くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「新しい道徳」藤原和博

2012-02-17 05:27:22 | 社会科学・教育
公立高校の出願日。待ち時間にこの本を読んでいました。藤原和博「新しい道徳」。
ちくまプリマー新書はいつもおもしろい。全部読んでるわけではないけど。この本も、読みはじめたらするすると納得しながら読んでしまいました。
道徳って、いろんなアプローチがあると思うんです。副読本を使うのが一般的だけど、グループワークをしたりエンカウンターをしたり。授業検討会をしても、A先生は書くことを重視(自分と向き合うため)し、B先生は書けない子もいるんだからとにかく話し合いが大事という。以前、アサーショントレーニングの授業をしたのに、「葛藤させるように」と講評があったのには驚きました。なんでもディベートに持ち込もうとする方もいるんですね。
藤原先生といえば、「よのなか」。わたしも日本語についての単行本を持っています。
民間人校長として赴任した中学校で、「よのなか」理論をどう推し進めたかが具体的に書かれますが、突き詰めると、学校教育には「情報編集力」が必要とされるということが伝わってきます。
「情報編集力」とは何か。対比されるのは「情報処理力」(正解を競う。頭の回転の速さが勝負)です。社会との関係性の中での対応力、正解ではなく「納得解」が求められ、蓄積してきた知識、経験、技術のすべてを動員して自分にとって納得できる答を探していく。
だから、また詰め込み教育にシフトチェンジするのは間違いだというんですね。学力とか教育とかの話題になるとフィンランドのことが紹介されることが多いですが、こちらは総合的な学習によって向上が見られた例なんですって。
一年生から計画的にこの手法を学習し、自主的な勉強の態度を醸成する。「正解が一つではないテーマ」を考えていく訳ですね。
「ハンバーガー店をどこに出店すれば儲かる店になるか」
「自転車放置問題はどうすれば解決するか」
「誰にも迷惑をかけない自殺だったら許されるのか」
紹介されているエンカウンターも、「いままでの人生とこれからのイメージを人生曲線に描き、苦しかったことや嬉しかったことを含め、重要なエポックを振り返る」
「『風が吹けば桶屋が儲かる』式の推論エンジンを鍛えるために、現代版の『風が吹けば桶屋が儲かる』をいくつも書き出してみる」なんて、ユニークでやってみたいような作業ではないですか。
失敗談を語るのもおもしろそう。作文のマナーを練習し、「失敗」を活き活きと語る素材として振り返るのだそうです。
卒業試験もあって、「ハンバーガーの価格は、これから上がると思うか? 下がると思うか? その理由とともに記せ」(30~100字、約三分)というような自分の意見を書く問題を十二問出題するそうです。
そのほかにも、いじめの問題やジェンダー、新しいものと古いものなどの考察があり、目から鱗です。
「国語」のテストって、単なる知識の確認になってしまってはいけないなと、このごろよく考えるのです。ある程度は致し方ないけれど、クイズと変わらない出題が多いのは嫌だな。
これも「情報編集力」を考える一つの手がかりにしてみたいと思います。「思考停止状態」は、やっぱり解除しなきゃね!