くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「同級生」その2

2012-02-09 02:40:07 | ミステリ・サスペンス・ホラー
でも、西原に嫌な感じがする最大の理由は、おそらく御崎先生が自分と共通項をもつ人物だからでしょう。
四十代、古典を教えているんだから当然国語の教師。あまり化粧は好きじゃないし、本だけやたらと所持している。
死ぬ直前の御崎が、「方丈記」のテスト問題を作っていたと伝えられる場面。「家で仕事してる教師って結構多いらしいけど(略)殺される前までそんなことをしてたのかと思うと、悲しいものがあるな」
「それで俺は思ったんだ。なんか違うんじゃねえかってな。熱心なのはいいし、自己犠牲も結構だけどさ、どっかまともじゃないものを感じるんだ」
「うまくいえないけど(略)そういう人に教育されるのって、なんか嫌だよね。人間性が歪んじゃうんじゃないかと思う」
順に、川合、西原、薫の台詞です。
えーと……。
テスト問題を死の直前まで作っているのって、「どっかまともじゃない」の? 実際には擬装工作だったわけだけど、殺されるかどうか普通はわからないよね?
それとも、「そういう人」っていうのは、鏡台もなければ化粧品も最低限、本と自作のファイルをたくさん持っている人のことを指すのでしょうか。
西原自身だって、水質汚染についての調査をファイルにまとめていたって言ってるよね?
東野さん、よほど過去に嫌なことがあったんでしょうか。たしか、教員対象の講演会だったか新聞だったかに原稿要請されたとき、謝礼がなかったと怒っている文章を見たことはありますよ。プロに無料で仕事をさせる神経がわからないとか言っていたような……。(記憶に混雑があったら、ごめんなさい)
でも、東野さんのお姉さんも教員だよね?
まあ、別にそれはいいですが。
御崎先生の行動は、たしかに変です。陸上部の部室から、テーピングを取ってきて(部員が保健室から勝手に持ち出したものなんだって。それくらい部費で買いなよ)、それを縦に二つ折りにする。そして、そこに連綿と灰藤先生への恨み言を書き連ねる。池に数日入ったままでも充分読み取れるんだから、油性マジック使用ですね。テープの太さを考えると、相当細かい字でないと、すぐ改行になってしまって読みにくいよ。まさか裏には書かないでしょう? あ、でも字は上手そう。
残ったテーピングテープは、箱ごと部室に戻しておきます。部屋から見つかるとまずいからね。
これが、自殺する日の朝、西原が打撃練習でテーピングをしているのを目撃してからの計画なんですよね。かなりの実行力! さらに手先が細かくないと、途中で嫌になりそうな作業です。
で、部室から今度はダンベルを持ってきます。何回にも分けて運ぶんでしょうねー。死亡推定時刻は8時過ぎですから、部室から三年三組まで真っ暗でも我慢して運ぶんです。それとも、明るいうちにどこかに隠しておいたの? いやいや、それはありません。だって、ポケットに部室の鍵が入れてあったんだもんね。開けて出してくるとしか思えないじゃないですか。
この鍵が、また謎です。部室の鍵って、集中管理だと思うんですよ。だから、御崎先生が持ち出したなら、翌日以降の陸上部室には鍵がかかったまま。(施錠しなかった可能性もあるけど、やっぱり閉めたはずの部室が開いていて、鍵がなくなっていたら騒ぎになりますよね)
顧問だからスペアキーを持っている?
その場合はタグがついていないと思うけど……。やっぱり警察が、どこの鍵なのかいちいち調べたんですかね。
西原は自分がテーピングをしていることを、警察に疑われていると感じていますが、実際張り合わせたテープを開いて自分の手に巻くのは無理でしょう。で、保健室の在庫はなくなったはずですが、その後のテープは入手しないのか。普通使い捨てにするものだと思うのですが。