くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「運命の顔」藤井輝明

2010-03-05 05:40:41 | エッセイ・ルポルタージュ
藤井さんの自伝です。
そういわれても、どちらの藤井さんかわからない? 東大客員教授、看護学を専攻してらっしゃる藤井輝明さんです。この本が出た当時は、熊本大学にお勤めでした。
以前、「あなたは顔で差別をしますか」という本を読みましたが、それよりも前にこういう本も出していたのですね。就職が決まらず面接官に暴言を浴びせられた藤井さん。でも、たくさんの人に支えられて学問の道を邁進するのです。
論文にかける情熱に、この方は本当に研究が好きなんだなーと感心させられました。
信州でのロマンスを、まだ胸に抱いているのでしょうか。手術を執刀した医師の心ない言葉に傷ついたり、何をしたというわけでもないのに顔に唾を吐かれたり、藤井さんの胸にはかさぶたがいくつもいくつもできているような気がします。
「運命の顔」(草思社)。藤井さんの左目のあたりは、血管がふくれあがり、とても目立つ状態なのです。どんな仕事をしていて、どんな業績をあげていても、そのことだけで見下す人がいる。それは、とても辛いことです。
でも、彼はそれも含めて自分であるということを伝えている。
講演会などでは、障碍をもっているのに、健気に頑張っている人、という見られ方をされるので、それも苦しい。なかなか「自分」として見てもらえないということなのでしょうね。
藤井さんの語り口はやわらかく、おそらくとても辛いことをソフトに語るのです。読みごたえがあり、藤井さんの熱心な取り組みがよく伝わってくる本でした。