くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「夜のだれかの玩具箱」あさのあつこ

2010-03-17 03:26:01 | 文芸・エンターテイメント
「朝のこどもの玩具箱」の続編を読みました。「夜のだれかの玩具箱」(文藝春秋)。
前作は「こども」でしたが、今度はちょっとアダルトな部分もある。スプラッタもある。
ある一家が視点を変えて二度登場します。父と娘を中心に、母、父のかつての妻、娘の夫といった人々の姿が浮き上がる。背景は晩夏の鮮やかですがどこかさびれた海の色。
マリさんはやっぱり海からきたのかしら。それは「マリン」の象徴なの? バスにいたマリちゃんは、やっぱり何かのメタファなのでしょうか。うまく読めなくてごめんなさい。
物語の筋としては、わかりやすいものが多かったように思います。とあるバーにやってきて、自分と妻の間のいきさつとしこりを考える「うちの猫は鼠を取りません」。山で道に迷った修行僧が目にした明かり。その一軒家に住む老婆からもらった粥を食べながら思いおこす過去。「蛍女」です。時代もの。
時代ものはもう一編あって、「夢女戻」。女房が行方不明になり、意気消沈の下駄職人・矢八。その様子を気にかける若旦那が長屋にやってくる。次第に夢の中に女房が現れるようになったと語る矢八の真意は?
目次をみると六つの小説が並んでいて、両端が同じ家族の物語。時代もので「女」とつく物語が、「お花見しましょ」という短編を挟んで並ぶようにも見えます。これは、ある少年の死に責任を感じている青年が、故郷に戻ることで救われる物語。亡くなったお母さんの造形がとてもいいです。
こうしてみると、「だれか」は女性を指しているような気がしてきます。「夜」だけあって抱えているものも大きい。
わたしとしては「朝」の方が好みだったのですが、すんなりと胸に落ちてくる作品集でした。