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債券の格付け、鋼鉄の男さんへの回答

2013年11月10日 | 2013年からの資産運用
  鋼鉄の男さんから債券投資の判断と格付けについて3つのご質問がありました。みなさんの参考になると思いますので、以下回答させていただきます。太字は引用文です。


>欧州危機の際、ギリシャ、イタリアの10年物国債の利回りが一時7%を超えて話題になりました。(7%を超えると返済が難しくなる、という扱いでした。)

現在、新興国で10年物国債の利回りが7%を超えるものが見受けられます。(例えば、インド、インドネシアなど)

1.新興国の財政状況は先進国に比べて健全であり、インフラ整備、産業振興などで資金需要が伸びるため、7%を超えても話題にならないのでしょうか。

 いいえ、そうではありません。信用力がないので高い金利を払わないと投資してもらえないためです。ギリシャ・イタリアと同じです。そして実はもっともっと危険です。何故ならイタリアあたりは低金利に戻りますが、インドは戻らないからです。

インドもインドネシアも単なるジャンク、もしくは一歩手前で、イタリアやギリシャが信用を失ってその域に達したのです(笑)。

新興国の債券はシロウトが手を出すしろものではありません。証券会社はジャンクを「ハイイールド」などと勝手に称して誘いますが、甘い言葉には騙されないようにしましょう。

最近証券会社は、「高利回り」と言うのはよくないと諌められたのですが、何とパンフレットで「好利回り」と称しています。もー笑うっきゃない!

2.米ドル建て新興国国債(例えば、米ドル建てインドネシア国債)について、林さんはどのように見ているでしょうか。世界銀行債のようなスーパーソブリン債と同様の考えで、格付けによって判断(AAAであれば超安全)ということでしょうか。

  まず、新興国の国債はAAAは絶対にもらえません。世界では十数カ国の先進国がAAAを保有していますが、新興国は入っていません。私はAAAなら大丈夫とも考えていません。仕組み債は信用できませんので。スーパーソブリンは本来の意味で高い安全性を有していると考えています。

  先ほども申し上げましたが、そもそも新興国の債券はシロウトの投資対象になりません、投機対象、ギャンブルです。


  債券の世界はみなさんが普通に考えている世界と、ちょっと異なります。格付けは成長性を評価せず、安全性のみを評価するからです。もっと言えば返済能力のみを見ています。

  例で申し上げますと、伸び盛りの企業、グーグルやアップルなどの世界的一流レベルの企業でもAAAはなかなかもらえません。2社も5年後10年後にはとんでもない競争相手が出てきて消えているかもしれないからです。もっともマイクロソフトはAAAを持っています。成長力はすでに低下していますが、事業がITの中でも安全性の高いインフラ系企業と考えられていて、保有キャッシュで投機の勝負はせずにいるからでしょう。もっとも私自身はMSのAAAには疑問を感じていますが。


3.バンクローン(銀行貸付債券)は、どのようにお考えでしょうか。
 利回りで比較すると、米国リート < バンクローン < ハイイールド債 です。 私の考えは、格付けの低い企業の債券なので利回りが高いですが、担保がついているので、米国リートに準じる投資先と考えて良いと思っています。


 バンクローンとはローンを束ねた仕組み債(CDOなど)と理解します。その中身は端的に言えば不動産担保の付いたサブプライムローンと同じです。多くのローンに分散投資しているし、担保があれば安全性は高いだろうという統計学的発想にたっていますが、それはすでにサブプライムで破綻しています。たとえAAAでも私は投資をお薦めしません。

 リートは利回り商品の一面はありますが株式投資です。元本も配当も大きく変動しますし、償還もありません。ある時点のリートの配当と債券の金利を比較するべきではないとおもいます。よいリートの価格は成長しますし、ダメなリートは低下します。下がったら償還まで持ちきるという戦略も取れません。

 リスクを取りたくなければ米国債、リスクを取って高い配当を求めるならリートもありです。ジャンクボンドよりずっとましなトラック・レコードを持っています。

みなさんへ、

「格付けは成長性を評価せず、安全性のみを評価する」
ということ、是非覚えておいてください。
コメント (12)
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