははなはだ危険です。通貨の発行・コントロール権を失いかねないからです。通貨の発行・コントロール権は経済運営に対するコントロール権でもあるため、政府もそれを野放しにするとは思えないのです。これが仮想通貨システムに対する私の見解です。」

   このことがまさに最初にニュースを引用したG7の懸念であり、最近IMFのラガルド専務理事やFRBのパウェル議長も同様に重大な疑念を表明しています。いくらフェースブックが世界の20数億人の利用者に大きな利便性を提供できると表明しても、各国政府の懸念を払拭できないし、通貨の発行権を侵略できないでしょう。またフェースブックによる金融インフラへの浸食は、金融機関の死命を左右するため、各国中央銀行も放置できません。

 

  以上、最近話題のリブラについてでした。

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