音楽雑誌「レコード芸術」には、伝統的な「新譜月評」とは別に最近伸張著しい「海外盤試聴記」というのがある。
レコ芸3月号を例にとると、
「新譜月評」が70ページぐらい。
「海外盤試聴記」が30ページぐらい。
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新譜月評は横に置いて。
海外盤試聴記は、国内未発売の海外盤を紹介する記事であり、先取り情報としては非常に有益である。
また、分野が多岐にわたっているため全く知らなかったような音楽も吸収できる。
それぞれ紹介ディスク試聴記の前半がだいたい情報的なことの紹介。
後半が感想、といった感じである。
たくさんの専門家たちがディスクを紹介している。
前半は非常に有益である。
それぞれの後半の感想はどうだろう。
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「注目されるのはアーティキュレーションへの配慮、デュナミークにも濃やかに対応、弦楽のサウンドは通常の伝統的なオーケストラに比べてタイト、」
「アーティキュレーションをよく喋らせ、デュナミークにも細心の注意が張られ、」
「パラノイア的なまでに細かく実施されるアーティキュレーション」
「フィナーレもスリリングだが押しつけがましくない」
「技巧的な気ぶくれを排し、原曲の骨格を効率よく転じて声部整理を施した簡潔さ」
「フィナーレの劇的なアタックがいつになく激しい」
「シリアスであるけれど、思索の罠に陥ることなく、繊細な感性と詩情を、ナイーヴさや耽溺とは違った観点で自ずと豊麗に育んでいる」
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なんだ、これは。
言いたいことはわかるが音楽と直結していない。
それに、
なんだ、このヴォキャは。
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「新譜月評」に格上げはできん。
もう少しましな文章を書けや。
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とにかくいろんな連中が書いている。
なかには完全にまともな人もいるが、朱に交われば赤黒くなる。
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それぞれの紹介ディスクごとに、紹介者の名前と肩書が書いてあるが、多彩だ。
・音楽評論
・音楽学
・音楽学、音楽評論
・音楽ライター
・音楽批評
・インド古典文学
・コンサートホール学芸員
・フルート奏者
・文献学
・フランス文学
・ドイツ文学
・オペラ研究
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みんな好きなことを好きに書いてるんだからいいじゃないか。と言われれば、言われなくても、どうでもいい。
わかりました。与えられたものを食べて生きてゆきます。
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これらの文章よりまともな文を書けると思う人間は、内容の良し悪し、深い浅い、にかかわらず、そう感じた時点で読むのを放棄。
読んでもらえないということは文化の発展がのぞめないということ。
ひどすぎるぜ。
レコ芸のチェッカーマンたのむぜ。
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