くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ケイン愛してるよ」孫理奈

2009-03-09 05:43:38 | エッセイ・ルポルタージュ
ほんとうは、読みたくなかったのです……。世界で三百ほどしか例のない病気にかかり、九つで亡くなった子供。その病気は様々な疾病を併発し、中に悪性リンパ腫も含まれる。
わたしの友人みえっちさんは悪性リンパ腫で亡くなっています。彼女が苦しんでいる様子を知っているので、と思ったのがひとつ。
そしてうちの息子も二歳くらいのとき突発性の血液の病気で入院したことがあるからです。あ、今は元気ですよ。
親になると、小さい子供が苦しむ記録を読むのは辛いと思ったのです。「たったひとつのたからもの」(加藤弘美 文藝春秋)で涙がぶわっと出たように。
しかも、ごめん。子供たちの名前がレオンにケイシにケインだもの、この子たちは外人? と思ってしまいましたよ。
孫理奈「ケイン愛してるよ ロスモンド・トムソン症候群と闘い続けた我が子、9年間の記録」(幻冬舎)です。手に取って、パラッと見て、棚に戻そうと思いました。ところが、そのとき「夫のジョンはビーチバレーの選手として日本に帰化し、オリンピック出場を目指していました。」という文が目に飛び込んできたのです。帯を見て、「ひーっ、孫政郁じゃん!」と気づきました……。
十五年くらい前まで大学バレーにはまっていて、孫くんは わたしが熱烈に応援していたチームのメンバーだったのです。
すみません、そういうミーハーな理由で。でも、理奈さんの前むきな看護は、読んでいてすごく力づけられる感じがしました。
闘病記録なのにそんな気がするって変ですか。なんというか……ケインくんの苦しむ様子にとても辛い思いをしているんだけど、ただそれを嘆くだけじゃなくて、この病気のことを理解してもらうにはどうすればいいのか、ということを絶えず考えているんですよ。
こんなことがありました。すれちがった子供がケインくんを見て、「この子、汚いよ~」と言ったのです。理奈さんが話をする間もなく、その子の母親が腕を取って連れて行ったのだとか。
母親が自分の子供にハンディキャップのある人もいること、差別をしてはいけないことを諭してくれるのではないかと考えた一瞬のためらいが、自分を受け身にしたのではないかと理奈さんはショックを感じます。
この病気のことをもっとたくさんの人に知ってもらわなくては。なにしろ三百例しかないわけですからね。
ホームページで紹介したりテレビの取材をうけたりするうちに、いろんな人がケインくんのことを応援してくれます。
小学校での活動、兄や友達との絆、家族旅行、そんな普通の暮らしの中に「治療」という過酷な生活が加わります。
読みすすめるうちに、孫家はわたしの生活とは対極的な暮らしをしているなーと考えはしましたが、ケインくんのがんばりはストレートに胸を打つと思います。テレビを見た人にとっては、さらに深く感じられるでしょうね。
九つになって、悪性リンパ腫の再発が告げられます。
最終的にお茶も我慢して氷でのどの渇きを緩和する姿は、友人のときを思い出してしまいました。
子供を失って半年です。理奈さんが最後に何度も「記録を残したい」と語りますが、この本もその記録のひとつなのかもしれません。「ずっと五人家族」、その思いはきっとこれからも続いていくのだと思います。

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1 コメント

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Unknown (ミリオン)
2024-06-17 22:09:55
こんばんは。
病院は大変ですね。早く良くなるといいですね。今日の朝は、「虎に翼」の第51回を見ました。
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