日本の国会の混乱には目を覆いたくなります。佐川氏は国会で50数回の証言拒否をしていましたが、自分の管轄範囲で命を絶った人が出ていることに対して責任の自覚はないのでしょうか。同じく財務大臣も人を殺す財務省の罪は重いという自覚を持つべきでしょう。
さてアメリカですが、2月8日の記事で私は「ゴルディロックス相場の終焉」というタイトルで、どうやら株式相場は一山越えたかも、という指摘をしています。そして2か月を経過して、その通りの荒れた株式相場が続いています。記事の最後の部分を引用しますと、
『東京タワーは立っていないのでリーマンショックのような暴落はないと思われるが、ゴルディロックス(適温)相場は終わったと判断すべき』です。
この指摘に対してというわけではないのですが、多くの証券系のアナリストやエコノミストはおしなべてこう言っています。
「株価は下落したが、経済のファンダメンタルズは好調を維持しているので心配なし。いずれはまた企業収益の伸びに合わせて株式相場も上昇を始めるだろう」というものです。言い直せば「経済のゴルディロックス(適温)状態は継続する」ということです。これが本当にそうなのか、果たして経済ファンダメンタルズにも転換点は来るのか、検証しておきましょう。私は今年中には来そうだと思っています。その芽はアメリカだけではなく、重要な関係国にも出てきています。
1.中国国内市場の変調
中国のスマホ販売と自動車販売がスローダウンを始めました。ちょっと古いですが、1月10日の日経ニュースを引用します。
中国政府系のシンクタンク「中国情報通信研究院」が発表した2017年の中国市場におけるスマートフォン(スマホ)の出荷台数は、前年比11.6%減の4億6100万台となり、大幅に落ち込んだ。10年以降、急激なスピードで普及してきた中国で、前年比2ケタの減少となるのは初。市場が飽和したほか、新製品の差別化が難しくなり、世界の約3割を占める最大市場の中国も苦境が鮮明となってきた。直近の17年12月の落ち込みは深刻さを増しており、出荷台数は4036万台と前年同月比で33.2%減少した。
引用終わり
17年12月の33%減は、尋常ではありません。こうしたことの影響をもろに受けているのは韓国のサムスンです。最近のニュースではスマホ用ディスプレーの製造ライン稼働率が6割程度に落ち込んでいるというのです。
ではスマホ市場と同じように経済全体に影響の大きな重要な耐久消費財である自動車はどうか。これがまたスマホと同じように中国市場でスローダウンを始めています。
2016年の年間を通して販売台数は11.6%増でしたが、17年はわずか3%増に低下。18年に入っても1-2月の販売台数は前年比でわずか1.7%増です。これまで2ケタ増が当たり前だった中国市場の伸びがどうやら止まったとみてよさそうです。世界で一番大きな市場の伸びが止まるという現実は、日本・欧州・アメリカの自動車メーカーに大きなインパクトを与えます。
世界の国別販売台数は、17年年間で
中国 2,912万台
アメリカ 1,758万台
日本 524万台
インド 401万台
ドイツ 381万台
中国市場はアメリカ市場より65%も大きな市場であること、みなさんも覚えておいてください。ちなみに日本市場に比べると5.5倍です。中国がクシャミをすると、世界が風邪を引くというところにまできているのです。
中国のスローダウンはやがてアメリカや日本などにも影響を与えます。
2.貿易戦争
そのクシャミの始まった中国にさらに冷や水をかけているのがトランプで、裸の自分が実は中国のフンドシで相撲を取っている自覚は全くありません。本日、トランプの保護政策に対し、中国が対抗措置を発表し、本格的戦闘開始状態になりました。
BBCのニュースを引用しますと、
『トランプは3月22日、中国からの輸入品600億ドル(約6兆4000億円)相当への追加関税や中国企業による米国内の投資を制限する制裁を発表した。中国が長年にわたって米国の知的財産権を侵害してきたことへの報復措置だとしている。』
それに対抗する中国は以下の措置を決めると同時に、相互に報復の応酬が始まりそうな気配です。時事通信を引用します。
『中国商務省は3月23日、米国の発動に合わせて報復内容を公表。果物など120品目に対する15%の関税上乗せが第1弾、豚肉など8品目への25%の関税上乗せが第2弾になると説明していたが、一斉実施に踏み切った。対象品目の2017年の輸入額は30億ドル(約3200億円)に上る。中略
米国は輸入制限とは別に、中国による知的財産権侵害を理由にした貿易制裁も決め、発動に向け手続きを進めている。中国は大豆、航空機、自動車などに報復する構えを見せ、緊張が高まっている。
一方で、米中は水面下で交渉を行っていると伝えられる。中国が米製品の輸入拡大や市場開放といった譲歩案を示し、高い要求を突き付ける米政権との間で落としどころを探っているもようだ。』
中国の知財に対する特許の侵害などは目に余るものがあると私も感じますが、いよいよその本丸をトランプがつぶしにかかっています。それが発動されると中国による対抗措置は小さなものではなく、かなり大きなものになる可能性があり、予断を許しません。
すでにスローダウンの兆しがところどころで見え始めた中での貿易戦争は、世界経済の発展に大きな障害になり、ゴルディロックス状態を謳歌している世界経済を揺るがす引き金にもなるので要注意です。