河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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0219- インバル フランクフルト 復活 1989-21

2007-03-07 21:47:00 | コンサート・オペラ


1989年インバルは2度来日した。
1度目は、インバル ベルリン 夜の歌
2度目は、長い常任指揮活動が締めくくりに近づきつつあるフランクフルト放送交響楽団との来日である。
インバルとフランクフルトはこの年、11月8日から19日まで9回公演を行った。
持ってきたプログラムはマーラーの2番、4番、6番である。
4番の時はハイドンのロンドンが前半で演奏されているが、基本的にマーラー・プログラムである。
9回公演のうち最後の2回を聴いた。

1989年11月18日(土)  7:00pm サントリー・ホール

マーラー 交響曲第2番 復活

ソプラノ、アーリン・オージェ
メゾ、ヤルト・ヴァン・ネス
東京オラトリオ研究会

エリアフ・インバル 指揮 フランクフルト放送交響楽団

サントリー・ホールというのは音響が巨大な曲では、音が押しつぶされてしまいピュアな鳴りがしない。各楽器の音像の焦点が一つになるのが、このホールの中ではなくもう少し先の方にあるような気がする。だからホールのなかにおいては2階の奥が一番音が良いのではないだろうか。音像の焦点集結地点に一番近い。

フランクフルトの音というのは、無理押しごり押しの音ではなく、清らかで澄んでいて濁りなし。ピッチが正確であり、ブラスの強音でも下がらない。
フォルテシモは強奏しなくてもピッチが合えば響き渡るというのを彼らの本拠地での常日頃の演奏で身につけている。
アルテ・オーパーのサウンドの良さは録音でも確かめることができる。
1985年にアルテ・オーパーで、2本のマイクで収録されたマーラーの4番がDENONから発売されたとき、素晴らしい臨場感と揺れる空気までとらえたホール感に驚いたものだ。
初回国内発売はPCMデジタル録音で\3,300というものであったが、当時それに見合う価格であると思ったものだ。
ヘッセン放送との共同製作であり、ヘッセン放送と聞いただけで1970年代にNHK-FMから流された同指揮者とオケの組み合わせによる数々の良好サウンドの放送を思い出す。

フランクフルトのマーラー・サウンドはホールを変えた。と言えるような感じで、ホールにへばりついてきたものが洗い流されるような清らかな響きである。
また、オーケストラ自身、腰の重さというものがあまりなく、どちらかというと横への拡がりを感じさせてくれるものであった。ハーモニーが積み重なるのではなく、均質な音の強さを意識したバランス感覚で、どちらかというと現代の音楽の表現に近いようなものを感じとることができる。
復活の冒頭、地を揺らすようなコントラバスの響きも肩すかし風であり最初からいきなり力まかせでもない。楽器群単位の均質な響きバランスと、楽器間、アンサンブル間、の響きもバランスされており、明晰な音のあやを聴くことができ楽しむことができる。インバルが目指してきたことが実現していると思われる。
インバル自身の1970年代からの方向感の一貫性を感じとることができる。選曲はより大衆的になったが道は同じ。オーケストラやホール、聴衆とともに育ってきたインバルは自身がしたいことを、まわりから支持されるかたちで自然に実現してきた。
マーラーで、ある部分終結したような感があるが、フランクフルト放送交響楽団との名演の数々のあとも彼の軌跡は続く。個人的にはいわゆる現代音楽をもっと振ってほしいが、70歳こえて、もう無理か。

復活でインバルが切れ込みの鋭さを発揮するのは第5楽章。複数のリズム、テンポが同時進行するような複雑系での指示のクリアさは快感である。演奏している方も指示されているというよりも、確かめ合っている雰囲気で良好な音楽進行が続く。
フィナーレが一本の線のように鳴り渡る時、マーラーが自分の時代が来る、と言ったように、インバルにも来たのは紛れもない事実であったのだ。
おわり