くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「同級生」東野圭吾 その1

2012-02-08 05:45:50 | ミステリ・サスペンス・ホラー
東野さんて、相当嫌いだよね、教員が。学園ミステリのほとんどで、殺されてたり犯人だったり。あとがきを見ても「なんでそこまで?」と思うんですが。
「同級生」。光文社版のの単行本で読みました。
野球部の部長西原荘一は、五月のある朝、マネージャーの由希子が事故死したことを知ります。彼女は妊娠しており、そのため出血が止まらずに亡くなったことが噂されます。
西原は由希子と一度だけ関係をもったことがあり、そのことに衝撃を受ける。
やがて、彼女がトラックの前に飛び出したのは、生徒指導部の御崎という教師に追い掛けられたからだと判明。西原は授業中にそのことを糾弾し、由希子のクラスメイトたちは授業をボイコット。
さらにその御崎が、絞殺死体で発見され、西原は「容疑者」に……。
いやー、月曜の夜だというのに、12時近くまで読んじゃいましたよ。続きが気になって。主人公「俺」(西原)がすごい嫌なのですが、最後まで読まずにはいられません。
由希子のことをこれっぽっちも好きではないんですよね。罪悪感とか、緋ろ子(字が出ません。人名漢字にあるの? 面倒なので以下「ヒロ子」)に見せつけたいとか気持ちが入り交じって。
ちょうどヒロ子の父親と対峙して、妹がその会社の薬害で心臓に欠陥があることを訴えたのに真剣に取り合ってもらえず、交際もやめて自棄になっていた時期だったというのです。ヒロ子自身、西原がそのことに怨みを抱いているのを知っていて近づいたことも追い撃ちとなっている。彼女が持っているものも、育てられた過程で使われるのも、全て妹のような弱者を踏み台にして作った金だと彼は思っているわけです。
でも、今回の事件で、ヒロ子が身を賭して西原の弱みになるような事情を揉み消そうとしたことが、彼の心を打ったのでしょう。ラストシーンでは、公式大会での労いに走り寄る姿が描かれます。
結局ラブストーリーだったんだ?
まあ、それはいいですよ。タイトルも絡めて、このシーンに感動した人も多いでしょう。でも、わたしにはなんだかもやもやしたものが残ります。
わたしが同級生だったら、死んだ女の子のお腹にいた子の父親が自分だと授業中に宣言するような人物はちょっと敬遠します。さらに、そんな真似をしながら、夏の大会では別の女の子と付き合っているんでしょ?
本気ではなかったといわれる由希子が、かわいそう。もっと気の毒なのは、彼女のお父さんだよね……。自分の怒りをなだめて、名乗り出るには勇気がいったはずだと西原のことを理解しようとしてくれたのに。
傍から見ると、節操のない男に感じられるのですが、こういう人、共感できるでしょうか。真相を知った川合くんと薫が、「許す」のも納得いかない。好きだった女の子を妊娠させて、自分にはいかにも本気だったような嘘をつくんだよ。彼女が亡くなったきっかけも彼にあるように思いますが。
いやいやいや、ロッカーにボールをぶつけたのは、彼の怒りの表現で、「殴る」云々はともかく、夏の大会以降は疎遠になるかもしれないよね。表面切って訣別宣言するのは、やっぱり交遊関係に支障をきたすし。(こういうことを考えるわたしは腹黒いでしょうか)