米上院のアラバマ州補欠選挙で共和党候補が負けました。
このことは「共和党が1議席を失い共和党;民主党が51:49議席と接近した」という単なる議席数の問題ではありません。大事なことは、アラバマ州という保守の牙城でトランプが必死に応援した候補が敗れたという事実です。去年の大統領選挙ではトランプ支持がクリントン支持を20ポイントも上回り、圧倒的な強さを見せつけたのがアラバマ州でした。この敗戦は来年の中間選挙の行方を占う上ではとても重要で、共和党内部でも深刻に受けとめられています。
共和党候補の敗因の一つは、今世界の女性のはやりになっている「ME TOO!」、つまり私もあの政治家にセクハラを受けたという告白が噴出したことです。それも何人もの幼い女の子へのセクハラですから、マスコミを含めて彼は犯罪者だとレッテルを貼りました。選挙の寸前には「私たちもトランプにセクハラを受けた」という3人の女性達のインタビューが流され、争点がアラバマだけでなくトランプ支持か否かに変質した上で負けたのです。
これによりトランプ自身の支持率はどうなったでしょうか。久々にじわりと下がっています。今回のシリーズの初めの頃に取りあげた年初からの支持率の平均値の推移と比較します。
1月27日 8月14日 9月24日 11月14日 12月13日
不支持 44.3 57.4 52.4 56.8 58.1
支持 44.2 37.4 41.7 38.1 37.0
直近のロイターの調査では支持率が33%とかなりの低さですが、移動平均値でも支持37.0%対不支持58.1%と、支持率・不支持率とも過去最低値・最高値を更新しました。
今後見込まれる税制改革以外さしたる実績もなく、ウソばかりついている大統領ですが、多い日は10件くらいツイッターを発信することによって支持者のマインドコントロールを必死に行っています。それもそろそろ限界がきているかもしれません。
支持率の低下は我々にとり非常に危険です。
トランプは、
「自分の成功は予測不能なことを実行して相手に勝つからだ」と言っています。
政治家の支持率回復の決め手はいつも戦争です。ブッシュ・ジュニアしかり、プーチンしかり、ドゥテルテ、エルドアンしかり。予測不能トランプが狙うのは戦争による支持率の回復かもしれません。
ではNHKスペシャルの後半です。前半のポイントは2月のフロリダでの安倍・トランプ会談後の共同声明に、トランプが「軍事攻撃に踏み込む」という文言を入れようとしたことでした。その後も電話会談を含めてすべての安倍・トランプ会談の詳細な内容をNHKは取材し続け、9月3日の電話会談ではトランプが驚くべき発言をしたことを捉えていました。それは、8月29日の北のミサイル発射に関して、
「北のミサイルが日本上空を通過したのに、何故打ち落とさなかったのだ」というものです。
それに対し安倍首相は「自衛権の行使は日本の存立危機のときだけだ」と回答しています。大事なポイントは安倍首相の受け答えではなく、トランプなら打ち落とすという部分です。例えばグアム近くにミサイルが到達すると見込まれれば、アメリカは沖縄からの迎撃ミサイルで、北のミサイルを打ち落とすかもしれません。そうしたトランプのやり口は偶発戦争の引き金になる可能性が大です。
しかも彼は支持率の回復を狙って偶発戦争を起こし、北を刺激してきっかけを作ろうとするかもしれない予測不能人間なのです。すでに米中間で北朝鮮からの大量難民の対処を話し合っているというニュースも一昨日流れています。そのニュースを流すこと自体、世界に戦争準備を進めていることを示唆している可能性ありなのです。
では予測不能トランプに安倍首相はどう付き合っているのでしょうか。NHKスペシャルで安倍首相がインタビューに答え何度も何度も繰り返したのは、「トランプ大統領を100%信頼している。それなくして日本の安全は保てない」という言葉でした。トランプもそれに応えて「100%、シンゾウとともにある」と繰り返しています。本当に日本の平和をこのように危険な人物トランプに100%依存してよいのでしょうか。
トランプは支持者ウケを狙い、他国を捨てることなどいとも簡単に行う人間です。「アメリカ・ファースト」が至上命題なのですから。番組では彼が若いころから北朝鮮の脅威に対し、「世界のすべての悪の原因は北朝鮮にある」と言っていたことを実録ビデオで流していました。その信条のためなら偶発戦争を意図的に起こしかねないし、戦争が起これば日本の基地は最前線となり北の攻撃対象になります。なにしろ北は「日本など原爆で吹き飛ばし、地球上から消滅させる」と世界に宣言しているのですから。
もう一つ安倍首相に苦言を呈しておきます。彼は「トランプ大統領を100%信頼している。それなくして日本の安全は保てない」と何度も繰り返したとお伝えしました。対照的にエルサレムの問題に対し欧州の首脳は、トランプを表立って非難しました。彼らはアメリカと同じNATOのメンバーで、領土拡張を進めるロシアの脅威にさらされている中でも、トランプに100%下駄を預けることなどしません。すべてにおいて是々非々の立場をキープしています。それに比べるとトランプべったりで、エルサレム問題に非難もせず、なんとも情けないのが安倍首相なのです。
NHKスペシャルはこうしたことを私に伝えてくれました。