くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「中国悪女伝」藤田あつ子

2010-03-11 05:29:03 | コミック
学生時代、部室にはみんながまんがを持ち込んでいて、そこで知った作品がたくさんあります。そのうちのひとつが、ヒロチンスキーさんが読んでいた「皇如星」シリーズ。その後も藤田あつ子さんの作品をちょこちょこ立ち読みしましたが、評判の不細工な妻が、夜の間だけ美女になる、という短編が忘れられません。
で、「中国悪女伝」(ぶんか社)を書店で発見し、たまらなく読みたくなって買ってきました。
裏カバーによると、「鉢かづき」や「徒然草」を題材にした短編もあるらしい。どんな感じだろうと思ったのですが、おおぉ、これは好みです。何故この話からこんなふうに? と思いながら、藤田さんの「本歌取り」に感心しきりです。
とくに好きなのは、「玉に疵」と「疫病神」。イソップ物語でも日本の古典でも、藤田さんの手にかかれば、中国ものに早変わりです。
「悪女」がテーマであるせいか、自分の言動で周囲を騙しながら生きていく女たちが多く登場します。
さらには「美」「醜」のカテゴリーに関するテーマも見え隠れして、考えさせられました。美しいことは確かに大きな幸福なのだろうけれど、それだけに拘泥しては見えなくなるものがある。藤田さんの作品を通して、「鉢かづき」は、「美」を封じることで幸福の道を探る物語として読み取れることがわかりました。
漢籍をモチーフにした作品もあり、おもしろかったです。