先々週私はみなさんに私の「世界経済の見方」を紹介しました。その中で、「ギリシャはユーロから離脱なんかできっこない」と申し上げました。ギリシャ選挙の結果を見ると、どうやらその見方が当たりつつあるようで、国民自体が実は離脱など望んでいないことが判明しました。「緊縮はやだ」、なんてことはしょせん子供が駄々をこねているのと同じで、かつてのドラクマ時代の悪夢が目の前に迫れば肩をすくめて退散する。でもきっと新政権が発足して緊縮策に走れば、のど元過ぎてまた駄々をこねはじめるでしょう。これは今後スペインやイタリアでも同じで、ヨーロッパは出口が見えない状況が続くと思われます。しかし、恐慌には決して至りませんのでご安心を。
さて、本題に戻ります。
前回は、「日本はデフレの克服などできない」、という理由を説明しました。デフレを克服できない日本がどこに向かっていくか、私の見通しをお伝えします。
今までも申し上げているとおり、デフレ克服の大合唱をうけて日銀が日本国債を買いまくる。政府はいい気になって国債の大量発行を続け、遂には資金不足の壁にぶち当たる。消費税の値上げなど焼け石に水であることに気付いたあたりでいよいよ国債バブルがはじけ、世界を震撼させほどの大クラッシュに至る。これが私の見方です。そのクラッシュのマグニチュードはサブプライムの7倍、ギリシャの20倍であることをお忘れなく。(債務の総額比較です)
10月から始めたこのシリーズを最後にもう一度まとめてみることにします。3月22日の記事での「まとめ」に解説を若干加えます。
1.円高もデフレも実は日本にとって居心地がいい状況だ
何故なら円高・デフレが国債バブルの崩壊をくいとめているから。
2.円高を克服したら、そこには日本国債の暴落が待っている
何故なら円高の克服、つまり円安への方向転換は外貨投資を誘発し、銀行預金からの資金流失が国債売却につながるから。
3.デフレの克服は金利の上昇となり、国債価格の暴落へとつながる
国債価格の暴落は銀行の自己資本の毀損、信用力の喪失を招き、預金流失となる。預金流失への対処は国債の売却と日銀による資金注入しかなく、さらなる国債価格の下落とインフレにつながる。
なんとも情けない結論で内心忸怩たる思いがあるのですが、それがもっともありうるシナリオだと考えて準備をしないと、日本の万が一には備えられません。
本屋さんに行けばバラ色の未来を描いている本はたくさんあります。そうした本が圧倒的に支持されて売れる本なのでしょう。しかし現実はそうはきませんでしたし、今後もそうはならないでしょう。世界的にはカネ余りの状態にあり、日本もカネ余りは続いていますが、日本の株、不動産といった資産価格は世界の投資家の投資対象からは徐々にはずれていくでしょう。
ということは、「今後投資で一番大事なことは、攻めの投資でなく、守りの投資だ」ということです。そして財政破綻に対して、
4.個人の対処策は外貨への投資、それも超安全な外債のみを対象とするべき
日本国債の暴落は日本をはじめ世界の株価、新興国債券などの価格暴落を招き、唯一買われるのは米国債と一部のAAA格付けの国債のみ
5.安全な外貨は、米ドルと豪ドルくらいしかない
米国の成長力は以前先進国では抜群に高く、それにちかい成長を続けている。ドルは現状でも日本円以外の通貨に対して価値を大きく上昇させている。豪ドルは変動幅が大きいリスクはあるものの、金利水準が健全に高い。
6.安全な発行体とは米国、豪州政府とスーパーソブリン(国際機関)くらしかない
以上が結論でした。
これに加え、投資を勉強されているみなさんには「バブルの臭いを嗅ぎ分けろ」というお話をさし上げました。今回のシリーズでみなさんに申し上げたかったことはおおよそカバーできたと思っています。
次回からは債券投資のABCをメインテーマに、その時々のトピックスについて解説を交えながらブログを継続していきたいと思っています。
今後とも、よろしくお願いします。
「円高・デフレに嵌まり込む日本」のシリーズ、おしまい