くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「決断。」大胡田誠・大石亜矢子

2018-11-25 13:44:36 | エッセイ・ルポルタージュ
 先日、同僚と断捨離の話になりました。
 わたしは片付けが大の苦手で、結構あちこちちらかしたままなのです。本はたまる一方で。
 彼女が言うには、「本は捨てられないと思っていたけど、ある人から『なぜ捨てられないの? もうその本はあなたの中にあるのに』と言われて、なるほどと思った」だそうです。
 実用書ならそうかもしれないけど、読書ってそういうものじゃないよね、とわたしは思うのです。(その場では言いませんが)
 そんな思いがある中で、読んだのがこれ。「決断。 全盲のふたりが、家族をつくるとき」(中央公論新社)。
 大胡田誠さんは、全盲の弁護士。奥さんの大石亜矢子さんは全盲の歌手です。
 お二人は、幼なじみといってもいいような関わりから、再会してお互いを愛するようになり結婚。二人のお子さんがいます。
 生い立ちから青春時代、結婚のいきさつ、仕事や生活について描かれています。
 亜矢子さんと誠さんのパートが交互にあるので、そのときどう考えたのかとか状況とかがわかって、読みやすい。
 誠さんが司法試験に受かり、就職も決まった時期に、亜矢子さんは彼から、
「僕、亜矢子さんとは結婚できないよ」と言われます。様々な不安があり、決断をためらったための言葉でした。
 しかし、誠さんのお母さんが乳癌と宣告されたあとに自殺。大切な存在を失ったときに、彼は亜矢子さんがかけがえのない存在だと気づきます。

「亜矢子さんとの結婚を一番望んでいたのは、実は自殺した母でした。」
 この一文が目に飛び込んできて、強く揺さぶられてしまいます。
 時間をおいて振り返ると、他の部分と大きく異なることがあるわけでもないのですが……。
 ただ、読書にはそのときに大きく心が揺れる一瞬があるのだとわたしは思うのです。

 図書館から借りた本なので、手放すとかそういうことではないのですが、筆者の語り口とか任意の一行とか、再読したい理由はそれぞれです。
 読まなかった本よりも、読んだ本の方がまた手に取りたいと思うことが多いですし。
 わたしはなくしてしまった本を、くよくよと考えてしまう質なので、やっぱりできるだけ捨てたくはないですね。(学校図書館に寄贈することは多いですが)

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