くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ここに死体を捨てないでください!」東川篤哉

2012-02-04 06:06:24 | ミステリ・サスペンス・ホラー
聞いてください。わたくし、金曜日の朝普段通り通勤していたんです。
大雪は当地でも他人事ではなく、圧迫された雪で路面がつるつる滑り、非常に怖い。山坂の下り(降り口は十字路で、一時停止あり)にさしかかったところ、なんと前の車が、バックで坂を下りていくではないですか。わたしと同じ側の道路を、運転席をこちらに向けてするーっと下りていくんです。な、何故?
わたしはブレーキを何度も踏んで、車間距離が充分とれるようにしましたが、頭の中では車が雪道を滑り落ちるとか、ハンドル取られて激突するとか、そんな嫌な想像でいっぱい。怖い。
普段の何倍もの時間をかけて、手に汗を握りながら下り切って、問題の車が十字路でターンするのを見届けたら、おじさんは方向転換して違う道に去っていきました。わたしは雪にタイヤを取られて、ものすごくエンジンをふかしたあげく脱出。その後も道は大渋滞で、学校に着いたのは、始業5分前です。ふーっ。
あの車、怖くなかったんでしょうか。わたしは全く腑に落ちない気持ちでいっぱい。この謎は、迷探偵(?)の鵜飼杜夫に解いてもらわなければ!
ってことで、東川篤哉「ここに死体を捨てないでください!」(光文社)。いや、現実のこととは思えないフィクション(えっ?)とくれば、烏賊川市シリーズかなって。(といいつつ、読むのはこれが初です。買い置きと、借りた本が一冊ずつあります)
駅前のアパートで一人暮らしをする有坂春佳のところにやってきた見知らぬ女。驚いて果物ナイフを振り回すうちに女は倒れ、おびただしい血が……!
逆上した春佳は死体を部屋に放置したまま、何故か仙台行きの新幹線に飛び乗り、姉の有坂香織に電話をします。「死んじゃった……」
香織は事情を聞き出し、落ち着いて仙台でホテルに泊まるように話します。夕ご飯には牛タン、そして、クリネクススタジアム(香織はいまだ「フルキャストスタジアム」と言っていますが)で楽天の試合を見、ノムさんとマーくんを応援するように言うのです。実際に春佳が見た試合の先発は岩隈だったようですが。
うーん、宮城に住んで四十年余り。実は牛タン定食を食べたことは一度しかないわたしです。ま、いいかそんなことは。
香織は、この間になんとか死体を始末しようと考案。廃品回収トラックの作業台にあったコントラバスケースに目をつけます。
運転席にいた馬場鉄男を巻き込んで、どこかに死体を捨てにいく算段をしようとしますが、そう簡単にいくわけはなく。
また、山田慶子と名乗る女性が、依頼人として事務所を訪ねてくる予定だったのに全く音沙汰のないことに業を煮やした鵜飼は、ビルのオーナー朱美、助手の戸村流平と、事件が起こるかもしれないペンションに向かいます。
一大リゾートの開発予定地として目をつけられているらしいこの場所、所有権を持つ男性が滝から滑落して死亡したことから、さらに大事件に……。
いつの間にかぐっと仲が進展している香織と鉄男がおもしろい。…の使い方やら、視覚的な「」やら、東川さんのコミカルな表現についつい笑ってしまいますね。
べつにサッカーファンでもないんですが、男性陣がこそこそと一室に集まってバーレーンとの試合を見る(リゾート開発社の社員だけ内緒にされています)場面が可笑しかった。(でも、なんとこれも伏線なんですよ。すごいな)
作中での季節は夏。かなりギャップはありましたが、楽しく読みました。
さて、鵜飼探偵に代わって、夫が「坂道を後ろ向きに下る車」の謎を解いてくれました。
「坂の途中で上れなくなったから、方向転回できるような場所までバックしたんでしょ」
そ、そうかー。
でも、わたしならそんな恐ろしい技は使いたくありませんね……。